456. 母親の診察は?

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456. 母親の診察は?

「おはようございます!」 「え?岡野さん?来てくれたの? お母さんを病院に連れていくから、遅くなるってメールがあったから… 終わって来たのか?」 まだ、10時だ。そんなはずはないと飯田は思った。 「貧血で起きられなかったみたいだけど… 薬を飲んだら少し良くなって… 病院の診察はまだまだ後みたいだから、とにかく仕込みを終わらせてから、迎えに行くって言って、来ました!」 「ありがとう。助かるよ。お昼は直美ちゃんがバトンタッチしてくれることになってるから! それじゃ、キャベツはいつもの倍お願いします! 直美ちゃんはイカフライするから、衣を付けてくれるか?」 「はい!」 3人で仕込みが始まった。 たった2時間だけど、朝の仕込みの2時間は重要だ。 もちろん、飯田は朝の7時から仕込みは始まっている。 「尚ちゃん?いえ、チーフはお父さんの所に行って来たの?」 「ああ。顔だけ見に行ったよ。 穏やかな顔で寝ていた。 昨日の朝、親父がやっと気がついたみたいだった。 お袋が言ってた。 言葉が詰まって、何を言っているのかわからなく、一度目に倒れて、目が覚めたときの親父より、2度目の今回は、相当ひどいって… 先生が今回はリハビリは相当覚悟してもらわないと、退院出来ないって。 今回は入院3ヶ月、リハビリ3ヶ月で半年は入院生活らしい。 もしかしたら、そのまま介護施設にお世話になるかもな。 お袋が、その方がいいかも知れないって言ってた。 お袋の倍の体重があるから、トイレは行けないから紙オムツだし、お風呂に入らせる事も出来ないから、家で介護するのは出来ないって… 仕方ないよな。 その方がお互いにいいかも知れないな。 俺は店があるから、看病できないしな。」 飯田は下を向いて、深いため息をついた。 静香の母親だって、もし、入院することになったら… 入院中はまだ、いい。 退院したら、当分は静香が面倒診ることになるだろう。 近いからいいが…それでも朝は忙しくなる。 もし、最悪の場合は、飯田に悪いが仕込みは誰かパートを入れてもらうか、お義母さんに働いてもらうかだ。 2人は親のことを考えると、一緒になることを躊躇しはじめた。 諦めたら終わりだ。 長いスパンで何事も考えないと! 太陽が昇らない明日は無いのだから! 望みだけは消したくない2人だった。 「おはようございます♪」 11時に白石が入ってきた。 「加奈さん。今日はお昼で上がるね!」 「え?なんだ?どうした?」 「実は母親が…」 貧血で起きられなくて、病院に検査で今、母親を一人置いて来たことを話した。 「それは心配だ! 私の母親も初めは貧血で、病院に行っていたけど… 小さい病院だったから… ある日、下血して…総合病院に紹介されて… 大腸癌ってわかって… 検査した時は既に遅くて…半年後に死んだんだ…」 「そうなのね? ああ。もし、ガンだったら…」 「静香!それは悪までも私の母親のことだから! すまない。私は余計な事を言ったな! 静香に対して配慮もなかったな。 静香のお母さんは心配するな! ただの貧血だよ! それに昔はガンは治らない病気でも、今は医学が発達してる! あ。また、一言多いな…」 白石は白石なりに励ましていた。 「ありがとう。加奈さん。 悪いことばかり考えないで、結果がなんであれ先生に全てを任せるわ♪」 静香の一言で、白石も頷いた。 暖簾をかけて、お客様が店に入ってくる頃、静香は飯田とアイコンタクトをして、勝手口から帰って行った。 病院に着いたのはそろそろ午後1時になるところだった。 病室内に入ると、大きな伝言掲示板があり、番号が並んでいて終った患者の番号は消えている。 お薬がまだの場合は黄色のランプがついているのだ。 母親の番号は0714。黄色のランプがついていた。 静香の誕生日だったから、番号は覚えていたのだった。 「あ。まだ、お薬出るの待ってる状態だわ。」 静香は薬をもらう待合室に向かった。 「あ!お母さん。検査は終ったの?」 「あ。静香。早かったわね。 今まで検査してたのよ。それこそ人間ドックより、色々調べたわ。 CTスキャンまで入ったわ。 なんかね。 その結果次第では、胃カメラや大腸検査もするかも知れないんですって。 もう、今日はへとへとよ。 お薬は1週間分の貧血の強いお薬が出るみたい。 検査の結果がわからないと、ちゃんとしたお薬は出せないって言われたわ。」 「そう。1週間後ね。来週の月曜日って事ね。」 「静香?大丈夫よ。自分で運転して来るわ。」 「結果がわかるまで心配だから、一緒に先生に聞きたいから、乗せて行くわ。 前もってお店に言っておけば、向こうもそれなりにしてくれるから。」 「悪いわね。」 薬をもらうと、2人は近くのレストランで食事をして、帰宅した。
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