493. 憲一のお盆の計画倒れ

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493. 憲一のお盆の計画倒れ

夕食も食べ終わって、母親がお風呂に入った。 「お母さんはみよばあがお風呂に出たら入っていいからね。 僕はお父さんと入るから!」 カルピスを飲みながら、憲一が言った。 「そう?それじゃお母さん。ひとりで入るね。 憲一は言ったら聞かないものね!」 「うん!僕のそういうところ、お母さんにそっくりなんだって! みよばあが言ってた。」 「え?みよばあが?」 タオルで髪の毛を拭き取りながら、母親がお風呂から出てきた。 「言い出したら聞かないのは、ホント静香にそっくりよ(笑) まあ、静香はお父さんに似てるから、仕方ないわね(笑)」 「う。納得…」 憲一が急に玄関に駆け寄った。 「お父さんの車のエンジンの音だ〰!」 静香と母親には全く聞こえなかった。 台所の窓から車のライトが光り、家の庭に車が駐車した。 憲一は待ち切れなくて玄関を飛び出した。 「お父さんが帰ってきたよー!」 憲一が荷物を運ぶのを手伝った形になった。 旦那と憲一の声が聞こえてきた。 「ただいま〜。お義母さんは変わりない?」 旦那が、玄関のドアを閉めて上がって母親の顔を眺めた。 「お帰りなさい。私は大丈夫よ。 よっちゃんは疲れたでしょ? お風呂に入ったら?」 「はい。あ。静香は?」 「私は最後でいいわ。憲一がお父さんと入りたくて、首を長〰くして待っていたから、一緒に入ってあげて!」 「お父さん。お父さん。一緒に入ろう♪」 「わかったよ。洗濯物を入れてからな。」 憲一は旦那の手を引っ張って脱衣所に向かった。 結構二人は長く入っていた。 二人がお風呂から出た頃は、母親は自分の部屋に戻って、床に就いた。 「いや〜。のぼせる寸前だったよー。 憲一の話が止めどなくて…」 「だって、お父さんとお盆休みの話を今日中に煮詰めないと、勿体無いでしょ!」 「だけどさ。今年はおばあちゃんが居るし、去年みたいにスケジュール満タンって言うわけにはいかないよ?」 「ちょっと?憲一?何をお父さんと話したの?お母さんにも聞かせて?」 静香が憲一に問う。 「僕のお盆のスケジュールは、まずは二人のおじいちゃんの墓参りするの。 それから、皆でお寿司を作って食べるの。 今回は手巻き寿司ね♪ 次の日はよしばあの所に泊まって、お父さんと釣りをするの♪ そして、次の日は出来ればディズニーランドに行きたいの♪ 本当はキャンプに行きたかったんだけどね。」 それを聞いた静香は 「ちょっと、憲一?あなたお家の周りを見てみなさいよ?」 「え?なにを?」 「草よ!草がボウボウに茂っているでしょ?それも今までいたお家なんて、凄いことになってるのよ? 明日はとにかく、お父さんは今まで暮らしてた家の草刈りをしてもらうわ。 お母さんはここの家の草刈りをするわ。 憲一も手伝うのよ?」 「え〰!草刈り〰?僕も〰?」 「そうだな。憲一?明日は早く起きて向こうの我が家の草刈りをしよう。 憲一は花壇の草を手で抜いてくれるか? お父さんは草刈り機使うからさ。 お昼は手巻き寿司食べてから、墓掃除して夕方迎え盆に行こう。」 「ん〰。しょうがないなあ。お盆だから仕方ないかー!それじゃ、よしばあの所に泊まって釣りは?」 「そうだな。今年は憲一と二人で泊まりに行こう。 それで、今度はよしばあの草刈りもしないといけないんだ。」 「え〰!!次の日も草刈り〰?」 「しょうがないんだよ。土手の所はよしばあでは踏ん張れないからお父さんがやるしか無いんだ。 兄貴が帰って来ればいいんだけどな。 それまではお父さんがやるってよしばあと約束しちゃったからさ。釣りは終わったら、行こうか?」 「え〰。いいよ。朝早く行かないと昼間の暑い時は魚も釣れないよ〰。 草刈りも、朝早くないといけないしなー。 せっかくのお盆休みが2日間も草刈りで終わっちゃうのか〰。」 憲一はちょっと不満だった。 「それじゃ、15日は?1日遊べるよね?」 「うん。ディズニーランドは夕方4時からにしないか? 昼間は暑いしさ。朝早く行くのはお父さんは2日間草刈りで疲れて起きられないよー。 その代わり3人で向こうのディズニーランド近くのホテルに泊まろうか?」 「え〰。いいの?ホテルに泊まれるの?」 静香も旦那の案にビックリした。 「ディズニーランド近くのホテルなんて高くて大丈夫なの?」 「う…ん。今年の夏のボーナスは10万円余計に出たんだ。 係長になったからさ。だから、ディズニーランドの中のホテルじゃなくて、2キロ離れた舞浜のホテルだよ。 とりあえず、予約だけはしておいたんだ。 静香?いいかな?」 「いいも何も予約してくれたんだもの。 行くに決まってるわよ! 夕方からなら、暑くないしお客の足も少なくなるからいいんじゃない? 嬉しい〰♫」 憲一と二人ではしゃいだ。 「うるさくて眠れないわよ…」 静香と憲一のはしゃぐ声で、母親が起きてきたのだ。 「みよばあ!お盆の最後の日お父さんがディズニーランドの近くのホテルを予約してくれたの〰♪」 憲一がリビングルームの周りをスキップして言った。 「お母さん。夜一人だけど…いい?」 「ディズニーランド?あんな酔ってしまう乗り物に又遊びに行くの? 私は一人で留守番するわ。 その方がよっぽどのんびりしていいわ〜。」 「じゃあ決まりだね♪それじゃ、明日と明後日は草刈り頑張るよ! みよばあはゆっくりしていてね。 僕、お利口さんになって頑張るからね♪」 1つとびきりいいことがあれば、子供はそれを楽しみに待っていられる事を知った静香達だった。
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