528. 白石の消息は?

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528. 白石の消息は?

焼却炉に2人は近づき、静香はその男の人に白石をたずねることにした。 「こんにちわ。ちょっとすみません。」 男の人は振り向き変な顔をした。 「なんだ?勝手に裏庭に入り込んで! ここは関係者以外は立ち入り禁止だよ?」 2人はちょっと恐かったが 「あの。ここで住み込みで働いている白石さんと知り合いなんです。 あの、白石加奈子さんは今も居ますよね?」 「え?白石?加奈子?あ。カナちゃんの事かな?ラウンジで働いていた子?」 「はい。そうです。」 「カナちゃんはここを辞めたよ。もう、辞めて2ヶ月になるかな?」 「え?あの、引っ越し先はわかりますか?」 「いや。わからないよ。目を手術するからって、その後当分仕事できないから、ラウンジをちゃんと辞めてから入院して行ったから…退院後の事はわからないな。 今、住み込みでいる人は新しくラウンジで働いている人だからね。」 静香が嘘の発言を憲一に言ったが、本当に手術が出来ていたことは心の底から良かったと思った。 でも、これで白石の消息はわからなくなってしまった。 「加奈おねえちゃんの目の手術って何処なの?」 憲一が静香に聞いた。 「確か、大学病院だったと思ったけど…」 「行ってみようよ!」 静香以上に憲一は白石と会うことを諦めていなかった。 病院が個人情報を他人に教えてくれるわけはないと思ったが、諦めさせるには憲一を病院に連れて行かないとと、静香は思った。 大学病院は飯田の父親が入院していたところだ。 でも、介護施設の方に移動したと飯田に聞いていたから、飯田の母親には会うことは無いだろうと思ってホッとしていた。 大学病院を行く途中に飯田の店を通る。 憲一には一度だけ連れて行った。 店の近くを走ったとき 「あそこだよね?尚ちゃんのお店だったところ!」 静香はゆっくり店の前を通りすぎた。 店の看板も店の外壁も白のペンキで塗りつぶされていた。 「尚ちゃん…今どうしているのかな?」 「憲一…尚ちゃんは今大洗のちゃんこやに働いているみたいよ。 守さんと一緒にアパート暮らししているって、この間電話があったわ。 ちゃんと手も治って頑張ってるよって言ってたわ。 お母さんは別にお友達の縁を切った訳ではないわ。 色んな事情で、なかなか会えなくなってしまっただけよ。 今度、尚ちゃんに会いに行こうか?」 寂しそうにしていた憲一の横顔に、静香は飯田の事を話してあげた。 「大洗?ちゃんこや?それじゃ、料理人を諦めた訳ではなかったんだ♪ よかった~。それじゃさ。来週行こうよ! 尚ちゃんに会いたいよ~。」 そう来ると思っていた。今度のデートは子連れデートだ。 たまにはいいかなとも思っていた。 憲一はポケベルを持ち出してなにやら文字を打っていた。 すると返事が来て 「お母さん!『今週の土曜日の朝、いつもの大洗の駐車場に来て』だって♪」 「え?憲一?尚ちゃんとメールしていたの?良く、すぐに返事が来たわね?」 静香はびっくりした。 全く、息子の行動には驚かされるばかりだ。 「ほら?今3時でしょ?休憩の時間じゃないのかな?」 笑顔で答える憲一の顔は、今度の土曜日に飯田と会える喜びでいっぱいだった。 大学病院に着くと、眼科の受付に足を運んだ。 とりあえず、白石加奈子の話をしてみたが個人情報なのでと、何も答えられませんとの回答だった。 ただ、1ヶ月前に退院したとは教えてくれた。 憲一はがっかりしてロビーの椅子に座った。 横目でカフェがあるのが見えた憲一は 「ねえ?お母さん。お腹空いた。ドーナツ食べたい。」 ねだる憲一と一緒に静香はコーヒーとドーナツ。憲一はコーラとドーナツを頼んだ。 *あの頃はスタバは出来ていなかったが、カフェみたいのはあった。 それから10年後にスタバは大学病院内に出来て、おしゃれな大学病院に変身するのだった。 すると、一人の男性に2人は声をかけられた。 「社長?社長じゃないですか?お子さん?憲ちゃん?」 2人は振り向いて、びっくりした。 「え?菊池君?」 静香が中古ゲームソフト販売店を経営していたときに、アルバイトをしてくれていた菊池だったのだ。 「久しぶりですね。あれから半年ですかね? お元気でしたか? 社長とチーフの事は心配していたんです。 チーフのお店が閉まっていたので… それからどうなってしまったのかな?って。 今日はお見舞いか何かですか?」 半年位とは思えないほど、菊池は大人の男性に身も心も磨きがかかっていて、凛々しかった。 「尚ちゃんは手の靭帯を痛めて、手術して…鍋が持てなくてお店をたたんだの。 でも、今は回復して大洗のちゃんこやで修行を兼ねて仕事して、アパートを借りて、お友達とシェアハウスしているわ。 私は全く違う職業について、今日は会社を休んで、午前中は母親を病院に連れて行って、午後からは友達のお見舞いに来たんだけど… 退院しちゃった後だったの。 菊池君は?」 「そうでしたか。実は朝倉が入院して…お見舞いに来たですよ。」 「え?朝倉君が入院?どうしたの?事故か何か?」 アルバイトをしてくれてた朝倉がここに入院していることを知り、2人は驚いた。
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