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522. 憲一の成長
『う~ん。やっぱりメニエール病かも知れないわね。
でも、お母さん…耳鳴りがするって言ったこと無いわよね?
なんだろう。とにかく、耳鼻咽喉科ね!
でも、主治医だってそんなこととっくの昔に検査してるわよね?
貧血のお薬で治るはずなのかな?
それとも、ここに書いてある病気と違う病気が隠れているのかな?』
いいえ!そんなことはないわ!もう、癌は無いはずだもの!
静香は自問自答した。
いや、癌だけは認めたく無かったのだ。
静香はこの本を借りるかどうしようか迷ったが、母親が端から端まで読みそうだったから借りるのはやめた。
病院に行く前に色々悩んで欲しく無かったのだ。
心配性の母親には読まない方がいいと静香は判断した。
それより、健康な体を作る本でも借りよう!
静香は本棚をくまなく見ていった。
『憲一は?どうしたかしら?』
小学生部門の本棚の方を足を向けた。
憲一は椅子に腰を掛けて座って本を読んでいた。
静香が後ろから覗くと、何やら漫画の本だった。
静香は呆れて
「憲一?あなた!漫画の本なんて読んでる場合じゃないでしょ?」
憲一は本を閉じると、静香に題名を指差し
「お母さん!これはれっきとした本だからね!」
その本のタイトルは
『偉人伝 エジソン』
「僕ね。エジソンは知ってるけど、生い立ちは知らなかったから読んでいるうちにのめり込んじゃたよ。
でもさ。さすがに漫画だけでは感想文が書けないから…
ほら!文字だけの本は借りようと思うんだ。
それとね。これ!読書感想文の上手な書き方を参考にしてここで書いちゃうね♪」
ちゃっかりしてる~。
ホント!サザエさんのカツオみたい!
悪知恵が働くわね〰️!!
どれどれと静香も憲一の隣に座って、文字だけの偉人伝トーマス・エジソンを読み始めた。
7人きょうだいの末っ子で、子供のころから「Why」が口癖の異常なほどの”知りたがり屋”だったそう。
好奇心旺盛と言えば聞こえはいいが、学校の教師からすればたまったものではありませんよね。
なんと小学校を3ヶ月で退学してしまい、自宅学習をすることに。
そんなエジソン少年に母ナンシーは理解を示し、優しく受け止めたという。
母の愛なしでは「発明王」は誕生しなかったかもしれない。
こうしてエジソンは学校へは通わず、図書館に通うなどして自力で学んでいく。
彼が特に興味を示したのが化学の実験。
12歳頃から、鉄道の駅で新聞の売り子などをして働きながら、自宅で様々な実験を行っていた。
「へえ⤴️エジソンって変わった小学生を送っていたのね~。
今で言う、不登校の先端を行ってたんだ~。
でも、途中、二宮金次郎みたいになっていってるね。」
それを聞いた憲一が
「え?お母さんはエジソン偉人伝を読んだこと無いの?」
「え?そ、そうね。電気の発明家とは知っていたけど…読んだけど忘れちゃたのよ!」
「そうなの?怪しいなあ。二宮金次郎だって読んで無かったんじゃないの?」
静香は図星を言われて無口になった。
「江戸時代に、農家で生まれた二宮金次郎なんだよ?
幼い頃に両親を亡くしたんだ。
勉学と家の手伝いを頑張りながら、24歳で家を建てたんだよ?
その頭脳を買われて幕府に取り立てられ、全国各地の村を立て直していくんだよ。
学校にある銅像の二宮金次郎が読んでる本は何だか知ってる?」
「知らない…」
「読んでるのは『大学』って本なんだけどね。
開いたページには
二宮金次郎の格言が書いてあるんだよ?」
「え?格言が?」
「ちゃんとした事は言えないけど、先生がね。
大きいことをしようとするなら、どんな小さいことでもおこなるな。みたいな事が書いてあるみたいだよ。
二宮金次郎は倹約家だったから、背負っていた薪は売ってお金にしていたみたいだよ。
家の為に犠牲になっていたわけでは無いんだ。
コツコツコツコツお金を貯めて、貧乏農家でも家が建つことを教えたかったんじゃないかな。
そこがね。このエジソンと似てるんだ。
でも、大きな違いはエジソンは理解してくれる親がちゃんと居たことなんだ。
二宮金次郎は親が死んじゃって居なかったから、苦労してお金を手に入れた。
偉人の人は本当に何か考え方が皆と違うんだよね。
そんなことを感想文に書いて行こうと思うよ!」
静香は憲一の横顔を見ながら、この1年で凄く成長した自分の我が子を感心していた。
いつの間にか、静香も漫画の偉人伝を読んでいた。
「終わった~!
お母さん!感想文が書き終わったよ~。
あとは発明工夫だけだ~。
この『発明工夫の作り方』の本を借りていい?」
「いいわよ。」
静香も『健康レシピ』の本を借りた。
図書館を出るとケンタッキーフライドチキンを買いに、車を走らせた。
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