505. ゆっくり宿へ

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505. ゆっくり宿へ

ステーキランチはとにかく美味しかった。 窓から見える森林の木洩れ日が、優しく二人を包む。 「尚ちゃん。ありがとう。いいところを探してくれたわね。 お肉柔らかくて、美味しかった〜。」 「うん。最高だな。でも、静香と食べたから最高なんだよな。」 デザートは濃厚のアイスクリームだった。 「私の大好きなバニラアイスクリームだわ♪」 「静香のアイスクリームの好みは知っていたから、デザートはバニラアイスにしたんだ。 俺はプリンは外せないからな(笑)」 飯田はそう言って、静香の隣に座り直した。 「静香。はい。あ〜ん。」 「え?いいわよ。」 恥ずかしさのあまり、拒んだ静香だった。 「やってみたかったんだ。二人きりなんだからいいだろ?」 飯田の願いを叶えてあげようと、静香は口を開けた。 「あーん。うわ〰。濃厚でまろやかで美味しい〰!」 今度は飯田の口にプリンを運んだ。 「あーん。うわ〰!なんだこの卵の濃い味のとろけるプリン。こんなプリン始めて食べた〰。」 飯田はそう言いながら、静香にも食べさせた。 「うわ〰。ホント!美味しい〰。」 「俺はこのプリンをお土産に買って行く!」 静香はそんな子供みたいにはしゃぐ飯田に微笑んでいた。 「静香?俺をガキだと思っているだろ?」 「え?まあ、そこが尚ちゃんのいいところよね♪」 飯田は静香の肩を抱き寄せると、口づけをした。 キスは甘いバニラエッセンスの、香りがした。 「また、俺の願いが叶ったな♪」 飯田といると、全てが新鮮になる静香だった。 いつものキスにもときめきがあるのだ。 「これから何処に行くの?」 「うん。白糸の滝を観に行こうと思うよ。 その後、旅館に一直線だな。」 お盆の次の週の金曜日だったので、白糸の滝を訪れる人は少なくて、二人にとっては都合良かった。 「スゲー。カッコイイ滝だよな♪ いい日に来たかもな〜。」 飯田は静香の肩を抱きながら、滝が流れる音を聞いていた。 風がなかったのに、滝の前に来ると水しぶきで風が舞った。 ひんやり冷たいこの場所は、今で言うパワースポットだ。 写真は撮らなかった。後で旦那に見つけられたとき、言い訳出来ないからだ。 二人の目の中に焼き付けておいて、この日の出来事を大切に心にしまった。 それから、飯田の1番のサプライズの宿に向かった。 ホテルではなくて、本当に避暑地の昔からの宿の構えだった。 「うわ〜。趣のあるホテルっていうより、昔からの大きな旅館って建物ね。」 「ああ。純日本風の旅館なんだけど、部屋はいい所を予約したんだ。 入ってからのサプライズだよ♪」 「尚ちゃん。そんなにサプライズ考えてくれて… 結構な宿泊料なんじゃないの?」 「ハハハ。俺の出来る範囲の事だ。 そんなにべらぼうに高くないよ。 あ。俺の名前で2人って予約したからさ。 夫婦って事にしてくれよ?な?」 飯田はちょっと照れ笑いしながら、静香の手を引いた。 「うん。わかったわ♪あ・な・た。」 「ば、ばか。いつもの通りでいいって!」 飯田は赤面して、フロントに向かった。 静香は飯田の背中を見ながら、赤面した飯田がかわいいと思っていた。 飯田 尚人 〃  静香 フロントで渡された台帳に飯田が書いている 名前に静香もドキドキして、見ていた。 「飯田ご夫妻様。本日はお越しくださいましてありがとうございます。 お部屋をご案内いたしますので、お荷物をお預かりさせて頂きます。」 ベルスタッフが静香達の荷物を持ちながら、エレベーターに一緒に乗り、部屋を案内してくれた。 外見は昔ながらの建物に見えたが、内装は大正ロマンのような趣のあるソファーにじゅうたんが引き詰められていた。 今式のエレベーターにも、シックな柄の壁だった。 廊下も高そうなじゅうたんの上を歩くと、フワフワとして感触も良かった。 「ここは本館で3階までしかありませんが、別館は10階まであります。 この部屋は特別の部屋でして、温泉の露天風呂付きです。 お食事もこちらにお持ち致しますので、何時頃お待ちしますか?」 飯田が 「そうだな。お風呂に入ってから食事にしたいから、7時でお願いするよ。 冷たい生ビールを2つお願いするよ。」 「はい。かしこまりました。それから、女将が食事の時にご挨拶いたしますのでよろしくおねがいします。」 「ああ。わかった。」 ベルスタッフは三つ指を揃えて礼をすると、部屋から出て行った。 「尚ちゃん。素敵〰。落ち着いた旦那様って感じ〰。」 「静香〜。もう、俺緊張した〰。 緊張ほぐしたいから、お風呂に入る前にやりたい!」 「え?尚ちゃん?あ。」 飯田はベッドに静香を倒すとキスをした。 「尚ちゃん?お風呂に入ってからにしようよ。」 静香は興奮している飯田の耳元で、呟いた。 「だめ!我慢出来ない。」 飯田は静香のブラジャーのホックを片手で外した。
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