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474. とうとう母親の入院の日になった。
次の朝、旦那は朝食を7時過ぎには食べ終わり、社宅に戻る支度をしていた。
憲一が起き出した時はもう、車のエンジンの音が外から聴こえた。
「え?お父さん。もう帰っちゃっうの?」
「みよばあが、手術する今週の木曜日にまた、来るって言ってたわよ。」
憲一は急いで玄関を出ていった。
「お父さん!今度の土曜日は父親参観日なの!
大丈夫だよね?」
「え?父親参観日?そんな日があるのか?父兄参観日じゃなくて?」
「うん。6月は父の日があるから、お父さんと一緒に竹トンボを作るんだ♪
お父さんがいない生徒はおじいちゃんでも、お母さんでも、いいんだけどね。
僕達のクラスはお母さんがいない生徒はいるけど、お父さんがいない生徒は居なかったの。
だから、お父さんの参観日があるんだ。」
「うん。わかったよ。それじゃ、金曜日の夜はよしばあの所に行って、泊まろう♪
そしたら、お父さんも歩いて学校に行けるしさ。
お母さんは病院でみよばあの看病だからさ。」
「うん!そうしよう♪良かった~。お父さんがこっちに来てくれる日で!」
旦那は憲一の頭をくしゃくしゃにしながら
「お母さんの言うこと聞いて、宿題忘れないで学校に行けよな♪」
「うん!」
憲一はお父さんの車が見えなくなるまで手を降っていた。
静香も後から玄関から出て、2人の話を聞いていた。
「憲一?参観日があったの?
ごめんね。お母さんわからなくて…
お母さん…みよばあの病気のことで頭がいっぱいだったから…
お母さん失格ね…」
「いいんだ。ぼくが参観日のお知らせを教室の机の中に置いて来ちゃったから…
僕が悪いんだ!ごめんなさい。」
静香は憲一の頭を撫でた。
こんなに、純粋で素直な息子を…
お母さんの行動で尖った心の息子になってしまうのかな?
静香は怖くて、妊娠したことも、飯田の事も何もかも言えないでいた。
次の日の月曜日。
とうとう母親の入院の日になった。
とりあえず、今日は10時までに病院に行けばいい。
入院承諾書の保証人も、静香の名前で記入した。
もう1人は、よしばあだった。
高額医療費の申請も、事前に役所に行って、「限度額適用認定証」を利用した。
母親の場合、結構手術代がかかると病院側で聞いたので、事前に申請しておくと、退院するとき、食事と差額ベッド代は自腹だが、
1世帯の高額療養費対象者が70歳未満のみの場合の計算例(同じ公的医療保険に加入している場合)
母親は独り暮らしで、年金は夫の遺族年金を支給されていた。
保険は国民健康保険だ。
その場合、
医療機関等に支払った同一月の自己負担額(保険外診療の費用や入院中の食事代等を除く)を、受診者、医療機関、通院・入院、医科・歯科ごとに分け、21,000円以上のもののみ合算し、高額療養費を計算する。
同一の医療機関等における自己負担(院外処方代を含む。)では上限額を超えないときでも、同じ月の複数の医療機関等における自己負担(70歳未満の場合は21,000円以上であることが必要)を合算することができる。
この合算額が負担の上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。
なので、6月の医療費の合計が21000円以上の場合はそれ以上支払う必要がない。
ただし、食事代と個室(差額ベッド代)は自腹。
なので、相部屋の場合、食事代を入れても月に40000円以上は支払わなくて大丈夫なのだ。
ただし、先進医療は別問題。
先進医療の治療が出来るのは、茨城県では筑波大学付属病院のみだ。
その場合、300万円以上かかる。
民間保険に加入してないと、お金がないと先進医療は受けられない。
地獄のさだも金しだい。
とは、よく言ったものだ!
「とりあえず、相部屋で構わないわ。
個室だと、考えなくてもいいことまで考えてしまうから。」
「関根さんの部屋は4人部屋です。
ここは、ガン病棟です。
みんな、病気は癌です。
色々な人がいますが、皆で助け合って頑張って、手術を受けて治して退院しましょうね。」
看護師の言葉に、母親は黙って深く頷いた。
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