525. 今日は9月1日

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525. 今日は9月1日

夏休みがとうとう終わりを告げ、9月1日の朝を迎えた。 静香は会社の同僚の川井にメールをした。 『おはようございます。申し訳ありませんが、母親の具合いが悪いので病院に連れて行くので休みます。』 と、入れた。すぐに 『わかりました。所長に話しておきます。 お母さんを大切にね。お大事にしてください。』 と、返信が来た。 所長にはメールでは失礼だけど、同僚ならメールで事が済む。 便利な世の中になったなあと静香は思った。 *今はラインWORKSで事が済む時代にまでになったけどね。 まあ、本社には全て見られているから余計な事はラインできないけどね。 便利になりすぎると、かえってタブーな事は話せないから厄介な世の中になった気がする。 まあ、親しい人とは、普通のラインに話しているけどね♪ **** 憲一はランドセルの他に両手に手提げ袋をぶら下げて、玄関を開けた。 「お母さん?今日は給食が出ないからね! お昼には帰ってくるから、お昼ごはん用意しておいてね。 お母さん達もお昼には病院から帰って来るんでしょ?」 「あ!そうか!今日は給食が無いんだ。」 それを聞いていた母親が 「大丈夫じゃない?お昼には戻って来られるでしょ? いつもの総合病院じゃないんだから。 帰りにお弁当買って来ましょう。 憲一は何がいいの?」 みよばあの機転に憲一は喜んで 「から揚げ弁当がいい!」 「わかったわ。ほっかほっか亭で買ってくるわね♪」 「みよばあ!ありがとう!」 そう言うと、元気に玄関を飛び出した。 「気を付けて歩くのよ!今日はたくさんの荷物を持っているんだから!」 静香の声も聞こえないぐらい、集団登校の場所に駆け足で行ってしまった。 「まったく!人の話をまったく聞いていないわね!」 静香が膨れっ面を母親に見せた。 「ウフフ。向こう見ずも静香にそっくりね。」 母親がクスクスと笑っていた。 「ええ〰️。私は向こう見ずじゃないわよ? 人生、ちゃんと前を見て歩いているわよ!」 母親がまたクスクス笑う。 「そうね。でも、石橋叩いて渡る私の性格から、何で娘は向こう見ずな性格なんだろうと常々思っているけどね(笑) 多分、お父さんに似たのね。 『東京から引っ越して来たとき、俺は事業をやる!先に地元に帰るから準備が出来たら、引っ越しの手配するから、静香を連れてこっちに来いよ。』 なんて、言い出して次の日、さっさと一人で行動していたわ。 え~。私一人で引っ越しの準備するわけ〰️!って思ったけど、後の祭りよね。 人の事を何も考えずに行動出来るお父さんの後ろをついて行くのも大変だったわ~。」 そう言いながら、仏壇の前に座りお線香をあげている母親の後ろ姿を見ながら、心の中で病院の検査の結果が大したことがありませんようにと祈っている母親の心が読めてしまった静香だった。 8時には耳鼻咽喉科の病院に向かった。 総合病院と差ほど離れていない所にある。 結構患者さんが座っていた。 『やっぱり、名医だから混んでるわね。 お昼までに終わるかしら?』 静香と母親は座って待っていた。 「関根 みよ子さん。」 看護師に名前を言われたのは、思ったより早かった。 「こちらの用紙に以前通っていた病院や、病名、そして、今の耳の状況とかわかる範囲でご記入して窓口に提出してください。」 ああ。やっぱりカルテが無いからそうなるわよね。 お母さん、自分で癌って書きたく無いだろうなあ。 母親はため息をしながら、全てを記入した。 窓口にその用紙を提出すると、 「初診の患者さんはすぐに呼びますので、こちらに座ってお待ちください。」 静香は看護師に尋ねた。 「あの。母親と一緒に先生とお話を聞いていいですか?」 「はい。どうぞ。構いませんよ。」 看護師は静香に笑顔で答えてくれた。 「年寄り扱いしなくてもいいのに。」 母親は小さな声で静香に呟いた。 「だって、独りで待ってるの退屈だし、専門用語が先生から言われたら何の事だかわからなくて、お母さんは頷くだけで、聞き返さないでしょ? そうすると、私に話すときなんだか良くわからなかったわ。なんて言い出すと私が心配になるでしょ?だから、一緒に聞く方がいいの!」 「わかったわよ。静香がわからなかったら、先生に質問してね。 私は黙って隣にいるから。」 ほら!いつもお母さんはそうだから、こっちは心配で堪らないのよ? そのくせ、お母さんは私以上に心配性なくせに! 「関根さん。お入りください。」 看護師がドアを開けた。 2人は診察室に入って行った。 名医の先生は50代の先生だった。 「総合病院で今年、手術したんですね。 大変でしたね。大きな手術で。 総合病院にも耳鼻咽喉科はあったと思いますが、なぜこちらにいらしたのですか?」 さっき母親が書いた問診票を見ながら、先生は母親に質問した。 「こちらの耳鼻咽喉科の先生は、名医とお聞きしたので、診てもらいたかったのです!」 母親は凛とした態度で先生の目を見て話したので、先生は微笑んで 「わかりました。今の状況を話してくれますか?」 母親は貧血で良く倒れる話をしていった。
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