491. 旦那の家族への思い

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491. 旦那の家族への思い

静香は家を掃除して、雨戸を閉めて実家に戻ると 旦那の車があった。 玄関を上がると 「よっちゃん?憲一と買い物して帰って来たの?早かったわね。」 「ああ。ディーラーは予約だったからね。 キャンペーンの抽選会をしたら、憲一が一等賞を当てたんだ。」 「そうだよ♪ 凄いんだよ!フードプロセッサーが当たったんだよ♪ それとね。ランチョンマットだよ♪」 「ちょうどさ。イワシのつみれを作るのに最高な品物だよな。」 旦那が憲一の頭を撫でて話していた。 「そうね。フードプロセッサーが壊れてしまって、買わなくちゃって思っていたから。 憲一は本当に天使に見えるわ(笑)」 母親が微笑んでいた。 本当に憲一は我が家族の天使かも知れない。 大人3人だけでは、なんとなくだが笑顔も作り笑顔になるし、旦那との会話も少ないし、ましてや旦那が病気の母親との間で気のきいた話しも出なかったかも知れない。 そこに憲一が入ると、本当にいつも賑やかになり楽しくなるのだから不思議だ。 考えてみれば、旦那と実家に泊まるなんて初めての事だった。 あまりにも近い実家だけに、泊まると言う感覚は全く持ち合わせて無かった。 本当は家から持って来るはずだった物が、抽選会で当たったフードプロセッサー。 憲一はよしばあに包丁裁きを視て貰いたくて、フードプロセッサーで、イワシのつみれを作りたかったのだ。 「憲一!凄いわね。 うろこもちゃんと取って、頭を切って手で内蔵を取れるなんて! いい板前になれるわよ♪」 母親は手ばたきして、喜んでいた。 「うん。これはね。お父さんに教えて貰ったんだ♪ お父さんの社宅に泊まって、釣りを2人でしに行ったとき、いっぱいイワシが釣れたの♪ それでね。イワシのフライとつみれを作って食べたんだ。 イワシはね。栄養があって脳にも体にもいいんだって♪ だから、みよばあに食べらせてあげたかったの♪」 母親は目頭を熱くしながら、憲一の頭を撫でいた。 「本当に憲一は天使よ♪天使!」 静香は微笑ましい光景に、胸を痛めた。 母親の喜んだ顔は後何回見られるのかな? この笑顔を壊すのは私だ… 尚ちゃんとは別れたくない… だけど…母親を泣かしてまで、出てはいけない。 旦那はあんなにも、母親の笑顔を壊さないように良い旦那でいてくれる… 本当の幸せってなんだろう… 泣きたくなるほど、静香は考えさせられていた。 イワシのつみれとイワシのフライを夕飯のおかずにして、4人で食べた。 夕飯が終わると、母親は憲一とお風呂に入った。 静香が台所の流し台でお皿を洗っていると、旦那が横に来てお皿を拭いてくれた。 「ありがとう。よっちゃん。 そんなに気を遣わなくていいわよ? 疲れたでしょ? 千葉から帰って来て、ゆっくりしてないじゃない? 座ってコーヒーでも飲んでて?」 「ん。なあ。静香?」 「え?なあに?」 「ディーラーの小池さんに聞いたよ。 妊娠していたのか?」 「え?あ。小池さんが話したの?」 「ああ。俺の嫁さんと多分同じなんじゃないかな?って… その後はどうなったかわからないけどって… ごめんな。俺…何にも知らなくて… 子供がもう一人欲しいって言ったあの時…妊娠したんだよな?」 「…そうかもね…私自信も全く流産するまで、わからなかったの… 母親の病気の事で頭がいっぱいで…」 「そうだよな…あれからまだ2ヶ月経ってないもんな… 何も知らなくて…静香だけ、辛い思いをさせて本当にごめんな。」 旦那はそう言うと、そっと静香の肩を抱いた。 「本当に悪かった。 静香の子宮がそんなに良くないなんて…思ってなかったから… 子供作るの…当分無理だな… 今はお義母さんの病気を良くすることと、静香の子宮を早く治す事に専念しような。」 「う…ん。ありがとう…」 静香は流産の事を思い出して涙した。 「仕事…チーフが怪我して休業中なんだってな。 今はお義母さんの事もあるから、仕事をさがさなくてもいいからな! 俺がその分頑張るから♪」 「よっちゃん?いいよ。 そんなに…これ以上頑張ったら、今度は尚ちゃんが倒れてしまうから!」 静香は残業を増やすんだろうと察した。 「いや。実は工場長が、今月決算が終わったら、俺を係長に任命するって言ってくれてるんだ。 工場長が役員会で俺を推薦してくれたらしい。 そうなると、月々のお給料が5万円も多くなるんだ♪ その分静香に振り込められるだろう? マイホームは考え直そうと思う。 お義母さんが元気になるまでここにいようよ。 いや、リフォームして同居しても構わないと思っているんだ。 あんな笑顔が見られるなら… お義母さんの笑顔を壊したくないだろ?」 「尚ちゃん…」 「お義母さんの体が治って、静香が働きだしたら憲一だって、1人よりおばあちゃんと一緒の方がいいに決まってる。」 「でも、今の家はどうするの?」 「貸したって構わないだろ? そうすれば家賃が入るだろ? 一石二鳥だと思わないか?」 思いがけない旦那の意見に静香は驚きと戸惑いを感じた。
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