538. 嵐の中の自損事故

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538. 嵐の中の自損事故

降りしきる雨の中、高速ワイパーをしても全く前が見えなかった。 あまり慣れない道を通る静香に不安がつのる。 対向車が一台も通らなかった。 不思議に思ったが、とにかく早く家に帰りたかった静香はアクセルを踏んだ。 その時何かにぶつかったような衝撃を受けた。 タイヤが側溝の蓋が割れてはまってしまったのだった。 「え?ええ〰️!何なの〰️?動かない〰️」 よく見ると、側溝の蓋が濁流に流されかかりずれて、そこに静香の車のタイヤがはさまったわけだった。 道に10cm位水が貯まっていたから、道だか側溝だかわからなかったのだ。 「どうしよう。どんどん水かさが多くなる〰️。車が水没しちゃうよ〰️。 ダメダメ!静香!冷静になるのよ!」 静香の車の保険はロードサービスが付いていた。 ドアの所にシールが貼ってあった。 ロードサービスの電話番号が書いてあった。 「ここに電話しよう!」 静香は携帯でロードサービスに電話をした。 すぐに繋がった。 「もしもし?車が側溝にはまってしまって動かないんです!」 1時間後に行けると言う。 まだ、ラッキーだった。こんな嵐の夜はあちらこちらで事故をしているハズだから! 2時間も3時間も待っていたら、車は本当に水没していた。 「そうだ。お母さんに連絡しておかないと! あ。連絡しない方がいいかな? 余計心配するかな?」 心配症の母親を考えるの電話をするのを躊躇した。 でも、溝にはまっただけと言えば安心するかな? 静香は自宅に連絡をした。 迂回して、慣れない道で前方がどしゃ降りで良く見えなかったから、側溝にはまったけどロードサービスに電話したら1時間後に来てくれるから心配しないで先に寝ててと電話した。 母親はわかった。気をつけて運転するのよと言って電話を切った。 レッカー車が1時間後にやっと来てくれた。 もう、車から出たらドアから水が入ってしまうほど水かさは増していた。 心細かった静香は、レッカー車を見ると涙が溢れた。 本当に来なかったら、車ごと水没してしまうところだった。 レッカー車の人は2人乗っていた。 膝下まで浸かる水の中をワイヤーで車を引っ掻けて、そのまま静香の車を引きずり出してくれて水が道路に貯まっていないところまでレッカー車が運んでくれた。 静香はロードサービスの人にエンジンを止めずに居てと言われたのでそのまま運転出来て、帰ることが出来た。 水の中でエンジンを止めてしまったら、マフラーから水が入ってしまい逆流して車が動かなくなるからだそうだ。 とりあえず、電気系等の点検を明日してもらってくださいとも言われた。 家に帰ると灯りが付いていた。何だかんだで、すでに夜中の零時過ぎていた。 「お母さん?寝てなかったの?」 「心配で寝られるハズ無いじゃない。 大丈夫だったの?車は無事に動いたの?」 案の定、母親の瞳が潤んでいた。 「うん。明日点検するようにって言われた。 でも、休むわけいかなし…明日も川井さんが来ないかも知れないの。」 「それじゃ、お母さんの車を乗っていきなさい。 静香の車はお母さんがディーラーに電話して、取りに来てもらうから。ね!」 お母さんの車?ずっと乗って無いけど動くのかしら? 静香はそっちの方が心配だった。 「バッテリーは大丈夫よ。一週間に一度はエンジンかけているから!」 「うん。ありがとう。わかったわ。お風呂に入るからお母さんは寝てね♪」 母親は静香の顔を見て安心した顔になり、部屋に戻って行った。 飯田も『今着いた』とメールがあった。 静香は安心して眠れた。 次の日の朝、静香は自分の車を見に行った。 台風は昨日の夜、早いスピードで関東を抜けたようだった。 今朝は昨日の天気なんて嘘のように、雲一つ無い晴天だった。 静香は車の中に入っている化粧道具や書類など取りに左側のドアに手を取ると、ドアの下がへこんでいたのがわかった。 「うわ~。タイヤだけじゃ無かったんだ〰️。どうしよう〰️。旦那に言わないといけないかな?」 静香はため息をして、旦那に連絡してから家に入った。 「お母さん。ディーラーに電話して取りに来てもらうとき代車借りてくれる? よっちゃんに連絡したら、車両保険加入してるから修理してもらえって。 やっぱり溝にはまったときドアの下も側溝の蓋に当たってへこんでいたのよね。」 「そう。わかったわ。でも、それだけで良かったじゃない? きっとお父さんが助けてくれたのよ。 また、静香が入院なんかになったらお母さん、心配で堪らないから。」 そうね。最悪の場合、溺れ死んじゃったかも知れないものね。 あれ以上水かさが増したら、水圧でドアが開かないらしいとテレビで言っていた。 あの状態スレスレだったのだ。 お母さんには言えないけど。 これ以上過ぎた事に心配の上乗せをさせたくなかった静香だった。
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