483. 突然の訪問者

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483. 突然の訪問者

飯田からメールが返って来なかった。 店の後片付けがまだ、終わらないんだと思っていた。 9時半過ぎに、玄関のドアをノックする音が聞こえた。 「え?こんな時間に誰?」 「静香。俺だよ。」 「え?尚ちゃん?」 静香はびっくりして、玄関のドアを開けた。 そこには飯田が悲しそうな顔をして立っていた。 「静香?俺の子が、流れてしまったの?」 「ごめんなさい。尚ちゃ…」 飯田は静香を抱き締めた。 「事故しそうになったのか? 良かった。静香が無事で!」 「赤ちゃんが…赤ちゃんが…」 静香は啜るような声で、飯田の胸で泣いた。 しばらく、玄関前で抱き合っていた2人だったが、静香は泣き止み 飯田をソファーに座らせた。 「尚ちゃん?夜ご飯は?」 「いや。まだだ。」 「それじゃ、何か作るわ。ご飯は無いから素麺でいい?」 「ああ。お願いするよ。」 「尚ちゃん?お風呂に入っていく?着替えはいつも置いてあるわ。」 「そうだな。ありがとう。」 静香は憲一がしてくれた事を飯田にした。 冷凍手作りハンバーグをグリルにいれると、サラダを作り始めた。 素麺は3束茹でた。(揖保乃糸) 飯田が濡れた髪をタオルで乾かしながら、お風呂から出て来た。 「お。今日は俺の好きなハンバーグだったのか?嬉しいな。」 飯田はソファーに座ると、迷いもなく始めにハンバーグをたいらげた。 「あ~♪旨い。静香はハンバーグが得意だよな。 ハンバーグだけは俺より旨いよ♪」 素麺を啜りながら笑顔で静香に答えていた。 手作りハンバーグだけど、沢山作って冷凍保存しておいたんだけどね。 でも、それは言わないことにするわ。 「尚ちゃん。メールしてからここに来るのが早かったわね。」 「ああ。イオンモールにいたんだ♪ 金曜日に、静香に渡そうと思ってさ。 ちょっと待ってて。車から取って来るから♪」 そう言うと、飯田は車に戻った。 静香はその間、食べたものをかたずけて、コーヒーを挽いた。 綺麗な紙手提げを持って戻ってきた飯田の口から 「5日も早いけど、お誕生日おめでとう♪」 「え?誕生日プレゼント?」 静香は自分の誕生日が近いことも、忘れていた。 「静香。今週いっぱいは休養を取りなよ。 これは、経営者からの命令だ。 だから、早めだけどプレゼントを受け取ってくれ。」 「尚ちゃん…ありがとう。」 静香はプレゼントの中身を見ないうちから、泣いていた。 飯田の全ての行動が、静香の心を癒してくれるからだ。 その上にプレゼントまで、考えてくれていて… 流産は静香にとっても、飯田にとってもショックな出来事だけど… こんな風に夜も遅いのに、駆けつけてくれる飯田の思いが心に染みて、泣けて来るほど嬉しい静香だった。 「静香?嬉し泣きだよな? プレゼントを開けてから泣いてくれよ?」 静香は頷いて、プレゼントを開けた。 大きな箱を開けると、アラベスク柄のピンク色の可愛いジュエリーボックスだった。 引出しが3つあり、蓋を開けると鏡が出てきた。 「うわ~♪私、ジュエリーボックスが欲しかったの〰️。嬉しい。」 「これから、毎年、その中に入れる宝石をお誕生日毎にプレゼントするつもりなんだ♪ 去年はネックレスだったよね? 今年はこれだよ♪」 そう言うと、飯田はポケットから取り出して、もう1つ小さい箱を静香の手のひらに置いた。 「え?2つもプレゼントがもらえるの?」 「ハハハ。当たり前だろ? ジュエリー無しの箱だけって? 静香を泣かせられるか?」 その小さな箱の中には、イヤリングが入っていた。 「静香はピアスしないからさ。 これは、去年買ったネックレスとペアなんだ。 本物の金のイヤリングだ。 同窓会とか、パーティーとか、結婚披露宴に呼ばれたときにしてくれよ♪ 女性はこういうのが、好きなんだろう?」 「ええ。宝石箱が好きよ♪ 嬉しいわ。毎年、1つずつ、増えて行くのね♪ この宝石箱に入らないくらい沢山貰えたら、嬉しいわ。」 「そうしてくれ。30年間プレゼントしたら30個になるんだな! そのくらいは余裕で、入るよな(笑)」 「尚ちゃん…本当にありがとう。 嬉しい…」 静香は嬉し泣きで、涙が溢れだした。 「ん。喜んで貰えて嬉しいよ♪ 静香?今度子供を作るときは、やっぱり結婚してからにしよう。 旦那の子供として、籍に入るのはやっぱり嫌だから… そんな俺の気持ちが、こういう結果に繋がったのかも知れないな。 流れたんじゃない! 又、戻っておいで。 そういう気持ちで今回は諦めよう。 静香のお袋さんが、前と同じように身体が良くなったら、結婚しよう。 それまで、俺は待つから!」 静香は、2人は同じ気持ちだったのだとわかった瞬間だった。 だから、この子は遠慮して流れてしまったんだ。 これで良かったんだと、言い聞かせた静香だった。 「今夜はキスだけして帰るよ。」 ソファーに座っていた飯田の隣に静香は近付き、熱い濃厚な口付けをした。 飯田は静香をソファーに倒すと それ以上の事を望んでしまった。 「ごめん。静香。フェラしてくれる?」 静香は頷くと、プレゼントのお返しとばかりに激しいフェラが始まった。
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