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お帰りなさいパーティー
「桜、桃、お皿並べてくれ」
「はーい、パパ」
日曜日の夜、お帰りなさいパーティーをした。メニューはたこ焼きだ。
キャベツを切っていると、
「なかなか上手じゃない」
ひろみが手元を覗き込んでくる。
「いいから、あっちで座ってろよ」
「はあい」
いつも動きっぱなしで、座って待つなんてことに慣れていないひろみは、どこか落ち着かない様子だ。
「はなもするー」
「よし、じゃあ花はソースを運んでくれな」
子どもたちはいつにも増して張り切っている。
コップにジュースと牛乳を注いでいると、
「パパはこれよね」
桃が冷蔵庫からビールを取り出す。
「ママもだぞ」
というと、目をぱちくりさせた。
「「かんぱーい!」」
子どもたちはママがビールを飲む様子を珍しそうに見ている。
たこ焼きは、丸かったり、つぶれていたり、タコが入っていたり、いなかったり、個性的でとても美味しかった。
「今日はママと寝ようね」
「わーい」
みんなを先に寝かせ、片付け終わったダイニングの机で、役目を終えたスケジュール表と向き合っている。捨てるに捨てられず、六枚の紙は全部きれいに残っていた。
ひろみはこれを、いつ書いたのだろうか。きっと、家事を終えた夜遅くに書いたのだろう。事細かにに記されたそれは、ひろみの不安と優しさそのものだった。
それは、今ではただのスケジュール表ではなく、思い出のぎっしり詰まった日記張に等しかった。
部屋の壁には、三枚のひろみの絵が笑っている。
ー終ー
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