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545. 円満家族?
それから、イオンから出ると静香は母親に電話をした。
家に戻ったら、直ぐにイタリアンレストランに行くから支度して待っていてね。と、
旦那はきっとビールを飲むだろうから、静香のピカピカで綺麗に元に戻った車で行くことにしたのだ。
家に着くと、母親は玄関の前で待っていてくれた。
3人は静香の車に乗り込むと、向後座席で憲一がみよばあに今日あったことを話をしていた。
他の人から見たら幸せな家族そのものだろう。
母親が笑顔で孫と会話している姿をルームミラーで見ていると、自分の行動が間違いであると頷けてしまう。
自分だけが我慢していれば、この幸せな家族に亀裂が入ることは無いかも知れない。
静香の頭の中は、川井の旦那の手帳を読んでしまってからぐるぐると渦巻いてしまっていた。
イタリアンレストランに着くと、特製ドリアを4人前旦那が頼んでいた。
飲み物も静香夫婦はコーヒー。みよばあは紅茶。憲一はオレンジジュースを頼み、デザートはジェラートを頼むことにした。
「うわ~。お店の中もイタリアンぽくて素敵だね♪
僕の店もこんな風にしたいなあ。」
「そうだな。憲一もお店をやりたいなら、一度本当のイタリアに行ってみるのもいいかもな。」
「え?イタリアに?うん!行きたい!
お父さんも行こうよ♪ね!」
「そうだな。憲一がもっと大きくなったらな。
高校生の夏休み辺りに行ってみるか?」
「え〰️。高校生?後7年も先か〰️。」
「ハハハ。7年なんてあっと言うまだよ♪」
憲一…お母さんはその頃はもう居ないかも…
「お母さんはみよばあとお留守番だよ。」
憲一が不意に静香に告げた。
「え?あ。そうだね。うん。お母さんはみよばあとお留守番しているから、お土産たくさん買ってきてね。」
そうだ。母親は癌の病だ。
どんどん悪くなって行くんだから、7年後なんてどうなっているかなんて、今は考えたくもなかった。
「私は天国で憲一達を見守っているから大丈夫よ。」
覚悟のような母親の言葉に
「みよばあ!手術して悪いところはみんな取ったんでしょ?
もう、その頃は元の体に戻っているから天国なんていっちゃ駄目だよ!
僕の守護霊はおじいちゃんしか居られないんだから、みよばあは僕の守護霊になれないよ!
満員御礼だもん。だから、みよばあは長生きしなきゃいけないの!」
「え?守護霊の満員御礼?何?それ?」
憲一はイオンのエレベーターの中での父親との会話をみよばあに話していた。
「あら。1人に1人ずつしか守護霊って付けないの?
それじゃ、おばあちゃんは憲一にも静香にも付けないの?」
旦那が苦笑していた。
「お義母さん。これは静香と憲一の押し問答に対して言った話で…その…」
母親は3人の話を直ぐに飲み込めた。
「みよばあ?美咲お姉ちゃんの守護霊になってあげてよ。
でも、今じゃないよ!僕がおじいちゃんになってからだよ。」
「おじいちゃんの憲一?あと、70年もあるじゃない〰️。そんなに長生きできないわ〰️。(笑)」
憲一の機転で暗い話が笑い声の溢れる会話になった。
憲一はしみったれた話をうまく笑い話に持って行く天才かも知れない。
「憲一はホント!天使ね♪
この特製ドリア美味しいわ♪」
シーフードが入っていて、ホワイトソースがタップリかけてあるからライスが柔らかくなっていて、それでいて油っぽくないから母親も完食出来る美味しさだった。
「僕もシーフードドリアとか、シーフードパスタとか、勉強してお店に出したいな♪
みよばあとよしばあに喜んで食べてもらえるように頑張るから、みよばあの体早く良くなってね。ドリアが食べられるんだから大丈夫だね♪」
「そうね。バターの香りはするけど、油っぽくないから美味しく食べられたわ。
憲一がシェフになって憲一の作ったドリア食べるまで、元気でいなくちゃね♪」
温かい家族愛に包まれた団らんの食事だった。
その日の夜。家族が寝静まると1ヶ月に一度の夜のお勤めが始まった。
私の母親を気遣い、私は夜ご飯を作る手間を省いてくれて、壊れた車までピカピカの車にしてもらって…
拒否出来るわけもない。
旦那は家族の円満の為に振る舞っている。
それなのに私はその円満の家族をぶち壊そうとしているのだから…
川井の旦那の手帳を読んでからの静香は、ずっと悩むことになった。
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