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479. 個室
個室に移った母親は、何となく満足そうだった。
テレビの音量も気にせず観ることが出来るし、兄弟がお見舞いに訪れても、ソファーがあるから個室で話も出来た。
その頃はトイレも1人で行けるようになり、母親の顔にも笑顔が出るようになった。
美咲は個室に移った日に仕事でハワイに行くと行って、病院を後にした。
今度、母親に会いに来るときは10日後と言っていた。
個室に移って1週間後の日曜日、母親は朝からお粥が出て嬉しそうだった。
「やっと、断食からの解放ね♪
点滴があるから、耐えられたけど、絶食って断食修行と同じよね(笑)」
「岡野さん。ゆっくり、一口一口噛むようにして食べてくださいね。」
「はい。わかりました。」
今日は旦那がよしばあと憲一を連れて、お見舞いにやってくる日だ。
母親は首を長くして待っていたのだ。
コンコン
「どうぞ、お入りください。」
「みよばあ。凄いね♪1人用のお部屋で寝てる♪
みよばあ?まだ痛いの?」
「憲一。良く来てくれたわね♪
もう、切った所も治って、痛くないわ。
今日から、やっとご飯が食べられるようになったの♪」
「え〰️!!みよばあ?
手術してから何にも食べて無かったの?
え〰️!!死んじゃうよ?
病院ってひどいところだね!」
「フフフ。そうね。
普通は死んじゃう一本手前かもね。
憲一。食べなくても大丈夫なのよ?
点滴してから。
1日の栄養だけは補給してるの。
看護師さんが言ってたわ。
点滴だけで、3ヶ月は生きられるんですって。」
「え?そうなの?
でも…僕は耐えられないや…美味しいご飯が食べられないなんて…
みよばあは偉いね♪」
母親は憲一の頭を撫でた。
「ありがとう。
手術したから、長生き出来て、憲一の成長を観ることが出来るのよ♪
1週間我慢することなんて、憲一の為なら平気なのよ♪」
「僕、みよばあの役にたってるの?」
「役にたってるどころか、おばあちゃんの生き甲斐そのものよ♪
憲一が大きくなって、レストランを開業して、おばあちゃんはそのレストランで食事をするのが夢なんだからね♪」
「みよばあ。」
「おれもだぞ!おれも憲一のレストランで食事をするのが、夢だかんな。」
「よしばあ…」
「美味しいお米と野菜を提供したいから、ばあちゃんは畑に田んぼに精を出しているんだよ♪」
「ははは。憲一は凄いなー。
憲一は2人のおばあちゃんの夢を叶えてあげないといけないね♪」
「うん!僕はおばあちゃん達の為に、頑張ってレストラン開くよ♪」
病院の個室で笑い声が聞けたのは、入院して初めてだった。
「静香。そろそろ2週間たつな。
仕事は明後日からか?」
「そうね。お母さん?もう、大丈夫?」
「ええ。静香も仕事に行ってほしいわ。
兄弟のお見舞いも全員来てくれたし、トイレもちゃんと1人で行けるし、後は看護師さんにやってもらうから大丈夫よ♪」
「そうなのね。それじゃ、毎日帰りに寄るからね♪」
静香は明後日から、仕事しますと飯田にメールを入れた。
『良かった~。明後日バイトの直美ちゃんが月に一度の通信教育の研修の為に学校に行く日なんだ。朝8時に来てくれると助かる』
2週間も休んでの、朝からの仕事はきついが、飯田の元に走れる静香の胸中は嬉しさに変わった。
仕事の当日。
静香はいつもより早く起きて、
「憲一?
お母さんは8時までに仕事に行くから、憲一より早く出るわよ!
仕事に行く前にみよばあの家に寄らないといけないしね!」
「うん。わかったよ。ちゃんと鍵を閉めて出るから大丈夫だよ。」
静香は6時半には家を出た。
実家の雨戸を開けて、花壇に水を巻いて、金魚に餌を与えた。
家の中に光が入ることは、やはり金魚も鉢の花達も嬉しそうだ。
そして、静香は店に車を走らせた。
7:40には店に着いた。
いつもは渋滞で50分かかるところが、7時ちょっと前に出るとあまり渋滞に巻き込まれないのだ。
朝早くか、9時過ぎに家を出ると国道は混まないことを知った。
「おはようございます!」
静香は元気に店の中に入っていった。
「おはよう。早かったね♪」
「うん。尚ちゃんの顔が早く見たかったから♪」
「静香。俺もだよ。もう、2週間が長くて長くて…死にそうだった!」
そう言うと、飯田は静香を抱き締めた。
「お袋さんは元気になったのか?」
「うん。自分で何でも出来るから、もう大丈夫よ♪」
「お腹の子は?」
「うん。きっとスクスク育ってるわ。」
静香は妊娠した事は、誰にも言えてなかった。
「フェラしてくれる?」
静香は頷き、2人は倉庫に向かった。
「もう、このまま静香は休みを取って来ないかもな!なんて、考えてしまったよ。」
「そんなこと考えないで。
ちゃんと2週間って、お約束して休んだのよ?」
「だって…難しい手術だって…
あ。静香。心の準備が…」
既に静香の口の中に飯田の息子が咥えられていた。
静香も久々のフェラに、興奮していた。
「静香?静香もしたいんじゃない?」
飯田は静香の肩を掴んで、口を離させた。
「静香も気持ち良くしてあげたい」
「え?お義母さんは来ないの?」
「今日は来ない日だ。
直美ちゃんの紹介の子が来る日だからさ。
ましてや、静香が来てくれると伝えてあるしな。
始まっちゃうと、止まらないよな♪」
米袋の上に、ゴミ袋をシート代わりして、静香を寝かせた。
2週間会えなかっただけで、2人は体が欲しくて堪らなった。
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