482. 流産してしまった静香の心境

1/1

278人が本棚に入れています
本棚に追加
/675ページ

482. 流産してしまった静香の心境

静香は疲れが出たのか、点滴をしながらうとうとと2時間近く、寝ていた。 カーテンを開ける音がした。 すると、看護師が 「2時間経ちましたね。 点滴は終わりです。起きられますか?」 静香は起き上がると、頭がくらくらした。 大量の出血のお陰で一時的に貧血を起こしたのだった。 「岡野さん?大丈夫ですか? 貧血のお薬も、処方されています。 ただ、もう、会計は閉まっているので、別室の窓口にこちらを出してくださいますか?」 「わかりました。」 静香は処方箋の用紙を持ちながら、病室を後にした。 会計を済まし、薬を手にした時には、もう6時半には、なっていた。 先生は出来るだけ、迎えに来てもらってくださいとは言うものの、誰にも連絡出来ないでいた。 母親の個室の前に立つと コンコン! 「静香です。入るよ。」 「静香?顔色が悪いわよ? ずいぶん遅かったわね。何かあったの?」 「う…ん。車の調子がおかしくて、ディーラーに行ってたの。 アクセルを踏んでもスピード出なくて… おかしいと思って、点検してもらってたから…遅くなってしまったわ💦」 「まあ。そうなの? いやね~新車なのに! 又事故なんて起こしたら大変だったわね。 良かったわ、静香が無事で。」 「ホント!危機一髪だったのよ! 危うくトラックとぶつかる所だったの。 もう、パニックよね。 だから、運転が怖くなって… 休み休み来たから遅くなっちゃったの。 洗い物持っていくね。 憲一が待ってるから、帰るわね。」 「ええ。気を付けてね。 もう、外は真っ暗ね。 慎重に運転してね。」 「わかった。じゃあね。」 「静香。疲れてるのね? 毎日来なくても大丈夫よ。 憲一の事を第一に考えてね。 お母さんはもう、1人で出きるから! お風呂に入って洗い物が出たときで構わないわ♪ 静香も身体に気を付けないと! 自宅に戻ったら、お世話になるんだからね。 パートも時間短縮してもらったら?」 「そうね。そうする!」 本当は、今日は2時間も短縮してくれた。 その事は母親には伝えず、ごまかした返事をした。 静香は時速を落として、ゆっくり運転をして自宅に帰っていった。 『これじゃ、車を治した前の運転ね。 追い越されてもいいわ。 とにかく、ゆっくり運転していくわ。』 自宅に着いたのは7時半だった。 「ごめん。遅くなっちゃった。」 「おかえりなさい。 そうめん茹でて待ってたよ♪」 憲一がそうめんをザルに盛っていた所だった。 「後ね。冷凍室に入っていたハンバーグをグリルで焼いたよ♪」 「憲一はいい子ね!」 静香は憲一を抱き締めた。 「うわ〰️。お母さん。苦しいよ〰️。」 いつものお母さんの態度じゃなかったので、憲一はびっくりした。 お腹の子が、流れてしまった静香の心は、悲しさで溢れていた。 「お母さん?泣いてるの?」 「う…ん。お腹が痛くて泣いてるだけよ。」 「お母さん?みよばあの病院に行って来たんでしょ? 先生に診てもらってくれば、良かったのに!」 「うん。診てもらってお薬もらってあるわ。 憲一。お水を持ってきて。」 「うん。」 憲一はお母さんに抱き締められた事が、なんか恥ずかしくて、顔を赤くしながら台所に立った。 憲一に水をもらうと、薬を飲んだ。 「ありがとう。少し落ち着いたわ。 それじゃ、そうめん食べましょ? お母さん、今日はそうめんが食べたかったの♪」 「そうなんだ。良かった~。 今日は暑かったから、麺類がいいなあって思って、お母さんが好きなそうめんにしたよ♪ お父さんがいるときは、うどんだけどね。」 「そうね。お父さんはそうめんはあまり食べないものね。」 「なんかね。うどんは歯ごたえがあって、食べたって気がするからなんだって。 つゆもさ。カレーに付けて食べるのが好きだから、冷凍カレーをいっぱい作るんだよね(笑)」 「どんだけカレーが好きなのかしらね(笑)」 そんな話をしながら、和やかに夕食を食べた。 それから、静香はシャワーだけ浴びると、寝床に入った。 「憲一。お母さん、先に寝るね。 まだ、少しお腹痛いから。」 「うん。僕もそろそろ寝るよ。」 夜の9時だったが、2人は自分の部屋で就寝した。 静香は眠くはなかったが、早く1人になりたかった。 憲一の前でも、お腹の子の事を考えると涙が溢れて止まらなくなるからだ。 『尚ちゃんには、話さないといけないよね? 明日、仕事を休みたいし、今、メールしておかないとお店の予定が立たなくて迷惑かけるものね?』 静香は、 『帰りに車の調子がおかしくてディーラーに寄る前の交差点で危うく正面衝突する事故になるところだった。 そのために、お腹が痛くなり、ディーラーのスタッフに病院まで車を運転してもらった。 先生に流産したことを告げられた。 お腹の子が流れてしまった。 なので、明日お休みします。 迷惑かけるけど、ごめんなさい。』 そんな長い内容を何度も区切りながらメールした。 (昔は50文字しか、一回に打てなかった時代だった。)
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加