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俺が死んでから空閑は俺のベッドで少しの時間横になるようになった。
自分の痕跡が残るのが嫌なようで、皺がつかないようにそっとベッドに横たわる。そういう気遣いができるなら、俺が生きてるときにやってほしかった…なんて言っても仕方のないことだが。
仰向けになって天井を見つめたままの空閑の目に俺の掌をかぶせる。
すると、瞼を閉じて深く眠り始めた空閑に安心した。最近は眠れていなかったようだから、心配だったんだ。俺が空閑に触れていることなんかきっと気付いていないだろうけど、なにかしらを感じ取ってほしいなあ、なんて願った。
「空閑ー、おやすみ。いい夢みるんだぞ」
空閑は夜に外にでることはなくなった。バイトも行かなくなったし、誰かと遊ぶ様子もない。俺は空閑の側にしかいれないから、彼の後をずっとひっついて行動するしかできない。外にでるのは、かろうじて買い物をする時か、ごみ出しをする時。
そんな空閑が心配だった。
「別に夜に遅く帰っても俺は怒んないのに…馬鹿なやつ」
俺よりも死人のように生きる空閑。寝ているというのに、泣き始めた空閑にぎょっとする。汗ってティッシュをとろうとするが、すり抜けてしまい彼の涙を拭うことはできなかった。
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