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544. 旦那との会話
静香は川井に質問された時のように、冷静に話をした。
「実はあの日、もう一人の事務員が具合悪くて休んじゃたのよ。
そんな時に限って、契約の申込書がたくさんあって…
定時なんかじゃ終わらなくて…
残業になったの。もちろん、所長も手伝ってくれてたけど、8時になったら急に雨が降りだして…所長はもういいから帰る支度して。って言ってくれたの。
だから、駅まで歩くのにいつもの時間の2倍はかかって…
電車に乗り遅れて、土浦に着いたのが9時過ぎだったの。
それから、お腹が空きすぎて駅の中のラーメン屋で食べて帰ったら、途中パトカーがあって、警察官が迂回しろって言うので、いつも通らない線路側の道を選んだから、水溜まりで道路が見えなかったから側溝にタイヤがはまって…あげくにレッカー車が1時間かかるって言われて…気がついたら零時になる時間になってたの。」
旦那は柱時計を見ながら
「そっか。そうだったんだな。雨が降りだしたから所長は帰れって言ってくれたんだな。
俺、夜の10時近くまで残業させられたと思っていたから、後で所長に残業は台風の時はやらせるなと電話しようと思っていたんだよ。
でも、静香にちゃんと聞いてからじゃないとと思ってさ。
ラーメン食べたから余計に遅くなったのか(笑)」
『うわ〰️。ギリギリセーフじゃない!
所長に電話なんてされたら私は今ここには居ないわね💦💦
冷静沈着の旦那で良かったかも💦
そうだ!来週の金曜日の事。言っておこう!
所長に電話なんてされたら大変だから。』
「あのね。よっちゃん?」
「うん?なんだい?」
「もう一人の事務員が入院したので、代わりにヘルプって本社から来たのね。
彼女、凄く人懐こくって…今度の金曜日の夜飲もうって事になって…
柏で飲むから帰りは代行で帰るから、行っていい?」
「ハハハ。別に俺に断らなくてもいいよ。
会社の帰りがあまりにも遅い時は静香にちゃんと聞くから。
まあ、俺としてはそうやって前もって言ってくれるのは嬉しいけどね。
お義母さんにもちゃんと言っておけよ?
一番静香を心配するのは俺じゃなくて、お義母さんだからさ。」
静香はウンウンと頷いた。
ディーラーの帰りに憲一が秋物の服が欲しいと言い出し、結局イオンで買い物して帰ることになった。
ここでも、ゲームをしたくてお父さんを引っ張り2人でゲームに夢中になっていた。
静香は近くの椅子に座り昨日の川井の旦那さんの手帳に書かれた事を思いだし、飯田の事を考えるとやるせない気持ちになっていた。
いつかは旦那にバレる飯田との不倫関係。
どうせなら、所長に電話してくれた方が早く家を出らたかもとも思ってもいた。
でも出で行っても、きっと母親の体の事が気になって、飯田と一緒になれないって言い出して、帰って来てしまうかも知れない。
苦渋の決断か~。
今は静香は旦那と飯田を秤に乗せているのではなかった。
病気の母親と飯田を秤に乗せているのだった。
家に帰る頃はすっかり辺りが暗くなっていた。
憲一はお父さんとゲームが出来てご満悦だった。
服も買って貰えたし、今からイタリアンレストランに行く予定も埋まっている。
エレベーターを降りながら静香が憲一に告げた。
「何か、憲一が一番得しちゃったわね。」
「うん!僕は普段の行いがいいからね♪
お母さんとは違うよ♪」
「え?なによ!どういう意味?」
「別に~。ただ、お母さんは不幸の道を行ってばかりいるような気がするからだよ。」
「え?不幸の道?」
「だって、お店を譲ったり、事故って入院したり、迂回間違って車を水没しそうになったり。
判断力が鈍いのかなあって思ってさ。」
図星を言われて静香は顔を真っ赤にして
「判断力がなくて悪かったわね!
いいわよ!私は守護霊が守ってくれてるから大丈夫なの!」
想定外の母親の反発に
「守護霊って?誰なの?」
「私の父親よ!」
「え?おじいちゃん?悪いけどおじいちゃんは僕の守護霊だからね!
それと、お父さんの父親のおじいちゃんも僕の守護霊!
だから、僕は2人に守られてるんだよ?」
「え?憲一のその自信はどこから出て来るのよ!」
ムカついた静香は言い返した。
「みよばあとよしばあ!2人に言われてるの!
お母さんは誰に言われたの?
霊媒師にでも見て貰ったの?」
2人とも引かなかった言葉のやり取りに、旦那が
「ああー。わかったわかった。
実はね。守護霊ってね。いつもその人について居ないんだよ?」
「え?」
2人は旦那に振り向いた。
「守護霊ってね。普通は1人なんだけど、本人が大変な状況の時は2人になるんだって。
それでね。憲一が大変な時は静香の守護霊が憲一を助けに行くから静香の守護霊はその間居なくなっちゃうんだ。
だから、川で溺れそうになった時憲一を助けるために2人のおじいちゃんが助けてくれたって訳。
助けてもう大丈夫だとわかると居なくなった静香の守護霊の父親が帰ってくるって訳なんだよ。」
旦那の作り話を2人は真面目に聞いた。
「そっか~。僕はお父さんの父親がいつも居るってことか~。」
「そうだな。でも、いざ俺が大変な状況の時は親父が来てくれるから、その時は憲一の守護霊は留守になるかもな(笑)」
「そうだ。おじいちゃんはお父さんの父親だもんね。
家族だもん。僕1人のおじいちゃんじゃ無いんだよね。
うん!いつでも僕のおじいちゃんは貸してあげるよ!
お父さんを助けたらまた帰ってきてくれるんだもんね♪」
憲一は父親の話に納得したようだった。
現世の人間が勝手に仏をあの世とし、生きてる人間がこの世として解釈して、守護霊がいるような話になっているが仏様の姿なんて見たことが無いのにね。
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