78人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい旦那、男の夜鷹のこと知ってるか?」
「……いや」
ふいに話を投げられ、しまきはそちらを見やるが、やはり短く答えるだけだった。男たちはそれを特に気にするでもなく、好き勝手に話しを続ける。
「なんだお前、興味あんのか」
「そういやこいつ、色子に入れ込んでたことがあるからな」
「うるせえ! なくもねえが、やっぱり女の柔らかさが一番だろ」
下世話な種を花と咲かせて、男たちはあっという間に蕎麦をたいらげた。そうして代金をしまきへ渡すと、またわいわいと話ながらどこか知らないところへ帰っていく。
しまきはただ淡々と、次の客にどんぶりを盛り始めた。
◆ ◆ ◆
「あっ、ああっ……」
「男だって知ったときゃどうかと思ったが、いい臀じゃねえか」
草むらといぐさが、男が腰を振る度に、かすかに擦れ合って乾いた音を立てる。
「はっ、は、陰間に行くより手軽でいい」
「ん、あ……奥ぅ……」
ざらめは男に身を委ねながら、ゆっくりと振り返り、ねだるように言う。その見返る視線はまるで流し目のごとく色っぽく、男は気をよくした。
客の言う通り、ざらめは男である。それも元は陰間茶屋に身を置く男娼であったが、いまはこうして夜鷹として生きていた。
「ああ。ここだなっ?」
「あっ、そこ……ん」
背後から突かれ、ざらめの体が揺れる。その度に彼は腰をくねらせる。別段それは、具合がよいとか、そういうことではない。
この仕事ではどれだけ客を悦ばせられるかが重要であり、それ次第では代金が弾むことがあれば、贔屓として寵愛されることもあるのだ。つまりこれらは、全てざらめの演技である。
「いい、締め具合だな……もっと鳴き声を聞かせろ」
「……はぁ、あ、あ……っ」
ぐいぐいと陽根を押し込まれ、一層よいふりをする。
ざらめはまるで金平糖の溶けるような、甘やかな声を響かせた。
最初のコメントを投稿しよう!