278人が本棚に入れています
本棚に追加
/675ページ
523. 図書館から帰って
「ただいま~♪」
元気な声で、憲一は玄関のドアを開けた。
「あら。早かったわね。お帰りなさい。」
「みよばあ!ケンタッキーフライドチキンバーレル買ってきたよ~♪」
バケツ型の入れ物をテーブルに置いた。
「え?こんなに?」
みよばあは目を丸くしてバケツのようなバーレルを眺めていた。
「うん。フライドチキンだけ買ってきたの。
僕がたくさん食べたかったから!
残ったら、夕ごはんにも食べたいんだ!」
「飲み物もポテトフライもいらないから、フライドチキンが食べたくて仕方ないんですって!
お母さんと私は3本ずつで、後は憲一が食べたいみたいよ(笑)
まあ、12本買ってきたんだけどね。
それでね。隣のパン屋さんでロールパンを買ってきたから、昼食の飲み物はオレンジジュースが冷蔵庫にあるから、それでいいわよね?」
「え?パンはいらないわ(笑)フライドチキン3本でお腹いっぱいよ(笑)」
3人はバーレルをテーブルのまん中に囲って、賑やかに食べていた。
「憲一?作文は書いたの?」
みよばあが、フライドチキンの衣を取り除きながら聞いた。
「うん!図書館で書いてきたの!
発明家のエジソンの話を書いたんだ!」
「まあ、すごいわね。偉人伝を読んだの?」
憲一はさりげなく、文章だけの本をみよばあに差し出して見せた。
「まあ。こんな厚い本を短時間で読んで感想文を書いたの?
すごいわね~。憲一?天才ね♪」
そんな言葉に静香は白々しい目付きで、憲一に目をやった。
「うん。まあ、所々ね。前にもエジソンは読んだことあるから、最初のページに力を入れて書いたんだ。」
漫画の本の方だけ読んだだけじゃない!
静香は心の中で思ったが、口にはしなかった。
また、ここで口喧嘩して、口論になっても時間がもったいないからだ。
「凄い凄い!憲一は本の読み方もわかるのね。」
「え?」
憲一がみよばあの顔を覗いた。
「本の読み方は何を作者は書きたいかが、『はじめに』に書いてあるでしょ?
あらすじは『目次』で見当つくし、『終わりに』の言葉で何が言いたかったかわかるものね。
後はペラペラとめくって、好きな言葉や面白い所を抜擢していくとなんとなく読んだって形になるのよね。
今日1日しかないんだもの。要点だけ書いても感想文は書けるわね。
明日は学校から帰ったら、じっくり読めばいいものね♪
それが憲一がわかっているなんて頭がいいって事よ?」
そんなつもりで読んでた訳ではなかった憲一は、返答に困った。
今さら、漫画本を読んだからとも言えなかった。
フライドチキンを1つ持つと、
「後は夕ごはんの時に食べるね。
僕は、今から発明工夫の宿題をしないと行けないから、部屋に戻るよ!」
そう言いながら、罰悪そうに部屋に入った。
静香はクスクスと笑いながら、フライドチキンを食べていた。
「静香?何が可笑しいの?まさか、静香が感想文を書いてあげたとか?」
「まさか!憲一の方が私より頭がいいもの!
私はエジソンの話も二宮金次郎の話も知らなかったから。
憲一に教えてもらって、子供って成長するのが早いなあって、つくづく今日、感じたわ。」
「そうね。本当に子供の成長は早いものよね。
静香もいつの間にか、30歳過ぎて…
私もいつの間にか高齢者になってしまって…
嫌よね〰️。」
静香は母親にお茶を入れてあげた。
「皆、同じに1つずつ年を取って行くんだもの。仕方ないわ。
お母さん。体に気を付けて長生きしてね。
私はまだまだ未熟な人間だから!
お母さんがいないと何にも出来ないからさ。
ね!
早め早めに病院に行って、明日は耳鼻咽喉科の先生にちゃんと診てもらいましょ?」
「そうね。明日は静香を会社を休ませてしまうけど、お願いするわ。
図書館でメニエールを調べて来たんじゃないの?」
「うん。メニエールの初期は耳鳴りがするんだけど…お母さん?耳鳴りはするの?」
「耳鳴り?そうね。
貧血で倒れそうな時は…頭がぐるぐるして気持ちがそっちに行ってしまうから、良くわからないけど…
前兆は耳鳴りするかも知れないわね。」
「そうなのね。それじゃ、やっぱりメニエールかも知れないわね。
とにかく、明日耳鼻咽喉科に診てもらわないとわからないわね。」
母親は頷くと、静香が
『健康レシピ集』
の本を母親の前に差し出した。
「お母さん。メニエールとかの病気を改善する、耳に良いレシピも載ってるの。
ちょっと、買い物に行って来るわね。
消化が良くてお母さんにも食べられそうな食材を買ってくるね♪」
静香はレシピ本を片手に、玄関を出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!