455. 母親が病気

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455. 母親が病気

次の日。 何事もなかったような顔で、憲一と朝食を食べた。 「うん。イカ素麺、美味しいね♪」 昨日作ったイカフライも少し残っていたから、朝食にも出した。 「イカ三昧ね(笑)」 「美味しいから、文句ないよ♪」 今日は月曜日。 「今週は僕が給食当番なんだ。 あ~!今日の給食はイカフライだ〰️。(笑)」 憲一が給食のメニュー表を見て、驚いた。 「うふふ。まあ、仕方ないわ。 どっちが美味しいか味比べね(笑)」 「味なんて比べる前から、僕が釣ったイカの方が美味しいに決まってるよ! 新鮮なイカと給食は冷凍のイカだもの! 勝負にもならないよ。」 そりゃそうだ。2人は顔を見合わせて笑った。 憲一も学校に行き、静香もイカのお裾分けをするのに、よしばあとみよばあの家に向かった。 「おお♪新鮮な大きなイカをありがとー。 イカ釣りなんて憲一も凄いなー。」 よしばあは喜んでもらってくれた。 帰り道に実家に寄った。 玄関のチャイムを鳴らしても、母親は出て来なかった。 「あれ?寝てるのかな? そんな事無いわよね?仕事に行くんだもの! おはようございます!お母さん? 具合でも悪いの? トイレかしら?」 静香は裏庭に回り、勝手口のドアをノックした。 母親の車はあるから、絶対に家の中にいるはずだ。 雨戸が閉まっていた。 なんかおかしい!お母さんがこんなに遅くまで寝ているはずがないのだ。 「えっと、合鍵あるよね。車のダッシュボードに入れて置いたはず!」 静香は車に戻って、合鍵を取ると玄関の鍵を開けた。 「お母さん?いるの?お母さん!」 母親は寝室で寝ていた。 「あ…静香?来てくれたの? 貧血がひどくて…起きられなくて… 会社に電話もかけられない…」 「お母さん!顔色が真っ青よ。 病院に行きましょう! 連れて行ってあげるから!」 静香はイカを冷凍室に入れると、病院に電話をした。 「お母さん。すぐに来て下さいって! 検査するって! なんか朝ごはん作る?」 「静香?検査するなら…食べてはいけないわよ。 とにかく…水をくれる?」 静香が母親に水の入ったコップを渡すと、いつもの貧血の薬を口に入れた。 薬を飲んで少し落ち着いたようだ。 「ごめんなさいね。静香も仕事なのに…」 「何を言ってるのよ! 大事なお母さんの為じゃない! 歩ける?大丈夫?」 まだ、8時前だ。母親は支度をすると、静香の車に乗り込んだ。 「お母さんの会社には、具合が悪いので今日はお休みしますって言っておいたよ。」 「そうね。午後から出られそうもないわね。ありがとう。」 母親は集荷場で働いていた。 旬の果物や野菜を洗って、袋詰めにする仕事だ。 遅刻も早退も半休も出来る。 流れ作業ではないから、会社は1時間でも働いてくれると助かると言ったところだった。 「貧血って…鉄分がそんなに足りないのかしら? 鉄分の多いレバーやほうれん草とか、ちゃんと食べてるんだけど…お薬も飲んでるのに…」 「お母さん?貧血って、色んな病気から来る場合が多いのよ? 貧血が酷くなると、全身倦怠感や動悸、息切れ、食欲不振などの症状が現れて… 心臓は大量の血液を流して酸素不足を解消しようと、鼓動を早くして、酸素を体に取り入れようとするから、肺や心臓に負担がかかる。 だから、心臓肥大になったり、胃腸や大腸の病気になったり、血液の病気になったりするのよ! ちゃんと大きな病院の先生に診てもらって、貧血の原因を突き止めないといけないわ!」 「そうなのね…貧血の薬を飲めば治るのかと思ってたから… そんなに大変な病なんて思ってもいなかった。」 「お母さんは高血圧症だから、降圧剤も飲んでるわよね?」 「ええ。飲み始めて5年になるかしら? お父さんが亡くなってから、健康な体が…だんだん蝕まれて行くようだわ…年って嫌ね!」 「お母さん?まだまだ60代は若いわよ! ちゃんと検査してもらって、原因が分かれば、怖くなんて無いわ♪ お母さんって、人間ドックはしたことあるの?」 「一度も無いわ。町の健康診断だけよ。 集荷場はパートだから、社員の人だけが人間ドックは受診してるんじゃない?」 「それじゃ、今日は人間ドックっと思って検査して貰いましょう♪」 「そうね。」 ここは、隣の市の大きな病院だ。 尚ちゃんのお父さんの病院の次に大きな病院。 一度、ちゃんと検査して納得した方がお母さんの為だと思った静香だった。 受付して、受診するまでにかなりの時間がかかりそうだ。 「静香?食堂の仕事、午前中だけでも仕事に行ったら? お母さん。貧血の薬を飲んだお陰か、立ちくらみも治ったし、1人で検査も出来るわ! 終わる頃、電話するから!ね?」 今からお店に行けば、10時には着きそうだ。 仕込みだけでも手伝って、直美ちゃんに2時間延長してもらえば、迷惑かけない。 「お母さん!それじゃ、お昼まで仕込みしてくるね。 仕込みは居ないと忙しくて、皆に迷惑かけるから! 1時までには、戻って来るわ!」 「ええ。気をつけて運転してちょうだいよ! 二度と事故なんて起こさないでね? 遅くなってもちゃんと待ってるから! お昼に終わったら、食事してまってるし、病院のどこかにはいるから心配しなくて大丈夫よ!」 母親の言葉に甘えて、静香はお店に向かった。
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