1年生編8月

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◆そういえば、宿題なんていうものがあったような…… 「絵に描いたように、夏休み最終日に宿題をするのはわざとですの?」 「ちげーわ。普通に忘れてたの!」  数学と現代文の宿題については二学期初回授業提出のため余裕がある。他の科目については初日提出。明日の朝までに終わらせないといけない。 「シルヴィアこそ、宿題やってるの見なかったけど終わってんの?」 「もちろん」  わざとらしい笑みを浮かべてくる。 「ズルしただろ」 「えぇ。勉強は以前してますし、今回のメインはそこではないので」 「はいはい。生徒会ね」 「カイこそ、やりたいこあるなら全部この三年間に詰め込まなくてもいいんですのよ。それこそ人間の勉強なんて十年二十年じゃ大して進歩しませんわ」 「せっかく人間として馴染んでんだから魔法使っても意味ないだろ」 「馴染むですか」 「それに。私がこの生活をまたできるとは思えない」 「引きこもりですものね」 「うるさいわ。宿題の邪魔すんならアイス買ってきて」 「魔女使いの荒いこと」 「パシリを有効活用してるだけだ」 「まったく。何味がいいんですの?」 「ファミリーパック買ってきて。イチゴ入ってるやつね」 「買ってきますけど、一日一個ですわよ」  最新の家は窓を締め切ると外の音がほとんど聞こえなくなる。人間よりもずっと短い命の鳴き声を家で聞くのは、誰かが玄関のドアを開けた時だけだ。
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