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473. あの世の話
旦那が憲一と義母に
「今日のお昼は静香の誕生祝いにレストランに行こうと思うんだけど、お義母さんも一緒に行きましょう。」
「あら?いいの?何処に?」
「静香はうなぎには目がないだろうけど…静香はうなぎの他には何が食べたい?」
「え?いいの?よっちゃん。
それじゃ甘えて、何でも好きなもの食べられるくるくる寿司で!」
「そうね。それなら私はお寿司と茶碗蒸しが食べたいわ。」
「僕は厚焼き卵とデザートはプリンがいいな。」
「よし!決まりだ。それじゃ、隣の町まで行こうか。」
今日だけは旦那のプレゼントの時計をしようと思った静香だった。
くるくる寿司で憲一が
「お父さん。コーヒーカップ毎日使ってね。」
と、コーヒーカップを褒めて欲しくて旦那に問う。
「うん。でも、割れたら大変だからテーブルの真ん中に置いて竹トンボでも飾っておくよ。」
「え?そうか。割れたら家族がバラバラなっちゃうか~。
それなら、鉛筆立ての方が良かったかな~。」
「そうかもな。憲一?
あのカップ結構重いぞ。飲むには適してないかもしれなかったな。
でも、毎日見てるだけでお父さんの心は和むよ。
ありがとな。憲一。」
旦那は憲一の頭を撫でた。
「うん。僕も机の上に置いて勉強頑張るよ!」
コーヒーカップがペン立てになる瞬間だった。
(…今も残ってるコーヒーカップ型のペン立ては健在だけどね。)
静香は毎日憲一が飲んだコーヒーカップを洗う事がなくなって、憲一の机の上になり、見なくてほっとしたのだった。
ここはイオンモールだ。
夕飯はくるくる寿司の隣の揚げ物屋でフライを買って、母親にはくるくる寿司のお土産にネギトロ丼を1つ購入して帰って行った。
「静香。お誕生日のケーキを買ってあげるわ。」
「え?いいの?お母さんにケーキなんて買ってもらえるの結婚してから初めてね。」
「お母さん!みよばあと一緒に暮らすと良いことたくさんあるね♪」
3日遅れの誕生祝いに、静香はちょっと嬉しかったが、幸せの欲張りのような気がして家族の思いやりに気が重かった。
夜、夕食を食べ終わると憲一と旦那はお風呂に入った。
皆がお風呂が終わると、憲一がまた、例の人生ゲームを持ち出した。
「みよばあは初めてだもんね♪」
「そうね。ちょうど4人でいいかもね。」
「ケーキ食べながらやろうかな。」
静香は母親が買ってくれた、カットケーキ。好みがあるから好きなものを1つずつ選んだ。
4つでは縁起が悪いと憲一に1つ多く買ってくれた。
そこは主役の私でしょ?
と、思ったがまた、母親に子供と一緒!って言われるので我慢した。
とりあえず、仏壇にケーキを供えた。
「憲一のケーキあげるね。お父さん。」
「うん。明日食べるから、今日はそこに飾るだけだよ!
おじいちゃんは見てるだけね!」
「全く!おじいちゃんが可愛そうでしょ?
言い方ってあるでしょ?」
「いいのよ。死んだ人間は食べられないから、微笑んでるだけよ。」
母親が仏壇の前に座って、手を合わせた。
憲一もみよばあの隣に座った。
「憲一?おばあちゃんの誕生日におじいちゃんは亡くなったの。
だから、おばあちゃんが亡くなるときは誰かの誕生日にしようかな。
そしたら、おばあちゃんのこと忘れないでしょ?」
「みよばあ?変なこと言っちゃ駄目だよ!
みよばあは僕が調理師になって、お店を建てて一番先にみよばあとよしばあをお招きするんだから!」
「そうね。そうだったわね。でもね。憲一?いつかは、人間はあの世に行くときが必ず訪れるの。
だからね。悲しまないでね。
ちゃんとあの世で憲一達を見守ってるから!」
「悟空のように?」
「え?ドラゴンボールの話?」
「うん。悟空はドラゴンボールが叶えてくれて生き返ったりしてるけど…
あれは、漫画の話だから…人間は1度死んだらあの世から戻って来られないんでしょ?
でも、悟空は地球でなにが起きてるのかわかるから、みよばあもあの世で僕達を見ていてくれてるって事なの?」
「そうね。死んだことないから本当にあの世から見られるのかわからないけど、そう信じてあの世に行くつもりよ。」
「もう!お母さん!あの世あの世って!
遠い未来の話でしょ!
ほら!憲一も人生ゲームするんでしょ?
ケーキも食べようよ?」
静香は母親に少しでも長く生きて欲しくて、2人のナーバスな会話を絶ちきった。
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