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495. お盆の三ヶ日
朝5時過ぎだった。
台所からの物音で静香が目を覚ました。
「あれ?お母さんが台所にいるの?」
襖を開けると、母親が台所のテーブルの上でおにぎりを作っていた。
「お母さん?おにぎりを作ってくれたの?」
「みんなで草刈りしてくれるんでしょ?
私が出来る事をしてるだけよ。」
その声に旦那も起き出した。
「おはようございます。お義母さん。
朝早くおにぎりを作ってくれてありがとうございます。」
ポリポリと頭を掻きながら、母親に挨拶をした。
「よっちゃんはいつも草刈り行くの早いって静香から聞いたから、よっちゃんが起きる前に起きられて良かったわ。」
母親はお皿に2つずつ、梅干しと鮭のおにぎりを置いた。
「梅干しは体にいいから。よしさんもよっちゃんに作っていたって聞いたから。」
「はい。梅干しのおにぎりは朝食べるもんだと、お袋から言われてました(笑)」
「そうそう。お義母さんが梅干しは糖値上昇抑制効果があるんですって!」
静香が補足して話をした。
そんな会話をしていたら、憲一の部屋から目覚まし時計のベルの音がやかましくなっていた。
「あ。憲一が起きられないから、目覚まし時計をかけてくれって言われたんだ。
あんなに鳴ってるってことは、まだ寝てるんだな?」
旦那が憲一の部屋に覗いた。
「ハハハ。なんだよ。目覚まし時計を枕の下に追いかぶせて憲一は寝てる。
昨日寝るの遅かったからだな。」
父親の声で、憲一はやっと目が覚めたようだ。
静香は笑って言った。
「ディズニーランドに行くから朝5時起床って言ったら絶対起きてたけどね(笑)」
「憲一は釣りでも起きるわよ。
遊びだと平気なのに、草刈りはやらせられる感がいっぱいでやりたくないから、体が本音を言ってるわ(笑)」
みよばあも憲一の事はお見通しだ。
「おやつ作っておくから、10時にはここに集まってね。」
4人でおにぎりと味噌汁を食べ終わると、今までの自宅に旦那は車で、憲一は自転車で行った。
静香は実家の裏庭の草刈りを始めた。
母親は洗濯を終えると、プリンと蒸しパンを作り出した。
それから、3時間過ぎて、
「お父さん?花壇の草刈りと玄関の草刈り終わったよ!
みよばあが作ったおやつを持ってきて食べよう?」
「え?今何時?」
「まだ9時だけど、喉渇いたし、お腹が空いちゃった〰!
それに今食べないと手巻き寿司が食べられないよ〜?」
「わかったわかった。それじゃ、憲一が自転車でもらってきてくれるか?」
「うん!!」
憲一は喜んで、自転車でみよばあの所に向かった。
「みよばあ〜。プリン固まったかな〜?」
玄関のドアを開けて、靴を抜かずにみよばあに声をかけた。
返事がなかった。
憲一は喉も渇いていたので、急いで台所に行って冷蔵庫から冷えている麦茶を取り出した。
「おっ♪プリンカップが8個もある〰。
2個ずつ食べられる〰♫冷えてる冷えてる♪」
憲一はプリンカップを触りながら、麦茶を一気に飲んだ。
「それにしても、みよばあ?何処に行ったの?お買い物?
いや、みよばあの車はあるよね。お母さんは?
草刈り機の音がするからみよばあも外かな?」
憲一は縁側の廊下の方を回った。
そこに、みよばあが倒れていた。
「え?みよばあ?みよばあ!どうしたの?
みよばあ〰!!!」
憲一はすぐに縁側から飛び出して、静香に向かって言った。
「お母さん!!お母さん!!聞こえないの〰!!
みよばあがみよばあが〰。死んじゃう〰!!」
憲一の声は聞こえたが、何を言ってるか草刈り機の音でわからなかった。
だか、顔色変えて怒鳴っている事はわかった。
静香は草刈り機のエンジンを停めた。
「どうしたの?何かあったの?」
静香の返事に憲一が思わず
「みよばあが死んじゃった〰!!」
と、叫んだ。
「ええ〰!!」
静香は急いで、廊下に駆け寄った。
そこには母親がうずくまって倒れていた。
「お母さん!お母さん!何処か痛いの?」
全く返事をしてくれない。
「どうしよう。お母さん〰。救急車!救急車〰!!」
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