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504.ランチは隠れ家レストラン
車は高速道路に入り、首都圏中央自動車道に入った。
「え?海から遠ざかって行くけど…もしかして、軽井沢の方に向かっているの?」
「ピンポ~ン。だけど、静香?なんで海からから遠ざかって行くって…?
もしかして、釣り三昧だと思ったのか(笑)」
「ええ。だって尚ちゃんは釣りバカ人間だと思っていたから…」
「ハハハ。釣りバカ人間は良かったな。
まあ、そうだけどな。先週のお盆休みは毎日守と釣りしてたよ(笑)」
「え?守さんのフェリーに乗れたの?」
「ああ。お盆は台風が来たり、風が強かったりでフェリーは出られない事が多いはずなんだが、今年は波が穏やかで釣り三昧をすることができたんだ。
ハワイから帰ってきたみたいだろ?
焼け方が半端ないよな〜。(笑)
だから、静香とは避暑地の軽井沢に行きたかったんだ。
本当は房総半島にも行きたかったけど、海を見ると釣りがしたくなっちゃうだろ?
釣りバカだからさ(笑)」
途中で、サービスエリアに寄り、静香は助手席に座り直した。
「ここで、知ってる人間に会うことは無いだろう。
もう、このまま宿に直行して静香を抱きたい気持ちでいっぱいだよ。
2週間が長かったよ〜。」
飯田は静香の手を握った。
「少し、軽井沢の風景を楽しみながら行きましょ?
夜は長いから今からだと、体が持たないでしょう?(笑)」
「冗談だよ。色んな所に行こうな。腹も空いたし。まずは避暑地のランチと行こうか。」
飯田は車のエンジンをかけると、飯田がぐるなびで調べた避暑地のレストランに向かった。
1時過ぎに軽井沢の避暑地のレストランに着いた。
「ぐるなびで調べたんだ。隠れ家レストラン ステーキ店!
美味しいって有名らしいよ♪」
避暑地だけあって、夏なのに車から降りると涼しい風が頬を触った。
「離れにもバンガローみたいな隠れ家が、あるらしいんだ。
そこは予約でいっぱいで取れなかったんだ。
でも、ステーキが美味しいからいいよな。」
静香は飯田のサプライズの1つが出来なかったことを想像したら、可愛らしく思ってしまって微笑んだ。
「ありがとう。尚ちゃん。尚ちゃんは本当にお肉が好きよね(笑)」
「うん。多分、魚より肉だな(笑)」
それを聞いた静香はクスクスと笑いだした。
「それじゃ、アングラーよりカウボーイ?」
「ハハハ。魚も好きだけどさ。釣れる瞬間までは最高な気分なんだけど…
ヤッパ、ステーキには敵わないよな!
俺は肉食男子だから!(笑)」
レストランの扉を開けると、受付でもう一度離れの隠れ家が空いていないか聞いていた飯田だった。
どうしても諦めがつかなかったようだ。
「え!本当ですか?待ってますからよろしく!」
静香に向かって手をあげて、丸のポーズをした。
「今、予約の人、食べ終わって帰るところなんだって!
片付けするから、待っててくれってさ。
ラッキーだな。」
飯田は鼻歌交じりに、静香の手を握った。
「個室で二人っきりでステーキランチを食べられるなんて、夢が1つ叶って嬉しいよ。」
定員さんに離れを案内された。
バンガローみたいな建物の中はこじんまりしていて、個室のようだ。
「商談をするためにいらしてくださったみたいで、商談とお食事も終わったので少し早いですがと言って、お会計を済まされたので空いたのです。
ここは、森の中で静かで窓から見る景色が素敵なんです。
ゆっくりと時が流れて行くので、人気の隠れ家なんです。」
案内のウエイトレスがそう教えてくれた。
今日は金曜日。お仕事しながら食事をしている人もいると思うと会社を思い出した。
クラス会も幹事の一人が土、日が仕事だから、金曜日の3時からになったのだった。
リッチに好きな人と旅行に来た静香は少し罪悪感を感じた。
だって、綺麗事言ったって、不倫には違いないから。
「静香?どうした?隠れ家は期待はずれだったか?」
飯田は喜んでくれる顔を見たかったのか、ぼんやりしていた静香の顔を見て言った。
「え?とても落ち着いて素敵な部屋で驚いているのよ。
ほら。去年の5月の連休の時に行ったラブホは木で作ったように見せかけた部屋だったでしょ?
全く雲泥の差ねって。」
静香はそう言って、笑顔を飯田に向けた。
「ランチコースも期待しちゃうわね♪」
「雲泥の差なんて、あったりまえだろ?
あのなんちゃってバンガローラブホの事は忘れてくれ💦
徹マンで寝不足でサウナでぶっ倒れた事なんて思い出さなくていいからな!」
「フフフ。そんなこともあったわね。
鮮明に思い出しちゃた(笑)」
あのときのラブホのように、森の中にポツリポツリ、隠れ家が建っているようだった。
1つ1つが形の違ったバンガローのような建物で森の中に溶け込んでいる。
素敵な空間だった。
「あ。つくばの花室のレストランに似てるね。」
「ああ。そうだな。あそこもステーキが美味しい隠れ家レストランだよな。
あっちは和室だよな。日本庭園みたいな感じの。」
この頃から隠れ家レストランが流行りだした気がした。
「密会には適した場所だな。」
密会か〜。そうなんだよね。
私達はまだ、隠密なんだよね。
「静香?俺は待つからな。絶対、夫婦になるんだからな。」
「尚ちゃん。」
飯田の目は未来を見つめていた。
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