503. やっとこの日が来た

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503. やっとこの日が来た

今日は木曜日。 少しずつ仕事も覚えて、要領がわかってきた静香だった。 保険料を入金するために銀行窓口で座っていると、飯田から電話が鳴った。 「明日の件だけど、やっぱり昼間のクラス会は一旦出たほうがいいよ。 旦那と共通の友人がいるのだから、欠席したことがバレるのは時間の問題だ。 今からでは出席出来ないのか?」 心配して、飯田から電話がかかってきたのだった。 「心配しないで。バレる前に旦那に出席しなかったことを言うわ。」 「え?」 「東京の友達が出席するって言うから出ようと思ったんだけど、急に子供が熱を出したから欠席するって連絡あったから、私も欠席して友達の所に泊まりに行っちゃったって言うわ。 だから、心配しなくて大丈夫よ。 反対に出席しちゃったら、帰れなくなっちゃうわよ。 昼間って言ったって15時からだし、仕事している人は二次会からっていうのが本番なのよ。 二次会断るって結構ハードル高いわよ。 なんで?とか、行こうよ!なんて手を引っ張られて渋々二次会に付き合わされるわ。 それに、たとえ二次会を欠席できたとしてもいつかは、旦那の耳に入ることになる。 余計面倒臭い話になって、話がひとり歩きするわ。 だから、初めから行かない方がいいのよ。」 「そっか。わかった。それなら、駅前の静香の月極め駐車場に着いたら電話くれよな♪」 「うん。11時ね。」 どこに連れて行ってくれるのかわからないけど、明日は飯田に会えると思うとワクワクドキドキが止まらない静香だった。 「岡野さん。最近、何かいいことあったの?」 「え?」 「有給休暇の次の日から笑顔が絶えないから(笑)」 「そうですね。母親の検査の結果が良かったからかな? とにかく、母親が明るいから自分も明るくしようと思って毎日笑顔でいることにしました(笑)」 本当は飯田と会えるから指折り数えていたのが本音だが、そうも言えないし、母親の話も嘘ではなかったので、そう答えた静香だった。 「そう。それは良かったわね。 そうね。笑顔が一番よね♪」 静香は病院で出逢った元看護師の言葉を噛み締めていたのは、確かだった。 明日は有給休暇を取るつもりで所長に怒られるのを覚悟していたのたが、明日は営業マンの支社研修で一日誰も居ないので、事務員は一人居ればいいことになり、静香が今回は休んでいいことになったのだった。 まあ、静香は新人だし、まだ一人で全てを覚えた訳ではないので、任せられなかった。 特別休暇では無いので、また有給休暇が一日減ることになるのだった。 「明日は岡野さんが休んでいいけど、次回は流石に慣れてくると思うので、次は交代ね。 多分、9月半ば過ぎに今度は進発式で支社研修だから、その時は私が休ませてもらうわね。」 「進発式?」 「ほら。上半期が9月15日で終わるのよ。 だから、下半期は9月16日からなの。 下半期が入ると、進発式が始まりの合図のように何処の支社でもやるわ。 決起大会よね。エイエイオー!ってね(笑) 今年は全員出席できるわね。 成績足らなくて落ちる人はここの営業所には居ないわ。 本当に良かったわ。皆で足並み揃えて下半期もできるんだものね。 私の退職の時に皆居られて、嬉しいわ。」 静香には、あまり実感がわかなかった。 確かに成績足らなくて落ちるってことは、首ってことだから。 その人にとっては一大事だ。 事務員で良かったと改めて安堵した静香だった。 次の日がやってきた。 待望の日だ。静香は隠すことなくオシャレをして、 「お母さん。それじゃね。いってきま~す。」 笑顔で玄関のドアを開けた。 「気をつけてね。飲み過ぎないでね。 明日はゆっくり帰ってきていいから。」 「は〜い。」 母親にはクラス会はお昼からと伝えていた。 車のエンジンをかけると、心は飯田の所に既に行っていた。 弾む心で、駅に向きった。 お盆休みが長かったのもあり、何だかたった2週間会えなかっただけなのに、ずっと会えなかったように思った。 『駐車場に着いたよ』 飯田にメールを入れると、 『そのまま駅に歩いていってくれる? ロータリーの駐車場で待ってるから!』 『わかったわ』 駅に歩いて行くと、すぐに飯田の車が見えた。 「尚ちゃん。久しぶり〜。会いたかった〜」 「俺もだよ!後ろに乗って。 誰が見てるかわからないからさ。」 静香を載せた飯田の車は高速道路に向かっていた。 「尚ちゃん?何処に行くの?サプライズって言うから、聞いてなかったけど…」 「うん。まだナイショ。とにかく、今日は旅館に泊まるから。 温泉に入るよ。楽しみにしていてくれ。」 「え?温泉?素敵〰。楽しみ〰♪」 車は高速道路に入って行った。
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