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ひろみと仕事
仕事は初日をクリアしてしまえば、驚くほど当時に戻ることができた。同僚達の気遣いあってのことだけれど。仕事内容には多少変化はあり、戸惑いがなかったわけではないが、久しぶりの仕事は予想以上に楽しく感じられた。
休憩時間になり、ふと子ども達のことを思い出す。忘れていた、というわけではないが、自分のことに集中できたというのがとても久しぶりだった。
子ども達から離れるなんて、いつぶりだろう。桜が産まれてからだから、8年ぶりか。自由な反面、どこか落ち着かない寂しさがある。でも、、
解放感、、、
そう、解放感が半端ない!
仕事は確かに大変だ。給料が発生している以上、勤務時間内は全力でそれに当たらなければならない。しかし、それ以外の時間は丸々、自分の時間だった。
ランチも同僚と会話を楽しみながらゆっくり食べることができる。途中、食べさせたり、トイレに連れて行ったり、こぼしたものを拭いたりなどしなくていいのだ。
家に帰れば実家の母がご飯を出してくれる。時には地元の友人と飲みに出かけることもできた。飲み会なんて、前回はいつ行ったかも覚えていないほど昔のこと。
仕事さえしていれば、温かいご飯が食べられて、子どもが育つ、、、
たけしはこんな素敵な生活を送っていたのか!
たけしが頭をよぎる。
「大丈夫だよ」
月曜日の昼に電話した時、たけしは言った。
水曜日に桜に電話して様子を訪ねたが、みんな変わらず過ごしているようだ。助けの電話がかかってこないところをみると、何とかなっているのだろう。
私がいなくても大丈夫なことが少し寂しくはあったが、たけしが頑張ってくれていることが嬉しくもあった。
仕事さえしていれば、、、
なんて簡単に言ったが、一週間だからそう言えるのかもしれない。長年、勤めていれば、責任も増えるし、問題も起こるだろう。
「たけしはどうなのかな」
今度、落ち着いて、仕事の話も聞いてみようと思った。
こんな生活も今日で終わる。またドタバタの日々に逆戻りだ。
でも、子ども達には無性に会いたかった。
また、しばらく食べられなくなる母の手料理を味わいながら、明日は朝一番に帰ろうと思った。
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