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484. 夏目との会話
お茶に誘われた静香は、とりあえず母親には、研修が午後から東京の本社で帰りは遅くなると電話をした。
2人は本社を後にすると、夏目が良く行く喫茶店に歩いて行った。
駅の近くの昔からあるような、モダンな喫茶店だった。
「ここはね。パンケーキが美味しいのよ♪」
夏目がウエイトレスにコーヒーとパンケーキのセットを2つ頼んだ。
「岡野さんは結婚してるの?」
「ええ。今は母親と息子の3人で実家に住んでいるの。」
「あら、私と同じで離婚したの?」
「え?あ。離婚はしてないわ。旦那は千葉に単身赴任中なの。」
「そうなんだ。それじゃ、旦那さんは千葉で羽根を伸ばしているかもね。
岡野さんも旦那が居なくて、せいせいするわね♪」
静香は夏目は誘導尋問の上手い人だと思った。
『余りペラペラしゃべらない方がいいわね。私の事だから、直ぐに口車に乗せられてしまうとろくな事がないわ。』
静香は話を聞く方に回った。
「それじゃ、夏目さんは結婚したことがあるって事かしら?
私よりずっと若いでしょ?」
「私は今年27歳よ。岡野さんは?」
「私は32歳。5歳若いのね?結婚は早かったの?」
「ええ。そうね。大学卒業してから2年目だから、24歳の時かしら。
でも、旦那とは性格の不一致で去年離婚しちゃったの。
子供が出来なかったことが、原因かも知れないけどね。
私は子供が出来ない体だから…もう、2度と結婚なんてしないわ!」
そう言うと、夏目は喫茶店の窓の外を眺めていた。
「ごめんなさいね。辛い事聞いちゃったわね。
私も2ヶ月前に流産しちゃって…それはそれで辛い思いはしたわ…」
「そうなの。旦那さんとは単身赴任だけど、仲がいいのね。」
「え?あ。離れているから、たまにしか会わないから新鮮なのかもね。」
「私はいつも新鮮な気持ちじゃないと一緒に居られないの。
妥協した結婚は良くないわよね。
やっぱり、燃え上がった恋で結ばれないと離婚は避けられないかもね。
岡野さんは旦那さんと燃え上がった恋での結婚だったのね♪」
「え?あ。私達は幼馴染みなの。小学校と中学校は一緒なの。
でも、その時はお互い顔は知ってる程度よ。」
「へえ。恋愛に変わったのはいつ?高校?」
「社会人になってからよ。まあ、むこうは教習所でばったり再会して、教習所を卒業する時に免許証が来たら車を買うから見せに行くねって言うのが始まりだって言うんだけどね。
私はそんな約束なんてすっかり忘れていたの。」
「ふ~ん。それじゃ、旦那さんが岡野さんに惚れ込んだって訳ね♪」
「え?あぁ。そうなのかな?でも、同級生って小さい頃から何かと知ってるから、燃えるような恋ではなかったわ。
もう、空気みたいなものよ。」
燃えるような恋は尚ちゃんとだから…この先は話を変えないとね。
ドキっとする事夏目さんは言うから。
顔に出ないように気を付けないと!
「ねえ?夏目さんは柏営業所の新人事務員がなぜ辞めたのか、知ってるの?」
「え?ああ。目黒営業所の事務員と柏の事務員は同級生なんですって。
それで、時々会ってるみたいなのよ。
それでね。岡野さんの前の事務員は40歳過ぎの結構ベテランの事務経験者で、パソコンの使い方も何でも直ぐに覚えて優秀だったみたいだけど、お茶入れとか、来客の扱い方が余り出来ないっていうか、きっと前の会社ではキャリアウーマンだったろうから、後輩にさせていたんだろうと言うのよ。
それでね。柏の事務員が普通は新人がお茶汲みするのに、
『私はお茶汲みに来たわけではありません』
ってお高くぶっていたみたいなの。
先輩が口も聞きたくなくなったら、むこうも無断欠勤したみたいなのよ。
それでね。所長に怒られたら
『わかりました。退職します』
と言って辞めたらしいの。」
「え?そうなんだ。川井さんが厳しくて辞めたんじゃなかったんだ。」
「そうね。事務員同士の性格の不一致って言うことかしらね?
まあ、その新人は頭はよかったけど、コミュニケーション能力が低かったって事ね。」
「夏目さんは前は何処にいたの?」
「私はメルセデスベンツの事務をやってたの。
でも、結婚してからは2年間は専業主婦よ。」
「わあ。凄いわ。それじゃ、お客様との接待もバッチリね。」
「岡野さんの方が私は凄いと思ったわ。
女社長だったんでしょ?ビックリしたわ!」
「凄くないわよ。競合店に負けてお店潰しちゃたんだもの…」
「私はそこだと思わないわ。経験は財産だもの。
誰でも出来る事じゃないわ。
尊敬に値するわ!これからもよろしくね♪」
2人で美味しいパンケーキを食べ終わると、
「じゃあ。又明日ね♪」
そう言うと、右と左に別れて帰って言った。
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