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536. 嘘から出た実(まこと)
月曜日の朝。
「お母さん。今日は残業になるの。先週の金曜日、川井さんに月曜日はお休みするからよろしくって言われたの。
私はのろまだから、2人分仕事すると残業は間違い無いから…」
「わかったわ。大丈夫よ。憲一と2人で先に夕飯食べて、お風呂に入ってるわ。
お仕事頑張ってね。」
「お母さんはおっちょこちょいだから、残業じゃなくて帰って来られないんじゃない?」
憲一が静香をおちょくった。
「もう!そうやってお母さんをバカにするんだから!
憲一?あなたもお母さんに似ておっちょこちょいのところあるから、忘れ物しないで学校に行ってね!
ほら!給食袋がランドセルに引っ掛けて無いじゃない?」
「あ!ホントだ!忘れるところだった〰️!」
憲一は部屋に戻って取りに行った。
「お母さんをバカにするからよ!」
クスクスと母親が笑う。
「やっぱり親子ね♪似てるわ(笑)」
母親には、嘘をついたが飯田と会う方が先にたった静香だった。
憲一が出る前に静香は玄関を出た。
台風が来る前触れか、空はどんより雲っていた。
『関東は明日台風が通過するのよね。
今夜は大丈夫よね?
まあ、なるべく早く帰って来よう。』
そんな事を考えながら、会社に着いた。
いつも静香より早く来ているはずの川井の姿がなかった。
「所長?川井さんはお休みじゃないですよね?」
「ああ。川井さんは熱があるらしく、本日は休みとさっき電話があったよ。
岡野さん一人で1日仕事頑張ってもらうしかないな。
よろしく頼むよ?」
『え?ええ〰️!嘘から出た実になっちゃった〰️!
どうしよう。本当に今日は残業だわ〰️!!
尚ちゃんに残業かも知れないってメールしなきゃ。』
静香が朝礼が終わる頃メールを入れたら
『愛する俺の為に、超スピードで仕事してくれるよね?
改札口で待ってる。絶対に早く帰って来てね。
俺は父親が具合悪くなったから、病院に行くと言って社長にも、守にも嘘言ってズル休みして、もう出て来ているんだよ。
そこのところよろしく頼むからね。
1日静香を待ってる健気な尚人より』
『え〰️!もう、アパートを出たの〰️?本当に1日待つつもりなの〰️。どうしよう。』
静香はとにかく、正確に間違いやミスをしないように、お昼休みもあまり取らずに仕事に打ち込んだ。
「岡野さん?今日は仕事のピッチが早いね。
その調子なら、今度は岡野さんにもっと仕事与えられるね♪」
「え?違います。今日は母親の調子が良くないので、残業しないで帰りたいので、頑張っているんです。」
「そうか。お母さんが。でも、岡野さんはやればできる人なんだね。
頑張れば残業無しで終わるよ。
それじゃ、私も手伝ってあげるよ。」
そう言ってくれて、所長は川井の椅子に座り書類に目を通し始めた。
しかし、甘かった。夕方5時近くに帰ってきた営業マンが、契約書を抱えてやって来た。
所長が宅急便を30分遅らせる電話をしていた。
17:30に宅急便が来ると言うことは、それまでに書類を終わらせるって事だがその後、パソコンに入力したり、ファックスの返事待ちがあるのでいくら早くても、退社は18:00にはなってしまう。
焦った静香だったが、ミスは許されないから何度も所長にチェックしてもらい、会社に来る宅急便屋に書類バッグを渡した。
「岡野さん。すまないね。それじゃ、後は俺が戸締まりするから6時で帰ってくれよな。」
「ありがとうございます!お疲れ様でした。」
静香はペコリと頭を下げて帰って行った。
6:40に
土浦駅着になってしまった。
改札口に飯田が居なかった。
「あれ?怒って帰っちゃったのかな?」
静香はキョロキョロしながら階段を下り始めた。
階段の途中に踊り場がある。
大きなガラス窓に飯田が手を振っていた。
そこはラーメン店の中だった。
「静香。腹減り過ぎてしまって…
ここで食べて行こう!メールは入れたよ?
見なかったのか?」
焦って携帯など見ていなかった。
『18:40に着く』
とだけメールしたのだった。
「良かった〰️。尚ちゃん、怒って帰っちゃったのかなって思っちゃた〰️。」
「ハハハ。静香を食べずに帰るわけ無いだろ?」
『うわ〰️!回りの皆に聞こえるよ〰️。』
静香は赤面した。
「なあ。土浦駅もどんどん変わるよな。
真向かいのウララビルのイトーヨーカ堂が来月オープンなんだな。
この駅ビルのWINGも色々店が立ち並んでいて、この回りのビルも賑やかになっていくよな♪
半日いても飽きなかったよ。」
*今はイトーヨーカ堂が市役所になってしまった。
『WING』も無くなり、今は『ペルチ』になって少ない店舗で頑張っている。
自転車で入れるレストランに変わった。
ラーメンを食べ終えると静香は飯田の車に乗ってラブホに向かった。
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