447. 穏やかな1日

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447. 穏やかな1日

憲一と夕飯を食べて、お風呂に入ってテレビを見て過ごした。 こんな一時が多分、幸せって言うのだろう。 そして、尚ちゃんが居れば… 静香の幸せは旦那ではない… 間違っているけど、違うのだ。 でも、その気持ちは、憲一の前では深く心の中にしまいこんだ。 「そうそう。憲一。今度の釣りはイカ釣り大会だって!」 「え?イカ釣り大会?」 「マリオがね。大洗でエギング釣果大会があるから応募したんだって。」 「エギングちょうか大会?なにそれ?」 「疑似餌を使って、いかに大きなイカを釣るかって事みたいよ。 男性、女性、高校生、中学生、小学生って分かれてて、優勝者には、学生は金一封と釣りのカタログがもらえるんだって。」 「え?金一封ってなあに?」 「一万円札が1枚入っているってことよ♪」 「え?一万円貰えるの? 僕、絶対に優勝する〰️!!」 「それじゃ、お母さんも女性部門で優勝するわ!」 2人は顔を見合わせて笑った。 「でも、大人の男子は大変だね! マリオが優勝かな?(笑)」 「イカなんて釣ったことないけどね。 結構沖に行くから、明日の夜12時集合なのよ!」 「ええ!夜中?」 「明日の8時過ぎに尚ちゃんが迎えに来てくれるみたいよ♪」 「え?尚ちゃんが?大ちゃんも一緒?」 「それがね。大ちゃんね。 キャンピングカーを買ったみたいよ♪ おトイレ付なんですって! だから、マリオとルイージを乗せて行くみたい♪」 「へぇ。そうなんだ。 尚ちゃんのお父さんが入院してるのに、釣りなんて行って大丈夫なの?」 「う…ん。命には別状ないみたいだから、今夜は病院行って、お父さんに会って、明日は釣りに行くからねって、言ってくるみたい。 尚ちゃんの大好きな釣りを取ってしまったら、今度は尚ちゃんが病気になっちゃうでしょ?」 「そうだね。お父さんに断って来るんだから、釣りに行けるね♪ 尚ちゃんの車の中で、寝ないとね。 布団ひいてきてくれるのかな?」 「多分、そうじゃない?憲一の事考えたら、寝なかったら釣り出来ないでしょ?」 「うん。多分、寝ながら釣りして、釣竿を海に流しちゃうかも〰️」 「そんな事になったら、憲一は師匠から貰った釣竿〰️! って言ってずっと泣いてるんじゃないの?」 「うん。そうかも。そうだ!明日は空手道場から帰ったら、午後からお昼寝しよう♪」 そう言って、憲一は自分の部屋に戻って就寝した。 静香はさっきの幸せとは何か、コーヒーを飲みながら考えていた。 確かに今も充分幸せだ。 店を手渡しても、今の旦那のお陰で自分の生活が保たれている。 静香の新車のローンも携帯代も保険も皆、旦那の口座から引かれているのだ。 静香は憲一と2人分の食費と生活日用品を買うだけだ。 あ。後、水道代と固定電話代と電気代もだ。 まあ、贅沢しなければ、10万円もあれば生活出来る。 本当は旦那に感謝しなくてはならない。 愛すべきは我が夫のよっちゃんだ。 なのに…尚ちゃんがどうしても、諦められない… 別れることなんて出来ないのだ。 「尚ちゃん…」 静香は色んな事を考えると、涙が溢れて止まらなくなった。 「ごめんなさい。よっちゃん… こんな妻で…本当にごめんなさい。」 出てくる言葉は、謝罪の言葉だけだった。 次の日の土曜日。 静香は休みの日。 シーツも憲一のジャージも洗濯をした。 お布団も干した。 「お母さん!道場に行って来るね♪」 「気をつけて行ってらっしゃい。」 憲一は自転車で空手道場に向かった。 洗濯物を干すと、静香はお弁当のおかずを買いにスーパーに向かった。 五月晴れの暖かい日差しは、今の静香の心を優しく包み込んだ。 買い物を済ますと、自宅にもどりお昼の準備を始めた。 「 ただいま~♪」 元気に憲一が帰ってきた。 「お帰りなさい。今日は早かったわね。」 「うん。お昼寝するから、まあくんと遊ぶのやめて帰って来たの。」 「お昼寝って…そんなに気合い入れて寝なくても…」 「お母さん!気合い入るよ! 優勝したいんだ!金一封貰いたいもん!」 「凄い気合いね(笑) その気合い、勉強に入ったら凄いと思うけど… 昼寝に気合いって…凄すぎるわ。 優勝して、金一封貰ったら何が欲しいの? やっぱりゲーム?」 「もちろんだよ!何かね。噂だとゲームボーイのカラー版が出るらしいんだ♪ モノクロじゃなくて、カラーなんだよ! 出たら、初日に買いたいんだ♪ そのお金が欲しいんだ♪」 *当時最先端だった反射型TFTカラー液晶を採用し、ファンが長年待ち望んだゲームボーイのカラー化を実現した。 約32000色の中から最大56色の同時発色が可能と、これまでの4階調モノクロ画面から飛躍的にグレードアップ。 発売日には大勢のゲームファンが販売店へと詰めかけて長蛇の列を作っていたのをいまでも覚えている。
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