493. 白石が実家に来る日

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493. 白石が実家に来る日

静香は途中、『しまむら』で下着を買って、スーパーでおかずを買って帰宅した。 「静香。遅かったわね。 よっちゃんは社宅に戻るって言って、行っちゃったわよ?」 「あ。そうなんだ。よっちゃんの下着と憲一の下着を買ってきたのよ。 それに、イオンモールでウインドショッピングしてたから… (と、嘘をついた) 時間が経つのって早いわね。 もう、4時過ぎになるんだ。 よっちゃんにメールするわ。」 いつもは、旦那が社宅に帰ってもメールなんて入れたこと無かった静香だったが、今朝、母親に気遣いが無いって言われてしまったから 『イオンモールでウインドショッピングしていたので遅くなってごめんなさい。よっちゃんの下着を買ってきたの。気をつけて運転してね』 そんな内容のメールを送った。 『ぐっすり寝たから、快調だよ。 夕方になる前に社宅に帰りたかったからさ。7月は静香の誕生日だから、第2土曜日は帰るね♪』 そんな内容の旦那のメールだった。 私の誕生日…32歳になるんだ。 本厄全開だわ! ああ。早く厄年終わって欲しいよ。 悪いことばかり続くんだもの… 夕食はバターを極力少なくしたグラタンを作って3人で食べた。 次の日の月曜日の朝。 「お母さん?今日の夕方加奈お姉ちゃんがお泊まりに来るんだよね?」 「そうよ。明日は憲一の学校の創立記念日なんでしょ?」 「うん!だから、お母さんにおかず買ってきて欲しいんだ!」 「え?料理教室の材料って事?」 「そうそう、みよばあがお餅が食べたいんだって♪」 「え?お餅?」 「ええ。そうなのよ。もち米があるのよ。 いつも、お粥ばかりだから… お餅が食べたくて。 憲一が五色お餅を作った話をしてくれたから、是非一緒に作りたくてね。」 「もち米…お母さん、冷やしてないわよ?」 「私が昨日、静香が居ない時に冷やしておいて冷蔵庫の中に入れて置いたわ♪」 「あ!あのステンレスのボウルに入ってるのがそうなの?」 「ええ。少しだけね。一升餅だけ作ろうと思って…お餅を作る機械も出して置いたのよ♪」 「あ!あの段ボール! お餅作る機械だったんだ!」 「だから、お母さん! きな粉と小豆のあんこと雑煮を作る材料を買ってきてね♪ 去年の暮れみたいに忘れないでね!」 「ハイハイ!大根と納豆はあるものね。それと雑煮の材料ね。 わかりました!」 「絶対だよ!」 そう言うと、憲一はランドセルを背負って玄関を飛び出した。 「憲一!車に気をつけて行ってらっしゃいね♪」 「は~い♪みよばあ。行ってきま~す。」 玄関のドアから顔を出して、笑顔でみよばあに手を振った。 「うわ〰️。お母さんの時と偉い違いね!」 憲一とみよばあがアイコンタクトしていたのだ。 「ホント孫って可愛いわね♪ 同居できて嬉しいわ♪」 母親の屈託の無い笑顔が静香は一番見たかった風景だったが、ちょっと母親に焼きもちを妬いた。 「一番お母さんに優しくないのは、憲一だわよね!」 母親はケラケラと笑っているだけだった。 夕方、白石からメールが来た。 『今から出る。静香の家に行けばいいんだよな?』 『うん。自宅で待ってるね。』 静香は憲一に頼まれたおかずを買ってから自宅に戻って行った。 母親は餅つきの準備を始めた。 1時間後、静香が白石を自分の車に乗せて実家に帰って来た。 「こんにちは!白石加奈子です。 静香のお母さん♪よろしくお願いします。」 「あら。こんにちは。いつも憲一から加奈子さんの事は聞いてるわ。 お怪我はもう、大丈夫なの? 片眼が不自由だって聞いたけど…」 「はい。怪我は大丈夫です。 片眼は角膜ドナーの順番待ちです。 結構片眼だと疲れますが… 憲ちゃんのレシピのお陰で自律神経失調症も治って、頭痛持ちも治りました。」 「え?憲一の自律神経失調症のレシピ?」 「そうなのよ!憲一ったら図書室で自律神経失調症を治すレシピ本なんて借りてきてね。 加奈さんが作れそうなレシピを紹介していたわ♪ 料理となると、熱心に図書室まで行って調べるんだから! 勉強に興味持てたら末は博士かもね♪って言ったら、 僕は料理人になりたいから色んな角度から勉強しているんですって! それでね!お父さんとお母さんの子に博士なんて子が出来るわけ無いでしょ! なんて言うのよ! 全く!可愛くないんだから!」 白石と母親は顔を見合わせて笑っていた。 「静香?料理人も立派な職業だよ? 私から見たら魔法使いだよ! 博士は勉強すればなれるけど、立派な料理人は包丁裁きが器用に出来ないとなれないんだよ? 私は料理人の方が偉いと思うよ♪ チーフ…右手が命なのに… 包丁裁きが出来るようになるのかな? それが心配でさ。」 憲一の話から、いつの間にか飯田の話になっていた。
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