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カーテンの隙間から一筋の光がベッドに伸びていた。明るくなった部屋が朝を告げている。身じろぐと素肌にぬくもりが触れて、ふと、隣に視線を向けた。
すうすうと規則正しい寝息をたて気持ちよさそうに寝ている姿に、柚木は目を細めた。逞しい腕が離すまいと腰に巻きついている。
そっと頬を撫でてみる。
まだハリがあり、はじけんばかりの肌は柚木のそれとはほんの少し違って、命の若さを表している。
「先生?」
ふいにかすれた声に呼ばれ引っ込めかけた手を掴まれる。
「おはよ」
「……おはよう」
まだ半分夢の中なのだろう。とろけるような視線をむけられ、柚木は落ち着きなく視線をさまよわせた。
こうやってベッドの中、互いに何もまとわない姿でいることに罪悪感さえ感じる。もう何も妨げるものはないというのに。
長年でしみついてしまったのだろう。悪いことをした気になるのは仕方がない。
柚木は教師で、安久津は教え子なのだから。
「先生、そんなに不安そうな顔しないでよ」
柚木のためらいに気がついたのか安久津は柔らかく笑い、ぎゅっと自らの腕の中に抱きしめた。たくましい胸板が柚木を包み込む。
「もう大丈夫だから、さ」
つい先日、安久津は卒業式を迎えた。
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