549. 赤提灯の居酒屋は…

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549. 赤提灯の居酒屋は…

すき焼きも食べて、お寿司が出てくる頃には3人ともほろ酔い気分になっていた。 「梁田さんは何処のホテルに予約したんだ?」 ほらほら、所長が聞いてきた。 「駅の近くです。経費は8000円ですからね。 ビジネスホテルですよ。」 『あれ?今日子さん。言わないって言ってたのに? 酔ったの?かな?』 「そっか。私が本社に連絡しておいたからね。 東京と柏では宿泊費は出ないから、岡野さんの歓迎会をやるって事で梁田さんも1ヶ月半に渡ってのヘルプだから、同じく歓迎会に出席するから宿泊費を出してもらえるように通達したよ。 すぐにメールでわかりました。って言ってくれた。 梁田さんも本社にはそのようにお願いするよ。」 「え?そうなんですね。ありがとうございます。」 そう言うと、所長が 「私はこれから電車で家内の所に帰るからね。 親父の彼岸の墓参りしないとバチが当たるからさ。 まあ、お彼岸にはちょっと早いけど、今しか帰れないしな。 青森だから、夜行列車だ。では! お二人は楽しんで!」 そう言って部屋を出ていった。 表皮抜けする程あっけに取られた梁田だった。 時計は9時ちょっと前だった。 「寝台列車は上野からだから、9時半頃出発するのよね。 明日の8時前に青森に着くわね。 所長も青森か~。」 懐かしいような顔をしていた梁田に 「詳しいですね。青森にお知り合いでも?」 静香の問いに 「彼氏の一人が青森に家族を置いて、単身赴任で出て来ているの。 東京の所長をしているんだけどね。 なまりがあるから標準語を話してもアクセントが違うのよね。 しゃべらないと恐面でクールでカッコいいんだけどね。 話すとなまりが出て来るからなんだかほんわかする所長なの。 優しくて家族想いで…そんなギャップに萌えてしまったの(笑)」 「東京じゃ今日子さんの住んでる所と近いんですか?」 「電車で20分かしら。そんなに近くはないわよ。 でも、土曜日は彼のアパートに居ることが多いかしら? だから、さっき川井さんの話を聞いて、まさか奥さんが青森から出てきてアパートなんて訪ねて来たらきっと浮気現場を押さえられて私も彼氏も首になるかしら? なんて思っちゃったわ。 私も気をつけないといけないわね!」 静香は苦笑いをした。 「静香さん達の密会はラブホ?それとも彼氏のアパート?」 まだ、梁田は静香を同じ仲間と思い込んでいた。 「だから!私は彼氏は居ませんよ。」 絶対静香は口を割らなかった。 「ねえ?飲み直さない?酔いが覚めちゃたわね。 ここを出たところに赤提灯のぶら下がった居酒屋があったわね。 それともカラオケハウスにする?」 梁田の問いに 「歌は苦手ですからカラオケはいいです。 居酒屋に行きましょう。」 あ。やっぱりカラオケって言えば良かったかな? なんかまた、追求され続けられそう💦 割烹屋を出ると、2人は赤提灯のぶら下がった居酒屋の暖簾をくぐった。 「いらっしゃいませー!」 静香はその女性の声に固まった。 聞き覚えがある声だったからだ。 『え?まさか!』 カウンターの中で笑顔で迎えてくれたのは 白石加奈子だったのだ。 「え?静香?静香か?どうしてここに?」 2人は驚いて立ちすくんでしまった。
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