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543. ヘルプの彼女はキャリアウーマン
次の日から本社からヘルプの人が来た。
東京出身の綺麗なお姉さん。梁田 今日子さん。彼女は独身。私より5歳年上の女性だった。
「こんな瘋癲の寅次郎みたいな出稼ぎ仕事しているから、結婚なんて考えて無いわ。
私はキャリアウーマンでやっていくつもりなの。
色んな県に行けて、凄く楽しいし、生き甲斐のある仕事だと思っているのよ。
ここは、東京に近いから電車で毎日通わなくては行けないからつまらないわ〰️💦」
そんな破天荒な事を平気で言う人だった。
「岡野さんとは歳も近いし、柏は都会だから、美味しい居酒屋で2人で飲みたいなあ。
なんか、気が会いそうじゃない?」
屈託の無い笑顔で言われると、静香もタジタジだった。
「私はまだ、柏営業所に採用されて2ヶ月なので…柏の居酒屋なんて行ったこと無いんですよ。
それに…病気なのに、子供を見てくれる母親が私の帰りを待っているし…母親に言ってからじゃないと夜なんて飲み歩けませんし。」
「あら。そうなんだ。大変なのね。
旦那さんは?」
「単身赴任で今週土曜日には帰ってくるかと思いますが…」
「まあ。単身赴任なんていいわね。
いつも新鮮なままいられるわね。
1ヶ月に一度のご対面か~。
ねえ?岡野さんは浮気なんてしないの?」
「え?あの。」
静香は梁田の悪気の無い言葉にあたふたしてしまった。
「ふふふ。そう。今の一言でなんとなくわかっちゃたわ。
まあ、今しか青春は無いものね♪
三十代はさせ盛りだものね♪」
「え?だから、浮気なんてしていませんよ!」
静香は必死に否定した。
「え?そうなの?あ。浮気じゃなくて本気とか?」
図星を言われて静香は慌てた。
「そ、そんな人はいません!」
「ふふふ。岡野さんはからかうと面白いほど反応するのね(笑)
わかったわ。それじゃ、来週の金曜日飲みましょうよ。
お母さんにちゃんと言っておいてね。
岡野さんは帰りは代行で帰ってね。
私は柏のビジネスホテルに予約しておくわ。
所長に美味しい所聞き出しておくわね♪」
強引に梁田のペースにのまれて、静香は頷くしかなかった。
梁田は綺麗で頭が良くて人懐こくって、テキパキと仕事をこなし、何でも分かっていて、たちまち営業マンの信頼を勝ち取っていった。
気付けば契約書類を頼むのは、梁田の方が多かった。
静香は入社して2ヶ月あまりだが、梁田は大卒上がりで本社に勤務して、ヘルプとして活躍して10年になると言う。
所長にもすぐに馴染んで、本当に出来るキャリアウーマンだ。
川井とはまた違う意味で、仕事の要領を教えてもらった静香だった。
梁田がヘルプでやって来てからは、静香は仕事が半分以下になり楽チンの週だった。
そして、旦那が帰ってくる土曜日がやってきた。
「静香?台風で車大変だったな?体は大丈夫か?」
「うん。前が見えないほどどしゃ降りだったから、ノロノロ走っていたから体は何とも無いわ。」
「そっか。体が何とも無いのは良かったよ。
車は車両保険で綺麗になるからな。
こっちに来る途中ディーラーから電話があって、車が修理完了したから取りに来られるなら今日でもいいってさ。
お昼を食べたらディーラーに行こう。」
静香が頷くと、憲一が
「僕も行く〰️!」
と、言い出し3人で出掛ける事になった。
「ゆっくりしてらっしゃい。私はお昼寝してるわね。」
やっぱり家族が揃っているからか、今日は母親の顔色も良かった。
「あ。お義母さん。今夜は皆で外食しましょう。
ドリアが美味しいお店が出来たみたいなんで。」
「え?お父さん?ドリアって事はイタリアンレストラン?何処に出来たの?」
「うん。隣町のイタリアンレストランができたんだよ。
来る時に通ったら『開店オープン!美味しいドリア半額サービス中!』って、ステカンが目に入ってさ。
今日は皆でそのドリアを食べようかなって思って。静香はどう?」
「え?手を汚さず食べられるなら賛成!」
「まったく、静香は!そうね。ドリアは好きだから食べてみたいわね。
よっちゃん。いつもありがとう。」
「それじゃ、夕方までには帰ってきますね。」
旦那は静かに玄関のドアを閉めた。
ディーラーに着くと、静香の車がピカピカになって出迎えてくれた。
「わあ~。新車みたいな輝き~。
どこを修理したのかまったくわからないわ〰️♪」
静香はご満悦だった。
憲一もここのディーラーは子供が遊ぶゲームスペースがあって、飲み物も選べて憲一が好きなコカ・コーラがあるから、ご満悦だ。
今回の車の修理は全て車両保険でまかなえるから、旦那もご満悦。
但し、来年の保険料は2段階上がってしまうから、ちょっと旦那は苦笑いした。
「良かったな。静香。電気系統が壊れてなくて。
ロードサービスのレッカー車がもう少し来るのが遅かったら、こんなもんじゃ済まなかったみたいだしな。
だけどさ。なんでそんなに遅くなったんだ?
どしゃ降りの雨が降りだしたの夜8時頃だったろ?」
旦那の言葉にドキっとした静香だった。
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