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「暁生って猫みたい」
「そう?」
「私がベッドに入るとすり寄ってくるでしょ? 私が出すものしか食べないし」
「そうだね。今は咲絵さんの猫でいい」
「そうなさい」
自分が『みゃあ』になれたようでちょっと嬉しかった。ここにいれば『みゃあ』でいられる。
チャリで街をとばしていた。
通りで角を回るときに「あ!」という声が聞こえ、そっちに振り返った時に誰かにぶつかった。
「ごめん!」
前を向いたのとチャリを止めるのと少年が倒れたのは同時だった。
「悪い、ケガしたよね」
「み、うん、痛い」
「家、どこだ? 送ってくよ」
「忘れた」
「忘れた? どこか分かんないの? お母さんは?」
「分かんない」
「困ったな……」
暁生は頭をぽりぽりと掻く。
(僕のこと、覚えてない)
『みゃあ』は良かったと思いながらも寂しかった。『みゃあ』と鳴きたい。でも『みゃあ』だと分かったらそこでお別れになる。
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