479. 静香の初出勤

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479. 静香の初出勤

今日は静香の初出勤だ。 いつもより早く起きてしまい、洗濯物も朝食までには終わっていた。 「あら。静香、今日は早かったのね。洗濯物も干してしまったの? 朝ごはんも出来ていて…お母さんやることなくなっちゃたわね。」 「うん。なんかね。緊張して眠りが浅かったのかな? 多分、明日は疲れきって起きられないかも知れないから…お母さん?起こしてね?」 「お母さんは張り切った次の日は必ずお寝坊するよね? 明日は僕が起こしてあげるよ♪ お尻ペンペンしてあげるね♪」 「い!いいわよ!憲一には起こしてもらわないわ! 一人で起きられるわ!今のは冗談よ!」 「全くあなた達親子って…お友達みたいね(笑)」 ああ。また母親らしくしないと!って怒られるのね… 「羨ましい親子関係ね。」 「え?」 静香は後に続く言葉が意外だったので、びっくりした。 「よしさんに言われたわ。 テレビの調査で『親子の関係は今』のアンケートで 『親とはお友達』『お父さんとはゲーム仲間』『母と娘でペアルックで買い物』 で昔と全く違うから、昔の理想の親子関係は今の家族には通用しないし、時代錯誤なんだね。って… 私の考えは古かったのね。」 「お母さん?お母さんの考えは古くは無いわよ。 アニメのサザエさんのお父さんって凄く人気があるのよ?」 「え?息子のかつおに良く説教している波平お父さんが?」 「そうよ。『バッカも〰️ん!』って怒ってくれる父親によ! 今のお父さん達は子供に甘い父親が多いから、お父さんに怒られたことが無いんですって。 だから、親に怒ってもらいたいみたいよ。 波平お父さんが子供の憧れみたいなのよ。」 「そうなの?憲一も波平お父さんに憧れているの?」 憲一がランドセルを背負いながら 「僕んちには波平お父さんの娘がいるから、もう要らないよ!」 「え?それって私がサザエさんってことなの?もう!憲一!」 「ほうら!サザエさんが出た〰️♪ 僕んちはお舟さんに似たみよばあもいるから、サザエさん一家だよね。」 「そうね。憲一はかつおそのものね!」 「もう!いいよ!じゃあね。行ってきま〰️す!お母さんは初出勤なんだからヘマしないでね~。」 「もう!一言多い!」 朝、そんな賑やかな会話をした後、静香も支度をして玄関を出た。 サザエのお舟さんがみよばあ… 母親はずっと笑いながら、静香を見送った。 お母さんがあんなに笑った顔は退院後、初めて見たかも知れないと、静香はなんだか温かい気持ちになったのだった。 そして、早目に出た静香は早く会社に着いた。 3階建ての○○生命保険の自社ビルの玄関を開けた。 「おはようございます。今日からこちらにお世話になります岡野 静香と申します!」 静香は、元気に挨拶をした。 「おはようございます。所長の佐藤です。こちらが、一緒に仕事をしていく事務の川井です。」 「川井です。岡野さん。よろしくね。」 静香は深々とお辞儀をした。 「さて、岡野さん。今日は午後から東京で研修ですね。 この間も言いましたが、テキストも用意しましたので、9時からの朝礼で岡野さんを営業の皆に紹介しますね。朝礼が終わったらすぐに東京の本社に向かって下さいね。」 『え?本社で研修なの?聞いてなかったよ?それとも、面接合格して有頂天になって、その先の話を聞き飛ばしちゃったのかな?』 「岡野さん。私の隣の椅子に座ってくれる?」 「あ。、は、はい。」 静香は全てが初めての事で、緊張しまくっていた。 「これが、来週から使う岡野さん専用のパソコンよ。 1ヶ月前に前の事務員が急に辞めてしまって… 岡野さんみたいな明るい人が入ってきて良かったわ。」 『え?急に辞めてしまってって?』 「あの。前の事務の方は何年お勤めしたんですか?」 「そうね。半年位かしら?」 『え?半年?もしかして、川井さんって厳しい人なのかしら? 普通、半年で辞めないよね?』 「私と合わなかったんじゃないのかしらね! 私は厳しいから、頑張ってついてきてね。 岡野さんは根性ありそうだから、所長に推薦したのよ♪」 『え?推薦?川井さんって…所長より偉いの? うわ〰️。厳しいから前の人辞めたんだ〰️。勤まるかしら?』 そんなことを思っているうちに、営業マンがどんどんフロアに入ってきた。 「おはようございます!」 「おはよう。」 「あ!新しい事務員さんですか?」 「そうそう。朝礼で紹介するよ。」 『うわ〰️。ぞろぞろ集まった〰️。 20人はいるのかな? おばさんが多いよね。9割女性かな? 緊張〰️。挨拶って…名前だけ言えばいいよね?』 静香は緊張マックスだった。
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