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473. 静香がお風呂でのぼせる
「静香!静香?大丈夫か?」
「お母さん!死んじゃいやだよ!」
お風呂に入っていた私は、いつの間にか布団で寝ていた。
「え?私…?」
「あまりにも、お風呂から出て来なかったから…
お風呂のドアを開けたら、静香がお風呂の中で寝ていて…
でも、揺り起こしても起きないから、のぼせたんだと思って、ビックリしてお風呂から出したんだ!」
「お父さんね。パジャマをビショビショにして、お母さんを抱きかかえてお風呂から出したんだよ!
死んじゃうのかと思ったよ〰️。」
憲一は静香の目が覚めた顔を見たとたん、泣き出した。
おでこと脇の下と足の裏に冷えピタが貼ってあった。
体は濡らしたバスタオルがかかっていた。
その下は丸裸だった。
「ごめん。静香。のぼせた人にはこれが一番なんだ。
俺、社員旅行で、2度社員を介抱した経験あるんだ(笑)
はい。ポカ○スエット。
憲一。お母さんはもう、大丈夫だから、部屋から出て。
お母さんを着替えさせるから。」
「うん。」
憲一は襖を閉めた。
「お風呂の中で色々考えてたのか?」
「え?あ。お母さんの事を…」
静香はそれ以上は言わなかった。
いえ、言えなかったのだ。
「静香?俺達は家族だ。
静香は何でも1人でやろうとするからな。
すい臓癌は、結構厄介な病気だと聞いている。
社員の家族にも居たみたいでね。
手術できるなら、望みはあるって言ってた。
食事もきっと、退院したら色々大変みたいだしさ。
俺はお金の方で力になるよ。
でも、静香1人じゃないからな?
時間で雇えるお手伝いさんもいるみたいだ。
当分は憲一と3人で実家で暮らしてもいいんじゃないか?
こっちとあっちで、掃除や草刈りは大変だから…
シルバー人材に頼むからさ。
静香は母親の介護だけ考えなよ。
俺はそんなに帰って来られない分、静香に負担が大きいから、出きることを俺はやるつもりだ。」
「よっちゃん…」
よっちゃんはいつもそうだ。
優しすぎるのよ。
だから、私がどうしていいか迷ってしまうんだ。
こんな素敵な旦那さんはきっと居ない…
妊娠したこと…いつ話そう。
「静香。着替えたら、おいで。
かき氷食べよう♪」
旦那も部屋から出て行った。
静香は家族の優しさ、旦那の優しさに心に染みた。
私みたいなどっち付かずの悪い女は、死んでしまえば良かったんだ!
静香は自分を責めて、声を殺して泣いた。
「お母さん♪かき氷出来たよ♪」
憲一が、襖の向こうではしゃいだ声が聞こえた。
静香も泣き止んで、部屋から出てみた。
「憲一にせがまれて買ったかき氷機は、役に立つな(笑)
シロップはなかったけど、小豆の缶詰あったからさ。
砂糖と水を鍋にかけてシロップ作ったんだ。」
「そこにね。バニラのアイスをのせたの♪
凄いでしょ?
クリームあずきフラッペだよ♪」
この幸せな家族の一コマの風景をバラバラにするのは私なんだ…
かき氷を一口食べると、頭がキンキンした。
「静香。駄目だよ。そんなに沢山1度に食べちゃ。
病み上がりなんだから(笑)
口の中で溶かしながら、少しずつ食べるんだよ?」
また、優しい旦那の言葉に、静香は心で謝りながら、心の中で泣きながらかき氷を食べた。
憲一は食べ終わると、歯を磨いて部屋に向かった。
「おやすみ。お母さんはもう大丈夫だよね?」
「ええ。お父さんの的確の処置で全く大丈夫よ。おやすみ。」
「俺達も寝るか。静香?大丈夫かな?」
旦那のその言葉で、今夜はするんだと理解した。
お風呂の中でのぼせて…
旦那が居なかったら、今頃、憲一が119に電話して、病院に運ばれていただろう。
真っ裸で救急隊に運ばれて…
そんな恥ずかしい姿を考えたら、命の恩人の旦那に拒否も出来なかった。
「今夜は優しくするね♪」
あなたはいつも優しいセックスだよ。
静香はお務めと言い聞かせて、今度は飯田にごめんなさいと心の中で言いながら、旦那に抱かれた。
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