446. 幸せってなんだろう

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446. 幸せってなんだろう

飯田は静香を抱き締めながら 「なあ?もつ煮込みの鍋が冷えて冷蔵庫の中に入れられるまで、倉庫でイチャイチャしたい♪」 「え?駄目よ。お父さんの所に行くんでしょ?」 「命に別状がないなら、寝てるだけの親父を見るのは辛いだけだ… 今の俺は1分でも長く、静香と一緒にいたい! 指折り数えて金曜日を待ってた俺の事を健気だと思ってよ。」 静香は身体を回して、飯田を見つめた。 「俺と一緒になるの嫌か? 親父…面倒かけるけど… もう、来る気無くなったか?」 静香は首を横に振った。 「尚ちゃんの事…嫌いになんてなれないよ! そんな事言わないで!ね?」 「静香!」 飯田は思いっきり静香を抱き締めると、熱い口付けを交わした。 息が止まるほどの熱い抱擁と、吸い込まれそうな口付けに、静香の胸の高まりを覚えた。 飯田は静香を倉庫に連れていくと、この間の段ボールをひいた。 そして、静香の体を口付けしながら倒していく。 「ここをラブホと思ってしよう。」 黙って静香は頷いた。 静香の父親はくも膜下出血で、病院に運ばれてたった2日間で天国に、召されて逝った。 その悲しみも計り知れないけど、飯田の父親は2度も脳梗塞で倒れて… その度に身体の動作が鈍くなり、本人も辛いけど…周りも、特に配偶者は介護に明け暮れる事になる。 下手したら、介護する側も精神的、肉体的に患者以上に大変かも知れない。 飯田の血の繋がりは父親だけ。 お母さんは悪までもお義母さんなのかも知れない。 静香は抱かれて、いつもと違う飯田とのセックスを黙って受け入れていた。 「ごめん。静香。コンドー◯がない。 出していいか?」 「うん。もうすぐ生理だから大丈夫かな。」 「ありがとう。 静香。早く俺達の子供が欲しいな。」 静香の蜜壺の中に飯田の白濁が注ぎこまれた。 尚ちゃん?子供?離婚してないのに… 今、妊娠しても尚ちゃんの子供として生めないよ? やっぱり、お父さんに死なれたら独りぼっちになるから、血の繋がった肉親が欲しいんだと静香は察知し、何も言わず事が済むと、後片付けをした。 そして、静香は勝手口のノブに手を回した。 「静香?ごめんな。ホテルがここで…」 「ううん。飯田家の一大事じゃない。 明後日の釣りは無理しないでいいから。」 「いや。今夜は親父の様子を見に行くけど、明後日の釣りは絶対に行くよ! 病院にいた方がお袋も手が空くし、介護全般は看護師がやってくれる。 親父もその方がいいと思うしな。 俺の唯一の趣味を奪われてしまったら、それこそ何のために店を守ってるのかわからなくなる! 明日の夜8時過ぎにそっちに行くから! 明日は7時で終わりにするよ。 静香。待っててな。」 「わかったわ。お弁当作って待ってるね。」 「ああ。ありがとう。 静香は俺の奥さんになる前に、俺の本当の親友だよ。 静香がいて良かった…本当に良かったよ…。」 「…ん。」 飯田は思わずもう一度、静香にキスを落とした。 夕方6時前に自宅に戻った静香。 「あれ?お母さん?今日は残業の日なのに、早かったね?」 「うん。尚ちゃんのお父さんがまた、救急車で運ばれたの… だから、帰って来たの。」 「ええ!尚ちゃんのお父さん?また?のうこうそくって病気?」 「そう。多発性脳梗塞なんだって。 何度も繰り返す病みたいなの。」 「そうなんだ。お父さん…可哀想だね。 身体が不自由になっちゃう病気でしょ?」 「そうね。憲一のおじいちゃんも脳の病気だったけど… くも膜下出血はダメージが大きいから…亡くなる人が多いの…」 「うん…みよばあが言ってた。 もし、おじいちゃんが助かっても身体が不自由な生活になるから、憲一の面倒は見られなかったかもね。って…関根家はこれで良かったのよって…」 「え?お母さんが憲一に?そう言ったの?」 「うん。よしばあもそう言ってたよ。 お家に誰かしら病人がいると、孫の面倒まで見られなかったかもな~。って!」 「そうね。憲一は感謝しなくちゃね。 どっちのおばあちゃんにも、可愛がってもらって幸せね♪」 「うん!でも、1番幸せなのはお母さんだって言ってたよ!」 「え?私?」 「うん。高校生の頃から商売がやりたくて、父親にお金を出してもらってお店が出せたんだから! よしばあは好きな事も我慢してたから、羨ましいって! 人間生きていて、自分の好きな事が出来る人間は本当に幸せなのよ!って。 憲一もレストランをしたいなら、みよばあもよしばあも応援してるから、お母さんみたいに頑張って幸せを、掴むのよ!って言われたよ。」 「幸せ?でも、お店たたんじゃたしね。 ずっと、繁盛していたら幸せだったけど… でも、やりたいことやったから後悔してないわ♪」 「それが幸せっていうんじゃないかな?」 憲一の言葉が胸に突き刺さった。 幸せってなんだろう… 静香は後ろめたさが絡まって、素直な気持ちになれないでいた。
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