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468. しらをきる静香
「あれ?加奈さん?お見舞いに来てくれたの?」
「あ。チーフ。シャワー浴びていたのか?」
「え?あ。そ、そうだ。手術前に入っておかないとな。
手術すると、2、3日入れないからさ。
1人で来たの?」
「ああ。静香にメールしたんだけど、返信なかったから…
チーフは静香に会ったのか?」
「え?な、なんで?俺、9時半からシャワールームにいたから…
会ってないけど…」
「ああ。静香の車が駐車場に停まっていたんだ。」
飯田は病室のベッドの脇のタンスの引出しから携帯を取り出して、メールを調べる振りをして、静香に
『加奈さんが来ていた。静香が来ていることを知ってるようだ。
しらをきってくれよ!』
と、メールをした。
静香はとっさにさっきの足音は、もしかしたら加奈さん?
どうしよう。しらをきるって…
白石からメールが入っていたのも、確認した。
『今日はチーフの手術の日だ。チーフから聞いているよね?
午前中、お見舞いに行かないか?』
静香は考えた。
『マナーモードにしていたからメール気が付かなくてごめんなさい。加奈さんはまだ寝てると思って後でメールするつもりだったの。』
『9時半過ぎに病院に来たらチーフが居なくて、看護師さんがシャワー室に行ったと教えてくれたから売店でコーヒー買ってロビーにいたの。今、何処にいるの?』
直ぐに白石から返信があった。
『チーフの病室に来ているよ』
静香は直ぐに
『そうなんだ!以心伝心だね。今、そっちに行くね!』
静香はメールでしらをきった。
メールなら顔が見えないから、嘘はバレない。
これで、白石と病室で会ってもこれ以上追及されることはないはずだ。
静香はそう思ってメールで事を済ませた。
『談話室にいるよ』
白石から、メールが来た。
静香は談話室に向かった。
「加奈さん。チーフ。おはよう♪」
静香はしらをきり通す事にした。
「あ。静香。おはよう。チーフの手術は午後の1時半からのようだよ。」
「え?そうなんだ。チーフ。手術の成功を祈ってますね。」
「ああ。ありがとう。今、加奈さんにも励ましてもらったよ。
夢見が悪かった事を話したら、そりゃそうだと言われた(笑)」
「え?何の話?」
静香は白石の隣に腰をかけた。
「いやさ。今、本当に指が動かないんでしょ?
夢見て、動かしてもそりゃ動くわけないよな?
まだ、手術してないんだからさ。
夢見が悪かったじゃなく、本当の事だからじゃないか?って話しただけだよ(笑)
大丈夫!手術すれば元に戻ると太鼓判押してあげたんだよ♪
だって、この病院の神経を繋ぐ手術の先生は全国でも指折り数えるほど名医なんだって、ラウンジのお客から聞いたんだ。
そのお客もここで神経を繋ぐ手術をして、治したらしいんだ。
それで先生の名前を聞いておいたんだ。
そしたら、同じ先生だったから、絶対成功するから安心して手術に挑んでくれって話をしたんだ!」
「そうなのね。良かったわね。
加奈さんのお客さんの話だから、生の話を聞けて良かった♪」
「ああ。本当に良かった。
加奈さん。ありがとう♪
不安が無くなったよ。名医だったんだ。
手術は成功する!って確信したからあとは、リハビリ頑張るよ!」
「そうそう。そのいきだよ。
いつものチーフに早く戻ってくれよな!」
「おう!ありがとう♪」
静香と白石は飯田に笑顔を向けて病院を後にした。
「ねえ?加奈さん。お昼何処かで食べていかない?」
静香は白石にそう言ったが
「悪い。今から用事があるんだ。」
「え?そうなんだ。それじゃまたね。」
そういって2人は駐車場で別れた。
なんとなくだが、今日の白石は静香の顔を見ないようにしているような気がしてならなかった。
シャワー室での事かな?
私達を疑っているのかな?
何も聞けない静香は、ちょっと後味が悪い気持ちでいっぱいになった。
『でも、加奈さんの性格だ。疑っているなら今、ハッキリと聞き出すはずだわ。
きっと、本当に用事があったのよね?』
静香はそう思い直して、帰宅した。
夜、静香が床に入った時に飯田からメールが入った。
『手術は成功したと先生が言ってくれた。良かった。明日からリハビリ頑張るよ!』
『おめでとう。リハビリは看護師さんの言うことを聞いてね。
また、連絡くださいね。おやすみ♪』
『おやすみ♪愛してるよ。』
そのメールを目にして、静香の気持ちは安堵した。
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