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482. 流産してしまった静香の心境
静香は疲れが出たのか、点滴をしながらうとうとと2時間近く、寝ていた。
カーテンを開ける音がした。
すると、看護師が
「2時間経ちましたね。
点滴は終わりです。起きられますか?」
静香は起き上がると、頭がくらくらした。
大量の出血のお陰で一時的に貧血を起こしたのだった。
「岡野さん?大丈夫ですか?
貧血のお薬も、処方されています。
ただ、もう、会計は閉まっているので、別室の窓口にこちらを出してくださいますか?」
「わかりました。」
静香は処方箋の用紙を持ちながら、病室を後にした。
会計を済まし、薬を手にした時には、もう6時半には、なっていた。
先生は出来るだけ、迎えに来てもらってくださいとは言うものの、誰にも連絡出来ないでいた。
母親の個室の前に立つと
コンコン!
「静香です。入るよ。」
「静香?顔色が悪いわよ?
ずいぶん遅かったわね。何かあったの?」
「う…ん。車の調子がおかしくて、ディーラーに行ってたの。
アクセルを踏んでもスピード出なくて…
おかしいと思って、点検してもらってたから…遅くなってしまったわ💦」
「まあ。そうなの?
いやね~新車なのに!
又事故なんて起こしたら大変だったわね。
良かったわ、静香が無事で。」
「ホント!危機一髪だったのよ!
危うくトラックとぶつかる所だったの。
もう、パニックよね。
だから、運転が怖くなって…
休み休み来たから遅くなっちゃったの。
洗い物持っていくね。
憲一が待ってるから、帰るわね。」
「ええ。気を付けてね。
もう、外は真っ暗ね。
慎重に運転してね。」
「わかった。じゃあね。」
「静香。疲れてるのね?
毎日来なくても大丈夫よ。
憲一の事を第一に考えてね。
お母さんはもう、1人で出きるから!
お風呂に入って洗い物が出たときで構わないわ♪
静香も身体に気を付けないと!
自宅に戻ったら、お世話になるんだからね。
パートも時間短縮してもらったら?」
「そうね。そうする!」
本当は、今日は2時間も短縮してくれた。
その事は母親には伝えず、ごまかした返事をした。
静香は時速を落として、ゆっくり運転をして自宅に帰っていった。
『これじゃ、車を治した前の運転ね。
追い越されてもいいわ。
とにかく、ゆっくり運転していくわ。』
自宅に着いたのは7時半だった。
「ごめん。遅くなっちゃった。」
「おかえりなさい。
そうめん茹でて待ってたよ♪」
憲一がそうめんをザルに盛っていた所だった。
「後ね。冷凍室に入っていたハンバーグをグリルで焼いたよ♪」
「憲一はいい子ね!」
静香は憲一を抱き締めた。
「うわ〰️。お母さん。苦しいよ〰️。」
いつものお母さんの態度じゃなかったので、憲一はびっくりした。
お腹の子が、流れてしまった静香の心は、悲しさで溢れていた。
「お母さん?泣いてるの?」
「う…ん。お腹が痛くて泣いてるだけよ。」
「お母さん?みよばあの病院に行って来たんでしょ?
先生に診てもらってくれば、良かったのに!」
「うん。診てもらってお薬もらってあるわ。
憲一。お水を持ってきて。」
「うん。」
憲一はお母さんに抱き締められた事が、なんか恥ずかしくて、顔を赤くしながら台所に立った。
憲一に水をもらうと、薬を飲んだ。
「ありがとう。少し落ち着いたわ。
それじゃ、そうめん食べましょ?
お母さん、今日はそうめんが食べたかったの♪」
「そうなんだ。良かった~。
今日は暑かったから、麺類がいいなあって思って、お母さんが好きなそうめんにしたよ♪
お父さんがいるときは、うどんだけどね。」
「そうね。お父さんはそうめんはあまり食べないものね。」
「なんかね。うどんは歯ごたえがあって、食べたって気がするからなんだって。
つゆもさ。カレーに付けて食べるのが好きだから、冷凍カレーをいっぱい作るんだよね(笑)」
「どんだけカレーが好きなのかしらね(笑)」
そんな話をしながら、和やかに夕食を食べた。
それから、静香はシャワーだけ浴びると、寝床に入った。
「憲一。お母さん、先に寝るね。
まだ、少しお腹痛いから。」
「うん。僕もそろそろ寝るよ。」
夜の9時だったが、2人は自分の部屋で就寝した。
静香は眠くはなかったが、早く1人になりたかった。
憲一の前でも、お腹の子の事を考えると涙が溢れて止まらなくなるからだ。
『尚ちゃんには、話さないといけないよね?
明日、仕事を休みたいし、今、メールしておかないとお店の予定が立たなくて迷惑かけるものね?』
静香は、
『帰りに車の調子がおかしくてディーラーに寄る前の交差点で危うく正面衝突する事故になるところだった。
そのために、お腹が痛くなり、ディーラーのスタッフに病院まで車を運転してもらった。
先生に流産したことを告げられた。
お腹の子が流れてしまった。
なので、明日お休みします。
迷惑かけるけど、ごめんなさい。』
そんな長い内容を何度も区切りながらメールした。
(昔は50文字しか、一回に打てなかった時代だった。)
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