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「ネイサン、どう思う?
君は今の話が信じられるか?」
「カズ、そんなことじゃ僕は驚かないよ。
世界には毎日数え切れない程の奇蹟が起きてるんだから。」
ネイサンの優しい笑顔に、俺の心は癒された。
話すか話さないかはもちろん迷ったが、俺はやはり美幸達のことを自分一人では抱えることが出来なかった。
ネイサンは、スピリチュアルの世界を信じている。
それがわかっているからこそ、俺は、シュウと美幸のすべてを話すことが出来た。
「ネイサン、ひかりは今シュウと一緒にシュウの世界にいると思うか?」
「だろうね。
そうとしか思えない。」
「……正直に話してくれよ。
美幸とシュウは本当はこの世界のどこかにいて…二人はまさか…その…」
「自ら命を断つとでも考えてるのか?」
俺がなかなか言い出せなかった言葉をネイサンはあっさりと口にした。
「そんなことはないさ。
二人にそのつもりがあったなら、いくらなんでも財布や携帯くらいは持って行くだろう。
きっと…君の妹がその物語を書いた時点で、二人はシュウの世界に行ったんだと思う。」
「……俺もそう思った。
だけど、冷静になってみると、その考えに自信がなくなったんだ。
だって、シュウがこっちに来たのはカリスタリュギュウス流星群の日だったけど、今日は特になんでもない日だ。
なのに、なぜそんなことが…」
「おそらく……君の妹は自分の書いたストーリーとこの世界がリンクしてることに気付いたんだ。
ストーリーを動かせば、こちらにも何らかの影響が出ると考え…そして成功した。」
普通の人間なら、まともにとりあってもくれないであろう摩訶不思議な事態を、ネイサンはいとも簡単に言ってのけ…そのことがおかしくて俺は失笑してしまった。
「僕はなにかおかしなことを言ったかい?」
「いや…君があまりにもあっさりと言うものだから…」
「カズ…物事の真髄なんてどれも単純で簡単なものだよ。
それをややこしく難しいものにしてるのは、受け取る側の心の問題だ。」
「ネイサン……」
俺は、ネイサンの言葉に救われた。
そうだ…きっと、そうなんだ。
元々はこの世界での実体を持たないはずのシュウが実体となって現れたんだから、その逆もあって不思議はない。
やっぱり、ひかりは自分で進むべき道を選び、そしてそれに従っただけなんだ。
「ありがとう、ネイサン。
俺も素直に信じることにするよ。」
ひかりとシュウの幸せを…
そして、二人がまたいつかこっちの世界に戻って来る日が来ることを…
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