445. ルンルン気分が…

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445. ルンルン気分が…

「なんだ。つまんねぇ。来週はラブホおあずけか〰️。 さっきまでのルンルン気分が、一挙にナーバスになったよ〰️。」 「もう。尚ちゃん? しょうがないじゃない。加奈さんも1ヶ月に一度の料理教室を楽しみにしてるんだから! 料理ばかりじゃないわ。 私達とおしゃべりしたり、憲一とお風呂に入ったりコミュニケーションがどんなに加奈さんの心が安らぐか!」 「え?憲一とお風呂に? なんか、それはそれでいい身分だな。 憲一、大丈夫か?勃起してこないのかな?」 「え?小3よ!そんないやらしい事なんて考えてないわよ!」 「え?あ。そう?俺…ポルノ写真をマリオん家で見て…勃起したの小4の時だったけど… 俺、ませてる?」 「もう!尚ちゃんのスケベ! おませ過ぎよ〰️。 もう、それどころじゃないわよ!」 「え?なんで?」 「だって、金曜日はカラオケが夜あるから、仕込みを手伝うから2時間残業って、憲一には言ってあるのよ! 嘘がバレちゃうじゃない。」 「え?なんで?本当のように言えばいいんじゃないの? 来週の金曜日は、俺がいつもはカラオケのお客の仕込みを手伝ってもらってるけど、今日は4時で上がっていいよ!って俺が言えばいいんだろ? 加奈さんは賄い飯を食べたら帰っちゃうんだから、静香が金曜日に遅く帰るかなんだか、知らないだろ?」 「あ。そうね。そうだわ。それでお願いね。」 「ん。とにかく今から親父を連れて来るからさ。 静香は洗い物と煮込みを温めておいてくれるか?」 「はーい!わかりました♪」 静香はもつ煮込みの鍋に、ガスをつけると食器を洗い始めた。 その時、トントンと勝手口を叩く音がした。 「は~い!どちら様ですか?」 「私です。尚人の母親です。 鍵を忘れてしまって… 開けてくれる?」 え?お義母さん? 「はい?チーフはお迎えに行きましたよ?」 ドアを開けながら、静香は飯田の母親に話した。 「あら!それじゃ、行き違いね!私は携帯を、持っていないから尚人にかけられなかったのよ! 実は…主人が家のトイレで倒れて…救急車で運ばれて…2度目の脳梗塞で… また、入院したの。」 そう言うと、尚人の母親は泣き出した。 「え?今日の何時頃ですか? お店にお電話してくれれば良かったのに。」 「ちょうどお昼頃よ。 店も忙しいと思ったら… お隣に駆け込んで… 大ちゃんのお母さんが119番に電話してくれて… 今、検査も終わって主人もベッドで寝てるから、家にパジャマを取りに帰る前に店に寄ったのよ。」 「え?それじゃ入院ですか?」 「今度は家に帰れるかどうか…」 「え?」 もつ煮込みの鍋のふたから、汁が吹き出て、ガスが消えそうになった。 静香はあわててガスを消した。 「それじゃ、今夜はカラオケは無理ですね。 お友達には連絡したのですか?」 「ええ。友達1人に連絡したから、連絡網で後はするからって行ってくれたわ… シズちゃん。私、もうこの先介護で人生終わるのかと思うと… お先真っ暗よ! まだ私達は還暦前なのに… おじいちゃんとおばあちゃんにもなっていないのに… 孫もいないのに… フルムーン旅行なんて行ってる同級生が羨ましい。」 静香は黙って義母の肩を抱いた。 飯田の帰って来た車の音がした。 バタン! 「お袋!大ちゃんのお母さんから聞いたよ! 親父トイレで倒れたんだって? なんで、連絡くれなかったんだよ!」 「お昼頃倒れたから、忙しいと思ったから連絡しなかったんだって。 尚ちゃんの携帯番号がわからなかったから、直接来たのよ。 そんなに大きな声で、お義母さんを攻めないで!」 「ありがとう。シズちゃん。 泣いたらスッキリしたわ。 人を羨んでも仕方ないわね。 尚人。お父さんは2度目だから、先生が重いって言ってたの。 多発性脳梗塞だから、何度も繰り返すみたいなの。 命には別状ないみたい。 お母さんは入院の支度を持って病院に行くから、尚人もお店を閉めたら後から来てね!」 「わかった!」 「シズちゃん。ありがとう。」 尚人の母親は静香の手を握ると、勝手口から帰っていった。 飯田は静香を後ろから抱き締めた。 「お袋泣いてたのか? 慰めてくれたんだな?」 「ううん。私は何もしてないし、何も言ってない。 ただ、お義母さんの肩を抱いてあげただけ。」 「いや。それで充分だよ。 多発性脳梗塞か… 今度は車椅子のままかな? 寝たきりかな? 静香。俺も辛いよ。」 がっちりした大きな飯田の身体が、今日は小さく思えた静香だった。
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