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488. 加藤の洞察力
今日は金曜日。やっと本社の研修が終わる日だ。
「じゃあ。お母さん。行ってきます!」
「みよばあ?今夜はお寿司の練習だよ♪
具を買うの忘れないでね♪」
「はいはい。わかりましたよ。静香も今日は早いんでしょ?」
「うん。テスト終わったら帰れるから。
頑張って早く帰ってくるね♪」
「お母さんは頑張って早く帰って来なくていいよ?」
「え?何で?」
「僕とみよばあでお母さんのお寿司の分は作るから!
それにさ。テスト早く終わらせようとすると、お母さんはおっちょこちょいだから、答案用紙の番号ずれてて不合格なんて事になるからさ(笑)」
「もう!憲一ったらひど〰️い!!」
「じゃあね。行ってきま~す。」
憲一の方が玄関を出て行くのが早かった。
「静香も気を付けてね?」
「うん。行ってきます!」
いつもの時間の特急に乗り、加藤が座っている隣に座った。
「今日はテストね。上野まで、お互いテキストを読んで行きましょう!」
加藤も家でテキストを読めないから真剣だ。
聞いたら、2歳と4歳のお子さんがいるようだ。
母親に相談して、近くに住んでいるから平日昼間だけは、毎日母親に来てもらって見て貰っていると言う。
何処の家も、母親には頭が上がらないよね。
でも、一緒に住むわけにはいかないと言う。
母親だけならいいが、父親も退職後、嘱託職員で働いているから娘は嫁に行ったのだから、長男の旦那に申し訳無いと言う。
私の所は旦那が次男だから良かったのかな?
それに旦那は単身赴任だし、いつも一緒じゃないから良かったのかも知れない。
静香は一昨日の切り抜き新聞の事を思い出していた。
『事務員が不安で辞めて行くのに、教育主幹は会社の人間なのかな?
信じ切っているのかな?
誰よりも先に知っていたんじゃないかしら?
不安は無いのかな?結構、私達にはビシバシ言っているよね?
まあ、駄目だと思うと駄目になるの知っているからだよね?
それか、もう合併とか大手の外資系と手を組むとか、上層部が手を打っているのかも知れないな。
そんな情報を主任は知っているから、落ち着いて私達を教育出来るのよね?
きっと、そうだわ。
とにかく、テストを合格しないとね!』
静香もテキストを読み始めた。
15分前にいつもの会議室に着くと、夏目がいつになく真剣にテキストを読んで座っていた。
「おはよう。夏目さんが真剣にテキストを読んでいるの初めて見たわ♪」
静香が振り向いて夏目に話しかけると
「ごめん。話しかけないで!
昨日テキスト読んで無いのよ〰️。」
え?いつもテキストなんて目を通してないわ!
なんて言ってるのに、やっぱり試験となると違うわね(笑)
肩をとんとんと叩かれた静香は、加藤に振り向いた。
『夏目さんはいつもちゃんとテキストに目を通しているわ。
じゃなきゃ、毎回満点取れるわけ無いでしょ?
でも、昨日はきっと、夜遊んでしまって本当にテキスト読んで無いのよ。』
と、耳打ちした。
そっか。私はすぐに人の話を鵜呑みにするから騙されるのよね。
頭脳明晰の人間ほど、勉強しているんだわね。
今日は午前中は最後の第4章を終わらせて、午後から総合テストがあり、終わり次第解散なのだ。
遠い新潟県、長野県の人もいるから遅くても、夕方7時までには帰宅出来るような時間の設定だった。
午後3時。
「やっと終った~!」
本社から出た3人は隣のレストランに入って、パフェを食べることにしていた。
「4日間頑張った自分へのご褒美よね~♪
もう、試験なんてどうにでもなれよね!」
静香は大きな口を開けて、チョコパフェを口に運んだ。
「うん。70点は取れてると思うわ♪」
加藤も山勘が当たって笑顔でパフェを食べた。
夏目は、第4章だけは自信が無かったが、後は出来たから合格はしていると確信していた。
「今度会う時は1年後みたいね。
せっかく親しくなったんだから、アドレス交換しましょう?」
3人はメルアドを交換して、夏目と別れた。
特急に乗った時に、加藤が
「ねえ?夏目さんの首の所見た?」
「え?首?」
「私の感だけど、昨夜は彼氏とラブホに行ったから、勉強出来なかったのよね?
うっすらと左耳の下の所よ?
あれ、キスマークよね?」
「え?キ、キスマーク?」
「まあ、独身なんだもの。
別に彼氏の一人や二人居たって不思議ではないわ。
美人だし、魅力的だし、男が放っておかないわよ!」
「加藤さんの洞察力って凄いわね!尊敬するわ。私は全く気が付かなかったわ。」
そっか。夏目さんは子供が産めない体って言ってたけど、結婚しなくても彼氏は欲しいわよね?
「案外、彼氏って妻子持ちだったりしてね。そんな気がするのよね!」
ドキっとする事、加藤さんは言うのよね〰️。気をつけよう~!
そんな事を思いながら、やっと土浦に着いた。
来週の月曜日は各々の営業所で試験結果を報告される。
「教育主幹の70点以下の人は辞めてもらうって言ってたけど、あれは脅しだから!
契約違反だから、こっちが訴えられるわよ!
安心して月曜日から仕事しましょ!」
加藤は何もかもお見通しで、静香は加藤に脱帽しまくりだ。
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