475. 手術前の心構え

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475. 手術前の心構え

病室に入ると、3人はベッドの上で話をしていた。 「はじめまして。関根です。よろしくお願いします。」 母親は3人に挨拶をした。 母親より若そうな患者2人と、70歳過ぎた患者が1人だった。 「こんにちは。ここの病室は手術前の待機者の場所なのよ。 私は明日でこちらの2人は明後日なの。 そうすると関根さんは明々後日ね。」 「は…はい…皆さん?不安じゃないですか?」 「不安よう。手術中に死んじゃうかも知れないと思ったら、この病室から脱走しようと思うくらい!」 50代のショートカットの女性が言った。 「だから、1日1日を大切に生きようって皆で話していたところよ。」 70代の女性が母親の方を見て言った。 すると、看護師が 「関根さん。ここは不安な手術前を皆で励ましあって、頑張る所です。 手術後は又、病室が変わります。 集中治療室に3日いて、それから7階に移ります。 もし、手術後個室を希望でしたら、手術の日までに言ってくださいますか? 変更可能ですので。」 「はい。わかりました。」 母親のベッドは廊下側の70代の女性の反対側だった。 静香はベッドの脇のタンスに持ってきた物を入れていった。 「お母さん。3日後引っ越しなら、3日分だけ置いていくね。 荷物運ぶの大変だから。」 すると、70代の女性が 「あら。大丈夫みたいよ。 このタンスはキャスターが付いていて、部屋の移動の時はタンスごと運んでくれるみたいよ。 タンスに入りきれない分は持って帰ったら? 貴重品も鍵付きになっているから安心よ。」 「そうそう。引き出しを開けると 名前が書いてあると思うからチェックして。 はがしやすいシールもあると思うわ。 引き出しの上のつまみをひくと、手紙や書類が書ける台が出てくるわ。 お化粧するときや、顔を見たいときは台は良く見ると二枚重ねになってるの。 上を引き上げると鏡になってるわよ。」 「このタンスは凄く便利よ。 小まめに色々入れられるし、自分で分けられるから、シールで書いて貼れるしね。 何が何処に入っているか一目瞭然わかるようにしておいた方がいいわよ。 手術前に出来る1つの仕事ね。」 70代の隣のショートカットの女性が教えてくれた。 「そうなんですね。ありがとうございます。」 「静香。お母さんの仕事だから、チェックしてシールで書きながらタンスにしまうわ。 退院するまで使うなら、私がするから静香はそろそろ帰って大丈夫よ。」 「うん。わかった。入りきれない分は明日来たとき持って帰るね。 明日はここに来るのは夕方になるけど…。」 「ええ。わかってるわ。ありがとう。」 「それでは、皆さん。母親をよろしくお願いします!」 静香はお辞儀をして、病室を出ていった。 3人は笑顔を静香に向けてくれた。 多分、3日間は母親も安心して過ごせるだろうと思った静香だった。 母親は携帯を持っていない。 これから、色々話したいことがあっても公衆電話では、手術後は難しい。 静香は母親に携帯をプレゼントしようと思って、携帯ショップに向かった。 この頃はまだプリペイド携帯はなかった時代だ。 シニア用の携帯もなかった。 静香は自分と同じ形の携帯を母親に持たせる事にした。 その方が教え安かったからだ。 まあ、昔は電話機能とメールも50文字しか打てないし、ネットに繋がっていなかったから、何の問題もなかった。 ただ、パケ放題とか、かけ放題なんて言うサービスはなかったから、子供達(主に高校生)に携帯を持たせたら、メール1回分いくらとか、携帯1分いくらとか高い時代だった。 わからないでむやみやたらに使用していると、請求書が10万円越えるなんてこともあったのだ。 それを考えると今は本当に安くなったと思う。 まあ、その代わりスマホ本体代金はかなり高くはなったけど。 「あ。これにしようと! 私はシルバーだから、お母さんは白でいいわね♪」 確か、基本料金が3000円位で 買えた時代だった。 それから、使用料が1分刻みでお金がかかるのだ。 (母親は必要以外は使わなかったから、そんなにかからなかった。)
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