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475. 単刀直入の白石の言葉
お昼はディーラーの近くの『すぎのや』ファミリーレストランに入った。
「憲一?お父さんは4時には家を出るけど、まだ12時前だから、何処かに行こうか?」
「え?ホント?ご飯食べても3時間あるよね♪僕、映画見たい!」
「映画?」
「うん!もののけ姫!エヴァンゲリオンもイイな♪」
「今日は一つな。お母さんもいるし、『もののけ姫』にしようか?」
「うん!嬉しい~。見たかったの♪」
それから、又隣街の映画館まで向かって、映画を観て、家に帰ると憲一と静香を降ろすと旦那は社宅に戻って行った。
「ただいま〰️。」
憲一が元気良く、玄関を開けた。
「あら?よっちゃんは?上がらないで社宅に戻ったの?」
「うん。夕方になると混むからだって。
今日ね。午前中は車屋さんに行ってラジコンカー貰ったんだ♪
それから、すぎのやに行って、もののけ姫の映画を観に行ったんだ。
楽しかったよ〰️。みよばあも行けば良かったね♪」
「そうね。でも、1日外に出ていると疲れちゃうから…
おばあちゃんはテレビ観ているのがいいわあ。」
「そうだね。半年したら、もののけ姫の映画もテレビで放映されるもんね。」
「そうよね。おばあちゃんはテレビで観るからいいわあ。(笑)」
静香がお茶を入れると、テーブルに置いた。
「お母さん。お茶しない?お団子買ってきたのよ。」
「あら。ありがとう。」
憲一はラジコンカーで夢中だった。
「ねえ?静香?新車なのに交差点で事故りそうになって、ディーラーに行ったんでしょ?よっちゃんから聞いたわ。」
「え?よっちゃんから?そう。うん。色々社長さんにサービスして貰ったわ。」
「もしかして、静香は驚いて…前の事故の記憶が甦って…精神的のダメージで…流産しちゃったのね?」
「え?それもよっちゃんから聞いたの?」
「違うわ。先月よっちゃんと静香の会話がお風呂場から聞こえてしまったの…
あの時白髪染めしてたから…
それに、私が癌になって…入院して…静香に凄く心配もかけたから…
きっと色んな意味で静香の体に負担がのしかかったのね。」
「お母さん?お母さんのせいじゃないからね!
私が厄年真っ最中だからだからね!」
「静香…」
大声を出した静香の声に憲一はビックリして振り向いた。
「お母さん!みよばあを怒らないでよ!
病人なのに!そんな大きな声を出して!」
「憲一?違うのよ。おばあちゃんが悪いの。
静香がおばあちゃんを思って、病気に負けるな!って言ってくれたのよ。
叱咤激励よ。」
「シッタゲキレイ?」
「そう。」
「そのうち、憲一も学校で習うわ。
大声で励まして、おばあちゃんを奮い立たせることよ。」
「ふぅん。そんな言葉があるんだ。」
「お母さんは元気になって、憲一を見ていてくれるだけでいいんだからね。
そうやって、四字熟語やことわざを憲一に教えてくれるだけでも憲一には、ためになるんだからね!
ずっとずっと長生きしてくれないと私が困るわ。」
そう言うと、静香は目頭が熱くなった。
「そうだよ!よしばあがお料理とか、ことわざとか教えて貰えるから、僕はお友達に頼られる人間になったんだ!
お母さんだけでは、今の僕は居ないよ!
みよばあとよしばあは僕の先生なんだ。
長生きしてくれないと駄目だよ?」
「憲一…ありがとう…。うん。おばあちゃん、長生きするわ。」
母親は憲一の頭を撫でていた。
まさか、母親に聞かれているとは思いもしなかった静香は、今度旦那と母親に聞かれては不味い話は、自分達の寝室か車の中で話すしか無いと心に決めた。
そして、白石と約束の火曜日になった。
あまり、白石に会いに行きたくない静香だったが、母親とお昼を食べると白石の所に遊びに行くと言って、出掛けていった。
午後1時半には白石の借家に着いた。
ホテルの後ろのドアをノックすると、車の音が解ったのだろう。
すぐにドアが開いた。
「ここに来てくれるのひさしぶりだな。
この間は外だったからな。
今日は来てくれてありがとう。」
「うん。色々あったから、本当に久しぶりだね。」
「ああ。どうぞ。」
ボイラー室の奥の扉を開けると、そこが白石の借家だ。
コーヒーの挽いたいい匂いが部屋中に漂った。
「コーヒー入れるね♪ケーキもあるんだ。」
「え?ケーキ?加奈さんが甘いものを買ってくるなんて珍しいわね。」
「ハハハ。そうだな。これは静香の為に買ったんだ。
この間、チーフのお見舞いのお返しで静香もここに来てくれただろ?
静香が帰ったあとカレンダーを良く見たら誕生日だったんだな?
ごめんな。忘れてて。だから、ケーキを買ってきたから食べてくれ。」
「え?ありがとう。うれしい。チーズケーキは大好きなの。」
「ん。好きって言ってたもんな。
静香!遅れた誕生日おめでとう!」
「ありがとう。」
でも、誕生会したくて呼んだ訳ではないよね?
私が帰った後、カレンダー見て気が付いたんだもんね?
この後が怖いなあ……
静香はなるべくゆっくりとケーキを食べた。
コーヒーを飲み終わる頃、白石が冷蔵庫から冷たいお茶を出そうと台所に立った。
後ろ姿で白石が
「私は回りくどい話は嫌いだ。
単刀直入に聞くよ?
静香とチーフは出来ているのか?」
あまりにも単刀直入の白石の言葉だった。
覚悟はしてはいたが、心臓が飛び出るほどビックリして、静香は言葉が詰まって出なかった。
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