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526. 母親と耳鼻咽喉科に行って
先生は母親の話を聞きながら、看護師に色々指示をしていた。
「関根さんのお話はわかりました。
ただ、耳の病気は色々あって、一概にメニエール病だとは言いきれないのです。
今から、耳の精密検査をしますので看護師の指示に従ってくれますか?
結果が出ましたら、又診察室に入ってくださいね。」
先生にそう言われて、静香は待合室のロビーで母親が検査が終わるまで待つことになった。
母親は超音波室に入っていった。
それが終わると、レントゲン室に移動していった。
そして、MRI室にも。
母親は待合室に戻って来たのは、静香がロビーで1人で居て、1時間過ぎた頃だった。
「あ~。疲れた~。」
ロビーの椅子に倒れこむように座った母親。
「大丈夫!お母さん?」
「静香?自動販売機でお水を買ってきてくれる?」
喉が渇いたのだろう。静香はロビーの端に立っている自動販売機で水を2つ買った。
静香が渡した水を美味しそうに母親は飲んだ。
「生き返ったわ~。」
「大袈裟ね。お母さん大丈夫?」
「私、MRIが嫌いなのよ。じっと20分も動かず耐えてないといけないでしょ?
動いちゃいけないって思うと、顔が痒くなったり、目がピクピク痙攣起き出したり、とにかく落ち着こうとすればするほど、顔の神経が言うことを聞いてくれないの!」
そうなんだ。私はMRIは事故の時に1度入ったことあるけど、クラッシックの音楽が聴こえてリラックスできたけどなあ。
「お母さん?クラッシックの音楽が聴こえてリラックスできなかった?」
「クラッシックの音楽は嫌いなのよ。」
「え?」
「歯医者さんでも、待合室で流れているでしょ?
だから、クラッシックの音楽は歯医者さんを思い出して…あのキーンって音が聴こえてくるのよ!」
「え?キーン?それって耳鳴りじゃないの?」
「違うわよ。歯を削る音よ!もう、ホント!私は痛い思いをしたから。忘れられないの!トラウマよ!」
ああ。お母さんはMRIの中で色んなトラウマを思い出して緊張しっぱなしなんだ。
静香は今まで知らなかった母親のトラウマを知った。
私も歯医者さんのあの音は嫌いだけど…
クラッシックの音楽からそっちを想像することはなかったなあ。
お母さんって、ホント!神経質って言うか、心が繊細なんだね。
それって、ストレスよね?本に書いてあったな。
病気のほとんどはストレスからって!
お母さんは自分でトラウマ作って、自分でストレス作ってしまうんだよね?
「関根さん。お入りください。」
看護師に呼ばれて、診察室に2人では入った。
先生は椅子に座って、パソコンを母親に向けた。
先生はパソコンを私達に見せながら
「関根さんの病気は、内耳リンパ水腫です。」
「え?リンパ水腫?って何ですか?
それって癌って事ですか?」
母親はやっぱりという思いで先生に食らいついた。
「違いますよ!まあ、メニエールって言ってあげた方がよかったですかね。
関根さんには、耳の悪性リンパ種って聞こえてしまったんですね。
耳の中に誰もリンパ液があるんですね。
何らかの原因で内外リンパ液の
バランスが崩れ、内リンパ液が
増えすぎると、圧力で内耳が膨れ上がり
内耳リンパ水腫となるんですよ。
それを他の病院ではメニエール病と言っていますが、私は一概にメニエール病とは言わないんです。
メニエール病は一生治らない病気って、俗一般の方は言っているようなので。
ここは、あえて内耳リンパ水腫という病気といっています。
広く言えば、自律神経失調症なんですよね。」
「え?自律神経失調症?私が?」
母親は先生に食らいつくような目をして言った。
「メニエールの根っこの原因は内耳リンパ水腫ではなく、 物質系原因があげられます。
関根さんの場合は癌と言う病気でしたね?
それと、感情系原因もあるんです。
ストレスやトラウマなどです。
その他にも体質系原因、最後に遺伝系原因
等があります。」
この「4種類の原因」が貯まって体が不安定になっていることを「自律神経が乱れている」といいます。
なので、関根さんは病気に対していつも不安があり、それがトラウマになってストレスとして抱え込んでしまっているので、その時点で自律神経が乱れに乱れているのです。
そして、ストレスが溜まりこんでしまうとメニエール病として、関根さんの体が訴え始めるのですよ。
それが正体です。」
母親は名医の先生に言われて、素直になれたのか処方箋をもらって病院を出た。
また、2週間後来院することになった。
途中、ほっかほっか亭に寄ってお弁当を3つ買って家に戻った。
家に着いた時は12時近くになっていた。
母親は大きな溜め息をして、台所の椅子に腰かけた。
「自律神経失調症だったなんて…」
一言そう言って、お弁当を袋から取ろうとした時に
「ただいま〰️!!」
元気な憲一の声が玄関から聴こえてきた。
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