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477. 手術後の次の日
4人が集中治療室に入った頃、母親は目が覚めたようだ。
「みよばあ?痛いの?」
憲一が心配そうに尋ねた。
「わからない。麻酔が効いてると思うから痛くはないわ。
今何時?」
「夜の7時よ。主治医の話を聞いたの。
手術は成功だから心配しないでね。
ただ、これから1週間は何も食べられないんだって。
沢山切ったから、内臓が落ち着くまでね。
その後は流動食、退院間近にやっと普通の食事に戻るみたい。
辛いけど、お母さん。頑張って!」
「そうなの。手術は成功なのね?
良かった…大切な内臓を切り落としてしまったのですものね。
切って繋いでの手術だったから、絶食は仕方がないわね。」
そう言うと、母親は目を閉じた。
「お母さん?今日は集中治療室だから看護師さんに任せて帰るけど、明日は朝から来るからね♪
仕事は2週間お休みもらったの。
家族で力強いを合わせて、早く病気を治しましょうね!」
母親はまた、眼を開けて皆にお辞儀をするような仕草をした。
「お母さん。寝ててね。これが呼び出しボタンよ。
おトイレも行けないから、管が入ってるの。痛くなったら、直ぐにボタン押してねってこと看護師さんが言ってたわ。」
「みよさんの明るい顔も見られたし、そろそろ帰るかんな?」
よしばあはみよばあの手を握ると笑顔で、答えた。
「よしさん。ありがとうございます。」
母親は、手を降る格好をした。
4人は看護師に頼んで集中治療室を出た。
「静香。途中、夕飯を食べて、俺と憲一はそのままお袋と一緒に帰るよ。
明日は父親参観日だからさ。
土曜日の夕方帰るから。
静香は1日病院だろ?」
「そうね。明日は朝から1日居ようと思うの。
夕方7時までには帰るわ。」
「わかった。憲一と何か、夕飯作っておくよ♪」
「ありがとう。よろしくお願いします。」
そう言って、途中のラーメン店でラーメンを食べて、旦那の車に憲一とよしばあを乗せてそのまま、よしばあの家に向かった。
静香は1人、自宅に帰っていった。
独りで、自宅に帰った静香は
「お風呂作るのもったいないから、シャワー浴びて寝よう♪」
静香はシャワーを浴びながら、ふと母親の事を考えた。
お母さんはお父さんが亡くなって…6年になるのね?
お風呂はシャワーだったのかしら?
私がもったいないって思うんだから…どうしていたのかな?
お義母さんも独り暮らしよね?
ちゃんとお風呂に浸かっているのかしら?
憲一が居ないと本当に静かだ。
静か過ぎて居心地が悪い。
母親達は私達が帰った後、一人っきりになると、寂しくなったかもね。
今の私がそうだから…
赤ちゃん…赤ちゃんが生まれたら、憲一はきっと可愛がってくれる。
その可愛い弟か妹だけを連れて、出ていくなんて…
私には出来ない…
お母さんは僕を捨てて、赤ちゃんだけ連れて、尚ちゃんの所に行っちゃった~!
それは、紛れもなく、そうなった時は言われてしまう。
その事で、母親がストレスで癌の再発なんて事になったら…
私は一生、泣いて暮らすのかな?
そして、DNAを調べて…
もしも、尚ちゃんとの子供じゃないと知ったら…
私達の仲も終わってしまう…
最悪のシナリオだ。
もう、静香は憲一が居ない夜に、ナーバスの事しか考えられないでいた。
あまり、寝られずに静香は朝を迎えた。
とりあえず、朝食をとり、洗濯物を部屋干しすると病院に向かった。
『あ!金魚の餌さと花壇と家の中にある鉢に水をあげに行かないと!』
静香はUターンすると、実家に向かった。
雨戸を開けて、空気を入れ換えた。
金魚も鉢も、これから3週間近くいつも真っ暗で可哀想だ。
これからは、2つの家を見回りするしかないと思った。
退院したら、当分実家暮らしだ。
花壇の花も鉢も金魚も何となくだが、元気がないように見えた。
それは静香の気持ちその物なのかも知れない。
モップをかけて、冷蔵庫の中にある物の有効期限をチェックした。
冷凍庫を開けると、この間静香が持ってきたイカが調理させずにそのまま入っていた。
『独りじゃ、冷凍庫の中の処分は量が多くてそのまま入っているんだ。大きな冷蔵庫は要らないのかも知れないね。』
独りだと、少しの量でご飯が済んでしまうから、冷凍庫まで開けないのかな?
静香は冷凍庫にある食品で退院したら、作ろうと思った。
ルルル。そんな中、静香の携帯に呼び出し音が鳴った。
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