458. 出来上がったイカ飯

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458. 出来上がったイカ飯

「加奈お姉ちゃんの為にこの3杯は皮を剥いておかなかったの。 お魚は触れないみたいだけど、イカは触れる?」 「そうだな。手袋すれば触れるよ。 とにかく、ぬるぬるして手が生臭匂いのが駄目だから。 食べるのは刺身もイカそうめんも好きなんだけどな(笑)」 静香が使い捨てのビニールの手袋を白石に渡した。 「お。サンキュー。」 「それじゃ、内臓を取るよ♪」 憲一の内臓の取り方を見様見真似で、白石も隣でやった。 「へぇ。するすると内臓って取れるんだ♪」 「最後に軟骨みたいな透明の甲を忘れずに引き抜いてね♪ 良く中を洗ってイカの作業は終わりです。 そしたら、もち米を水に浸しておいたからザルにあげてね。」 「オッケー。わかりました♪」 「今回はこの洗ったもち米にゲソを細かく切って混ぜて、イカのお腹に詰め込みます!」 「お。わかった♪」 見たこともない大きなイカのお腹に、生のイカゲソを混ぜたもち米をお玉で詰めて、最後に串刺しで口を止めた。 「師匠?お米に味付けしないのか?」 「うん。みよばあのレシピはそうなんだ。 とりあえず、このイカい1杯だけ炊飯器に入れるよ♪」 「炊飯器〰️?」 「そう!炊飯器にこのもち米が入ったイカを入れるんだ♪ 大きいから出来上がりが丸くなるけどね(笑)」 「へえ?味付けはどうすんの?」 「でかいアオリイカの中に、もち米2合入ってるから、出し汁をコップ一杯、みりんをコップ半分、醤油コップ半分、生姜を切って入れて、お酒を大さじ2杯入れてスイッチオン♪ 後は炊き上がるのを待つだけだよ♪ 簡単でしょ? みよばあが、ずぼら料理だけど誰にでも出来て簡単料理を教えてくれたの♪」 「へぇ♪本当に簡単だな。 イカの大きさで分量が違うって事だな?」 「そうだね。だけど、あまりにもイカが大きいから…残りの2杯は普通の鍋で作ろうと思うよ。 お母さんにも言われたんだけど、多分半分味が染みて、半分は味が染みなくて味付けにムラが出て来るんじゃないの?って言われたから… 今日は実験なんだ。」 「そうか。そうなんだね。 確かに炊飯器に丸めて入れても、イカの方が出し汁の半分は出てるよな? もっと味付けの量を増やせばいいんじゃないか?」 「うん。そうなると…多分、水分が多過ぎて出来上がりがもち米が柔らかくなりすぎて美味しくないと思うんだ…」 「そうか。こちらをたてるとあちらが立たずなのか… それじゃ、途中炊飯器を止めてびっくり返せば?」 「え?加奈お姉ちゃん? 途中炊飯器を止めたら、初めからやり直しで… 今度はお醤油が入っているから焦げちゃうよ?」 「そっか。だから、実験なんだな(笑)」 出来上がりは約1時間後。 後はよしばあから貰ったほうれん草を茹でて、1つはお浸しに。 もう1つはベーコン入りのほうれん草バター焼きを作った。 炊飯器の炊き上がった音楽が鳴った。 憲一はおそるおそる蓋を開けると、見事にムラ無くイカ飯が出来上がっていた。 「わぁ♪綺麗に味がムラ無くついてる♪ 炊飯器の中が煮立った泡で、まんべんなく味が付いたのかな? とにかく、実験は成功したよ~♪」 憲一の実験は成功して、静香も嬉しかった。 「これで、私もまた一品、料理が増えたぞ!」 白石はメモをしっかり取って、おさらいをした。 「なあ?師匠! 明日、1つ貰えるなら生のまま持ち帰ってもいいか? 冷凍保存しても大丈夫か?」 白石はもう一度、自分1人で作ってみたかったのだ。 「加奈さん。いいわよ。それじゃ、もう冷凍庫に入れちゃうね♪」 「加奈お姉ちゃん。必ず解凍してから、炊飯器に入れてね。」 「アハハ。大丈夫だ。 だって、凍っていたら炊飯器に入るような品物じゃないだろ?(笑)」 「それもそうだね。(笑)」 3人の笑いがこだました。 夕方6時前で、ちょっと夕飯は早かったけど3人はイカ飯を美味しく食べた。 お風呂も7時には白石は憲一と一緒に入って、 「静香。お風呂に入っておいでよ。私さ。焼酎と炭酸水とレモンを持ってきたんだ♪ 一緒に飲もう♪」 「うん!ありがとう♪」 憲一は大好きな人生ゲームを持ち出すと、静香と白石は苦笑いをし、焼酎を飲みながらゲームに付き合った。 憲一は夜の9時を過ぎると、自分のベッドに向かった。 静香と2人になると、白石が 「なあ?チーフのお父さんは退院したら、施設に入るのか? まだ、55歳位だよな?」 「そうね。私には分からないわ。 半年は入院することになるってだけ聞いただけだから。」 「私さ…静香にだけ話すんだけどさ。 この間の日曜日、叔父の葬式だったんだ。 私の母親の兄貴な。 従兄弟が遺品を整理していたら、父親の日記が出て来て、その中に私の父親の話じゃないか? って従兄弟が、この35年前の日記を私にくれたんだ。 従兄弟もさ。父親の私情も知らないのは不敏と思ったらしくてさ。 それでさ。母親の事が書いてあったのを読んで…背筋が凍ったんだ。」
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