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桜の憂鬱
日曜日の昼から、ママはおばあちゃんの家に行った。一週間だけ、仕事することになったから。今まで、パパがいないことはあったけど、ママがいないのは初めて。何か変な感じ。
ママは私に、キッズ携帯を渡してくれた。いざと言う時に使いなさいって。いざと言う時って、どんな時なのかなあ。
パパったら何も知らないの。幼稚園の月曜セットも知らないんだよ。私も同じ幼稚園だったから、もう5年目になるのに、信じられない。桃だけだとまだ心配だから、結局私が手伝わないといけないの。もう、嫌になっちゃう。
あのね、私と花の髪の毛はまっすぐなのに、桃の髪の毛だけくるくるなの。朝起きると、ひまわりみたいになってるんだよ。そのまま幼稚園に行くのはかわいそうだから、私が結んであげるんだ。
パパ?パパはだめ、忙しいの。
ママに、
「桃と花よろしくね。パパに迷惑かけないようにして、手伝ってあげてね」
って言われたんだ。
だから、頑張って結ぶんだけど、
「お姉ちゃん痛い」
とか、
「ママみたいな結び方がいい」
とか、うるさいの。だから、
「ママがいないんだから、パパだから仕方ないでしょ。我慢して」
って教えてあげるんだ。
でも、疲れちゃう。遊んでても、ママが早く帰ってこないかなって考えちゃうの。
水曜日、パパと花がお風呂に入ってるとき、とうとう我慢できなくなっちゃった。いざと言う時って今かなと思って、キッズ携帯を持ったの。そうしたら、ママから電話がかかってきたんだよ。真ん中の日だから、心配になってかけたんだって。
花がスーパーのトイレで、初めてできたこととか、桃がお弁当空っぽにしたこととか、「花カレー」のことも話したよ。
そうしたら、ママがね、
「桜、すごいね。ありがとうね」
って言うの。私のこと、何も話してないのに。
「花や桃が頑張れてるのは、桜のおかげなんだよ。ママには、パパのお手伝いを頑張ってる桜が見えるんだよ」
だって!ママってすごいね。
電話のあと、元気がいっぱい出たよ。
ママが帰ってくるまで、頑張るよ。
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