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509. タフな飯田
テレビが朝の7時のニュースに切り替わっていた。
神戸連続児童殺傷事件で、新聞社に送られた「酒鬼薔薇聖斗」を名乗る犯行声明文の解読を話していた。
酒鬼薔薇聖斗のニュースは毎日のようにずっとしていた。
そして、この年は山一証券も破綻した年だった。
この年は世界の情勢もあまり良くなかった記憶がある。
ダイアナ姫もこの年の秋に交通事故死と言う驚きのニュースが流れた年でもあった。
***
静香達は朝飯前のエッチが終わると、ベランダの露天風呂に入った。
もう、朝日は高い所にあった。
「今日もいい日だな。
朝飯食べたら旅館から出るんだな…
静香と夫婦ごっこも終わりか〜。
寂しいなあ。もっともっとこのままで居たい。」
飯田は静香を膝の上に乗せて、抱き締めていた。
「尚ちゃん。お腹すいた。」
のぼせる直前に色気ない言葉を飯田に向けた。
「静香はロマンチックじゃないよな〜。
そこは私もだろ?
まあ、いいや。
さあ。出よう!俺も腹減ったよ〜。
さてと、3回も温泉入ったからお肌すべすべだな。(笑)」
二人は浴衣のまま、バイキングレストランに行った。
「うわ〜。色んなおかずがあるな〜。
食べ切れそうもないな〜。」
静香は変な事を言う飯田に笑ってしまった。
「やあね〜。食べられるだけトナーに入れればいいでしょ?」
「え?せっかくバイキングに来たんだよ?
おかずを全て制覇したいだろ?」
飯田は少しずつ片っぱしからトナーに乗せていた。
飯田の目の前のテーブルの上にトナーが2つ。
山盛りのおかずが乗っていた。
「あ!牛乳も飲まないと!それとデザートもプリン食べないと!」
「尚ちゃん?そんなに食べたらお腹壊さない?」
「大丈夫。俺の胃は牛だから(笑)胃袋4つあるんだ。」
本当に胃袋が4つあるのかもと思えるほどの食べっぷりだ。
「一汗流した後の食事ってホント美味しいよな?」
隣のテーブルに聞こえるような大きな声で静香に話す。
「もう。尚ちゃん?声が大きいよ。」
いくら新婚さん設定でも恥ずかいと嘆く静香に
「え?俺はサウナの事を言ったんだよ?
静香は何を想像していたの?
いやらしいなあ(笑)」
静香は耳まで真っ赤にして、牛乳を飲んだ。
安曇野牛乳は本当に濃くて甘くて美味しかった。
「ぷはー。うまい!」
飯田は一気に牛乳を流し込んだ。
いつの間にか目の前のてんこ盛りのトレー2つを全てたいらげていた。
「もう。何も飲めない〜。」
飯田はお腹を擦りながら、
「苦しい〜。生まれる〜。」
静香は呆れ顔で
「本当に全部食べたの?
え?あんなにあったのに私と同じに食べ終わったの?
尚ちゃんって凄いね。
大食い大会で優勝するかもね?」
飯田は褒められたと思って自慢気に
「うん!自信あるよ!でも、イケメンだからやらない。
静香の俺へのイメージ崩れると嫌だからな(笑)」
静香はそんな事を飯田が言うとは思っていなかったので、笑ってしまった。
「笑うなよ〜。そこはそうよねだろ?(笑)」
最後のデザートのプリンを頬張りながら美味しそうに食べて、静香に笑顔を向けた。
こんなに優しい顔の飯田の顔を、丸2日も見てると本当にイケメンに見えてくる。
「尚ちゃんってホント、プリン食べてる顔が1番かわいい♪」
「え?俺はかわいいのか?静香の目線はカッコいいではないんだ?」
もう、さっきからやたらテンション上がってる飯田の返しに笑える静香だった。
「だって、憲一がプリン食べてる時の仕草に似てるから(笑)」
「え?俺が?それは違うぞ。」
「え?」
「憲一が大きい口で好きなものを食べているときの顔は静香そのものだぞ?
親子って食べ方も似るんだなって、思っていたんだよ?(笑)」
「え?やだ。そうなの?それじゃ、尚ちゃんも私も仕草が似てるのかしら?」
「美味しい物は皆、スマイル顔になるからな。
3人で同時に食べたら兄弟のように似てるのかもな?(笑)」
静香は想像しただけでおかしくなった。
二人は笑いながら、レストランを後にした。
廊下ですれ違った昨日の仲居の高橋が声をかけてくれた。
「おはようございます。
仲むずましくて心が和みます。」
そう言うと笑顔で、飯田が
「バイキング美味しかったです。
全部制覇しました。御馳走様!」
と、言ったので仲居が目を丸くして
「え?全部お召し上がりになられたのですか?
それはありがとうございます。
牛乳もですか?」
「うん。浴びるほど飲めなかったけど。
美味しい安曇野牛乳も堪能したよ。」
お腹を擦りながら答えた飯田を見て
笑いを堪えながら仲居は
「美味しく召し上がれて良かったです。
10時がチェックアウトですので、それまでごゆっくりお部屋でおくつろぎくださいませ。
あ。冷蔵庫の中のプリンを忘れずにお持ち帰りくださいね。」
仲居は会釈をして、レストランに入っていった。
飯田が
「できた仲居だね。また来ような?」
「え?あ。そ、そうね。
今度は本当の夫婦でね。」
その言葉を聞いた飯田は静香の肩を抱き寄せ
「今の言葉で下半身がうずいちゃった~。
後一時間あるからさ。食後の運動しようか。」
「え?」
飯田は静香の手を引っ張るとエレベーターに急いで乗って部屋にまっしぐらだ。
2日間で5回って…
一緒になったらどうなるのか先行きちょっと恐ろしくなった静香だった(笑)
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