514. ローストビーフの美味しいレストラン

1/1

278人が本棚に入れています
本棚に追加
/675ページ

514. ローストビーフの美味しいレストラン

「憲一?お母さんはお餅も駄目よ?」 みよばあの言葉に憲一は 「え?そうなの?」 「だって、お魚はゆっくりとひっくり返すようにしないと身が崩れるの。 それをひっくり返す前に焦がしてはお餅の場合はどうなると思う?」 「あ!お餅は真っ黒に炭になって食べられないよね! そうか〜。お母さんはどっちもだめってことか〜。」 「え〰。何よ!それ!今朝はたまたまよ! いつもはちゃんとお魚は焦がしたことないでしょ? 全く!お母さんが変なこと言うから!」 母親はここぞとばかりに笑っていた。 母親に嘘を言ったから、きっと仕返しされたと思って静香は黙った。 『あんなにお腹を抱えてお母さんが、笑っているのは久しぶりだわ。 まあ、いいや。笑ってるお母さんが好きだから。』 お昼近くになった。 「みよばあ。出かけようよ。早くローストビーフを食べたいよ〜。」 憲一の催促で静香も腰を上げた。 「そろそろ出掛けましょうか。」 母親もおしゃれをして部屋から出て来た。 「みよばあ?スカート履いたの? おしゃれしたんだ〰。 僕も着替えてくる〜。」 憲一もみよばあが買ってくれたNIKEの服を着てきた。 「あら、去年買ってあげた服。今年はちょうどいいのね。」 「うん。みよばあのセンスがいいから、気に入っているんだ。」 「憲一は成長するの早いわね〜。 また、来年の分買ってあげないとね。」 「うん!でも、それなら秋物がいいなあ。 長袖が欲しいんだ。」 「そう。それじゃ、お食事したらイオンモールに行く?近いから。」 「うん!わ〰い。嬉しいなあ。」 「なんだか、憲一が、主役みたいね。 まあ、いいけどね。 それじゃ、出発するわよ!」 3人で静香が運転でレストランに向かった。 車で20分も走ると母親が行きたかったレストランに着いた。 ローストビーフを3人前頼むと、憲一が今か今かとワクワクしていた。 「憲一?ちょっと、恥ずかしいわよ? そんなにローストビーフローストビーフって言ってないでよ!」 「だって。待ち遠しいんだもん。 朝はまっ黒焦げのシャケだったから、お昼は美味しいもの食べないと割に合わないよ!」 隣のテーブルのお客がクスクス笑っていた。 「もう!それを言わないの!」 母親もクスクス笑っている。 「お母さんまで。酷い〜。」 すると、ガラガラとワゴンが料理を運ぶ音がした。 「お待ちどうさまでした。 ローストビーフランチ3つですね。」 ウエイトレスが、静香達のテーブルの上に置いた。 「うわ〰。美味しそう〜♪食べたこと無いローストビーフだあ!」 憲一が目を輝かせながら、呟いた。 右にナイフとスプーンが2つ。左にフォークが2つ置いてあった。 「お母さん?どこからフォークとナイフを使うの?」 「憲一。これは洋食なんだけどね。 外側から使うのよ? だから、初めはスプーンを使ってスープを飲むの。」 みよばあはそう言って、見本を憲一に見せた。 スープを飲んでから、一番外側のフォークでサラダを食べて、主食のローストビーフをフォークとナイフを手に持って、ローストビーフを切って食べた。 憲一はみよばあと同じ真似をしてローストビーフを口の中に入れた。 「うわ〰。肉汁が口の中で踊ってる〜。 いつもクリスマスで食べるローストビーフとは天と地の差だあ。美味しい〰♪」 一枚食べても、もう一枚あるローストビーフに舌鼓した3人だった。 その後、デザートにフルーツミニパフェとドリンクが出てきた。 「最後に残ったスプーンと、フォークはデザートの為だったんだ〜。 う〰ん。美味しい♪」 ご満悦な憲一だった。 3人はレストランを出ると 「美味しかった〰♪みよばあ。また来ようね♪」 「そうね。今度は憲一のお父さんも連れて来ないとね♪」 「うん!それじゃ、来月ね♪」 それから、イオンモールに向かって、憲一はみよばあに秋物のNIKEの服と靴まで買ってもらって、最高の笑顔で自宅に戻って来た。 母親も孫の憲一と一緒だと終始笑顔だから、静香は嬉しかった。
/675ページ

最初のコメントを投稿しよう!

278人が本棚に入れています
本棚に追加