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*** 魔王討伐を果たし王の前に膝をつく。 魔王討伐の暁に得られるもの、 富、財宝、土地、名誉、様々な噂があった。 そしてそのどれもが決して過信ではないと思っていた。 自分は国を救った英雄として末代まで語り継がれていくのだろう。 王は静かに口を開く。 「勇者よ、お前は罪人だ」 勇者は王の言葉に思わず顔をあげる。 耳を疑うとはまさにこのことだ。 「お前は人を殺した」 「私が殺したのは魔王であり、人ではありません」 「いいや、あれは人だ。それはお前が一番よくわかっているだろう」 その言葉に思わず自分の掌を見る。 王の言葉を肯定するように自身の掌は震えていた。 「しかし私は寛大だ、  お前の勇気と強さを称え、 チャンスをやろう」 王はにこやかに笑った。 「次の魔王になれ、勇者よ。  それがお前の罪を許す唯一の条件だ」 そして俺は魔王となった。
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