508. 罪悪感

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508. 罪悪感

朝早く静香は目を覚ました。 隣の飯田はグッスリ眠っていた。 静香はそっと起き出して、大浴場で温泉に浸かっていた。 5時からの大浴場はまだ人はまばらだった。 昨日の仲居の言葉を思い出していた。 『葵ちゃん…この旅館で仲居さんしていたんだ… そして、毎日今の旦那さんの運ぶ安曇野牛乳を旅館の中に運んでいたんだ。 葵ちゃんが今も仲居さんで働いていなくて良かった! 万事休すだったわ。』 静香は胸を撫で下ろしなが、ゆっくり大浴場を出た。 部屋に戻ろうと廊下を歩くと 「静香」 自分の名前を呼ばれて振り向いた。 そこに、飯田がマッサージチェアに座っていた。 「起きたら静香がいなくてさ。 大浴場に行ったのかなって思って、ここで待ってた(笑)」 「尚ちゃん。グッスリ眠っていたから、起きないと思って。 大浴場に行ってみたかったの。」 「俺は今からサウナに入るよ。 男湯覗いたら、サウナがあったからさ♪」 「うん。それじゃ部屋に戻って支度しているね。」 飯田は静香の手を引いて、耳元で 「浴衣のままでいて。約束の朝飯前ね。」 そう言うと、微笑んで男湯の暖簾をくぐって行った。 うわ〰。尚ちゃんって体力半端ない〰。 一緒になったら、私…体力持つかしら? そんな事をちょっと考えながら、廊下を歩いた。 ここは別館の1階の廊下だ。 大浴場は別館の地下1階にあった。 本館に行くには、別館の1階に上がって、本館の1階のエレベーターに乗り替えなければいけなかった。 静香は本館に行く途中の裏庭の方の窓の外を眺めていた。 すると、"○○酪農"と書いてあった軽トラックが止まっていた。 『あ!牛乳の箱が積み重なってる! 葵ちゃんの旦那さんかな?』 静香は覗かれている事を気付かれないように、そっと見ていた。 でっぷり太った男の人が、牛乳ケースを抱えて旅館の勝手口に入っていった。 運び終わると被っていた帽子を脱いで、旅館の人に笑顔で挨拶をしていた。 そして、軽トラックは帰っていった。 顔は帽子で良く見えなかったけど、葵ちゃんが牛のような旦那なの。 って言っていた事を思い出した。 『体つきは牛に似てるかも。』 結婚式をあげたわけではなかったから、旦那さんの顔は知らない。 まあ、お互い顔は知らないから良かったかも知れないと静香はホッとした。 性格もわからないけど、なんとなくだけど今は葵ちゃんは、きっと幸せだろうと旦那さんの態度でわかった静香だった。 部屋に戻り、テレビをつけて化粧を始めた。 ベッドに腰をかけて、着替えずにテレビを見ていたときにメールが来た。 『うわ〰。旦那だ!』 『おはよう。楽しかったか?ホテルに泊まったの?』 静香は破裂しそうな心臓を抑えながら 『ごめんなさい。同窓会には行かなかったの。 友達が子供さんの関係で欠席したから、私も欠席しちゃったの。 母親にはそのまま同窓会って言って家を出てしまったけど、友達の所に泊まっちゃったの。 そうでもしないと、泊まりに行けなかったから。』 静香は前から考えていた事を旦那にメールをした。 『そっか。それならいいんだ。 やっぱりさ。心配してたからさ。友達って礼子ちゃん?』 『そうよ。東京に来ているの。子供さんと3人でどこか遊びに行ってから夕方帰るね。』 『ちゃんと話してくれてありがとう。気をつけてな。』 『うん。ありがとう』 メールを返すと、静香は罪悪感でいっぱいになった。 もう、嘘つき静香もいいところだ! 電話だったら嘘がバレそうだった。 メールで良かった。 そして、何よりも飯田が隣にいなくて、ホッとした静香だった。 『浮気するなよ。』 旦那が前に言われたことを思い出して、頭の中で木霊する。 カチャ 飯田が大浴場から帰ってきた。 「静香。お待ちどう♪寂しかった?」 そんな言葉、今かけないで! 静香は心の中で呟いた。 飯田は自分の浴衣を脱ぎ捨てて、静香をベッドに押し倒した。 「ん?静香?どうした?お腹でも痛いのか?」 旦那のメールの話は聞きたくないだろうと思った静香は 「う…ん。お風呂の帰りにね。 裏庭の方の廊下の外を眺めたら…旦那の妹の旦那さんが、牛乳運んでいたのを見て…びっくりしたの。」 「え?顔を見られたのか?」 「ううん。向こうはこっちを全く見なかったらわからないと思う…」 「そっか。義妹って酪農家と結婚したんだ。 へえー。安曇野牛乳を作っていたんだ。 え?ってことは義妹はここで働いていたってことか? 今も居たら、万事休すってことだったんだな。 それでそんな顔してたんだ。 静香?たとえ向こうに知られたって俺は静香を守ってみせるから! ちゃんと受け入れる体制はいつでも出来てるから心配するなよな?」 「尚ちゃん…」 飯田は熱い口づけを落とした。 飯田の唇は次第に胸からお腹へとキスを落としていき、1番感じる所で思いっきり丁寧にすすられて舐められた。 もう静香は何も考えられなくなっていた。 どんな罪悪感も飯田に抱かれたら、全て消えてしまうほど夢中になってしまう静香だった。
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